宇宙の終わりに何がある。

宇宙の終わりに何がある。

「グーテンモーゲン?」

「あ、おはようございます! お元気でしたか?」

「アイムファイン、エンドユー?」

「はい、元気です。ありがとうございます」

近所のおじいさんといつものヘンテコ挨拶を交わした。おじいさんは嬉しそうに続けた。

「あのねー。最近ねー。こんな本読んでるの」

『宇宙の終わり』

差し出された本にはそう書いてあった。

「いいでしょう?」

「いいですねー!! ロマンですよねー! そういう話、私も大好きです」

「そうだと思ったんだ。いくつか説があるみたいだね」

「そうなんです! そうなんです!」

おじいさんは得意気にニカッと笑いました。

「えーと。あの安定してる陽子も崩壊してしまうらしいねー」

「あー! ですねー!」

「崩壊すると、どうなっちゃうのかな?」

「んー? 他の素粒子とかになるんですかねえ。すみません、ちょっと分からないです」

「物質はエネルギーの一形態だったりしてねー?」

「おぉぉ! いいですねぇー! そういう話、大好きです」

「この本、最新の話らしいから」

「本当ですか! いいですねー! 私の知ってるのは古い話のかじりかけた程度ばかりなので! 読み終わったら是非教えて下さい!」

「うん。読み終わったらね、貸してもいいですよ」

「ありがとうございます!」

「じゃ」

「はい、また。ありがとうございました」



その夜、私はとりとめのない走り書きをしていた。

- - - - -(走り書き:正確ではない内容)- - - - -

宇宙の終わりに何がある。

身近なものを観察してみよう。コーヒーの終わりに何がある。空のマグカップと飲んだ人がいる。空のマグには新しいコーヒーが注がれて、飲んだ人はまたそれをおかわりする。マグにコーヒーをつげば永遠に続く。もしコーヒーが切れたら終わりだろうか。そこには、コーヒーをたらふく飲んだ人が転がっている。

宇宙の星が全て消えたとすると。どこかに元星だったエネルギーが漂ってる。

エネルギー保存の法則を破ってみれば、材料がなくても星が作れるかな。大きな星を消すこともできるかな。

宇宙が終わるには時間が終わる必要もあるのではないか。

終わりをみたけりゃはじまりを探せ。小さな宇宙の誕生。

宇宙が続くとは、時流れ、慣性の法則で動き続け、力が働き、物質は作用しあう。

宇宙の美。宇宙の記憶。

洞窟の果てには何がある。宝石。ひらけた海。

エントロピー。

おはようの終わりに微笑みがあれば、君への恋がはじまる。

劇場の終わりに幕が閉じれば、君の心へ温もりが光る。

逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり(権中納言敦忠)

宇宙の終わりに何がある。

遠い未来。永遠の変化のない世界。真空の時の流れ。対生成対消滅。

時間物質エネルギー真空のエネルギーゆらぎ。

生きるの終わりに大切な人のそばにいるなら大切な人がしあわせなら、残された人の心にともされる明かり

- - - - -(走り書き:終わり)- - - - -

とりとめのない走り書きをして、眠気に急におそわれたので、眠りについた。



早朝に目覚めると、机の上にいつものノートが置かれていた。ハラリとめくると、

『宇宙の終わりに何がある。』

と題された走り書きが見つかった。走り書きの浅い知識に苦笑いしつつ、読んでいった。その走り書きの終わりには、こう記されていた。

『生きるの終わりに大切な人のそばにいるなら大切な人がしあわせなら、残された人の心にともされる明かり』

ほう。

それで、この走り書きを解読してみると、こうなるだろう。

ある一定の状態が終わりになると、そこから次の状態が生まれる。願わくば、大切な人にとって良い影響を残しながら、次へとバトンを渡したい。

たとえ、全ての宇宙が終わるとしても、君と過ごした良かった幸せな過去は、確かに存在したということを、誇りに思う。


問、『宇宙の終わりに何がある。』
私の答え、(今まで過ごしてきた、君との大切な日々がある。)


今度、あのおじいさんと答え合わせをしようと思う。



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