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無駄な心労|エッセイ

本を読んでいると、特に親しくない人に「何読んでるの?」と聞かれることがある。
私はあれがとても苦手だ。

聞くことがデリカシーがないとか、おかしいことだと思っているわけではない。
聞いている方も、深い意味があるわけでない事は分かっているし、よくある会話である事も重々承知だ。
親しかろうが、親しくなかろうが、本を読んでる人がいたら、何読んでるの?と聞いてしまう気持ちも分かる。

では、なぜ嫌かと言うと、その時読んでる1冊のイメージになることが嫌なのである。
私は割と何のジャンルでも読む。
いちばん恋愛小説が好きです!!!や、この本が人生でいちばん好きな1冊です!!!という固定のものがあれば、まだ良いのかもしれないが、そ
ういうジャンルというのもないし、大好きな1冊というのも選びきれない。
もちろん、このような説明をする会話も嫌だ。

たまたまその時読んでるものが実写ドラマの原作本だったりしたら、ミーハーなのかなと思われるだろうし、BL小説だったらBL好きのおしみさん!となる。無駄にエモーショナルな恋愛小説なんて読んでいたりなどしたら、そういう系が好きなんだ…となる。都市伝説系の変な本でも、哲学の本でも、東野圭吾の最新作だろうと他人にお知らせはしたくない。

エモい恋愛小説だって、BL小説だって、東野圭吾だって好きだけど!間違ってはいないのだけれど!
それを他人に、その時の状況で、「〇〇の小説を読んでいた人」「〇〇の小説が好きな人」とインプットされる可能性がある事が嫌なのだ。

答えたくないので、
「大した本じゃないですよ~」
などと適当に返事をすると100%の確率で
「エロ本読んでるの?」とニヤニヤ顔で言われる。心外だ。
せめて官能小説と言って欲しい。
エロ本だろうが何が悪い?ニヤニヤするなという感じである。



しかし、何の本を読んでるか質問したのに、題名も言わず、「いやぁ別に大した本では…」などと言葉を濁されたら、確かにエロ小説に違いないような気がする。
私は気づかぬうちにエロ小説愛読のおしみさん!のレッテルを自ら貼り付けていたのかもしれない。

母に相談すると、
「題名言ったところで皆んながみんな、あの本かぁってならないし、別に後々調べたりしない。大して興味もないのにちょっと聞いてみたらなんとなく濁されて、会話にならないなんてそっちの方が記憶に残るよ」
とのことだ。納得である。

次聞かれたら普通に答えてみようと思ってから、すぐに仕事を辞めてしまったので、特に聞かれる機会がなくなってしまった。

もっと気にしなくてはならないことは沢山あるような気がするが、どうでも良いことほど気になってしまう。
私は今でも【職場でエロ小説を読むおしみさん】として、何人かの記憶にうっすらと名を馳せてしまっているのかもしれない。とても心外だ。


おしみ

1998年3月生まれ
仕事を辞めて絶賛ニート中
毎日楽しいよ


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