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工房の不思議|エッセイ


サハラに代打をしてもらった日、
マリア宅にお邪魔していた。

マリア&シンタロさん宅に
大学の先生、白石くん、白石くんの同僚の方たちが集まる会だった。
白石くんは私たちが卒業した美術大学の
工房で勤務している。

仕事終わりにコストコでご飯を買ってきてもらい、
ホームパーティーをする予定であったのだが、あと50分ほどで着く旨の連絡がきた。
それと共に、
「今日はめちゃくちゃホットなニュースがあります!!!」
との報告があった。

おもしろ話題に貪欲な我々は
そんな報告だけでとても盛り上がった。
先生も
「なんでしょうねぇ」
とワクワクしている様子だった。
50分が待ち遠しくて待ち遠しくてたまらない。

到着早々、早速
「ホットニュースってなに!?!?!?」
と問いただした。

「なんと今日、工房で火事が起きました!!!」
となぜか得意気に発表された。
物理的なホットニュースである。  
木工の機械に釘が入り込み、刃と当たってしまい発火し、大鋸屑が周りにたくさんある為着火してしまったとのことだった。

「消火器を3本使った。消火器を撒いてないと、
火が目の前まで!!」
などと臨場感たっぷりに語り、
「俺たちの通報スピード、初期対応、完璧でしたよね!!あればやばかった!!」
などと、とても気持ちがよさそうに語っていた。
大事に至らなかったようでなによりだ。

実は私も前職は工房勤務だったのだが、
(学校ではない)
一度ボヤ騒ぎを体験した。

樹脂製品にビニールをかけ、
ヒートガンで温めていたのだが、
ビニールに火がつき燃えたのだ。  

私は2階で休憩中だったのだが、
黒煙がもくもくと上がってきて火災報知器が鳴り響いた。
下を見ると製品が燃えている。
「火がでてる!!燃えてる!!」
と叫ぶと、
散らばっていた人々が大慌てで集まってきて、小さなバケツに水を溜めパシャパシャとかけ始めた。

そんなんで消火できるかよ、と横目で眺めながら、119番通報しようとしたところ、
「消火ぁあ!!!」
という声が響き、無事鎮火されていた。

鎮火後も黒煙が上に登ってくる度
火災報知器が鳴り響いた。
それは一日中止むことはなく、うんざりであったがこちらも大事になることはなかった。

帰って鼻をかむと、煤のせいか真っ黒だった。
白石くん達も体から黒い物は排出されただろうか…。

また、工房にはすごい虫の死体がすごい落ちていて、それを上司が写真に撮ってコレクションしていてキモい、という話もしていた。
確かに、工房には、虫の死体が多い。
普段はなかなか見ないような大きな蛾や、蜘蛛、蜂、何と呼ぶべきかわからない変な虫の死骸が、フリーズドライされた状態で落ちている。 

大鋸屑や粉塵などで空気中の水分が全て吸われているのだろうか。
乾燥のせいで、虫が生きられず、火事が起こりやすいのか。

上司が撮ったと言う、
白と黒の蛾の死体が並べられている写真をテレビに映し出しながら
「これは彼の2面性を表してるんだよ」
などと講義のように話し出した白石くんの話を聞きながら、工房の乾燥問題を考え、真面目に講義に取り組む先生を眺めていた。



おしみ

1998年3月生まれ
仕事を辞めて絶賛ニート中!
毎日楽しいよ

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