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『悪い子』

僕は、中学2年生。
お母さんと、小学一年生の双子の妹の4人家族。

お父さんは?だって?
お父さんは、妹たちが生まれた年に交通事故でいなくなった。

もう七年にもなる。
寂しくないかと聞かれるけど。
慣れたというか。よくわからない。そんな感じ。

僕は、学校が終わるとすぐに家に帰る。
妹たちの面倒を見ないといけないからだ。

お母さんは、僕と入れ違うようにお仕事に行く。
いつもの日課。

以前と比べて、妹たちの面倒を見るのは楽になった。
オムツを変える事も、ミルクをあげる事も、夜泣きもないからだ。

今は、ご飯を作れば自分で食べれるし、トイレもいける。たまに怖い夢を見て泣いたり、夜は怖いからトイレの前まで連れて行かされることもあるけど、小さい頃と比べると楽だ。

ある日の放課後、友達から「一緒に遊ぼう」と誘われた。
嬉しかった。だけど、僕は「ごめん。用事がある」と、断った。

夜になり、妹たちが寝静まった後、
短い自分の時間で毎日つける『日記』を書いていた。

日記と言っても殆ど妹たちの話が多い。

だけど今日は、『友達から遊びに誘われて、断った』の文字。
ふと、頭によぎった。

(遊びに誘われたのはいつぶりだろう。)
なんだか急に切なくなった。

そんな気持ちを抱きながら、数日たったある日。
僕はお母さんと喧嘩になった。

理由は『学校から帰ってくるのが遅かった』から。
道草を食っていたわけでない。
テストが近く、その日だけ、心配な人は残って勉強を教えると、
先生のご厚意で行っていた授業に少しだけ参加した。

確かに遅くはなったけど、お母さんがいつも家を出る時間には帰ってきた。

しかし、お母さんは理由も聞かず、怒鳴った。

無性に今まで抑え込んでいた何かが、
体から出てきたような感覚だった。

僕は、カバンをお母さんに投げつけ、家に入る事もなく走った。

ただひたすらに走った。

少しすると辺りは暗くなり、僕は神社の敷地内にいた。
この神社は、お父さんが生きていた頃、毎年みんなで来ていた場所。

懐かしい気持ちで胸が痛くなった。

大木に寄りかかり座りながら、長い時間昔のことを思い出していた。
妹たちがお腹の中にいた時、お父さんが言った。
「良かったな!兄妹が出来るぞ!お兄ちゃんになるなら守ってあげないとな」なんて、満面の笑みで言われながら背中を叩かれた事もあったけ。

込み上げるように、妹たちが心配になった。

僕は走った。

家まで全速力で走った。

喉も乾いて、足も痛い。

それでも走った。

家のドアが見えた。

勢いよくドアを開けた。

お母さんが、顔をぐしゃぐしゃにして立っていた。

顔を叩かれた。

そして、

「いつもごめんね」と、
大粒の涙を流しながら、強く抱きしめられた。

僕も

泣いていた。


お花の騎士


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