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変化に対する抵抗勢力 - MBAリーダーシップ④

2024年1月から全7回(3.5時間×7週間)で始まったリーダーシップのクラスが面白い。リーダーシップについて考えを巡らすことも増えた。

リーダーシップとは平たくいえば「目的のために人を動かす」ことである。組織やコミュニティの中でみんなが直面する問題を明確にして、解決のための行動目標(HLBsリーダーシップの巧拙 オハイオ州立大MBA|Rie | 米MBA - オハイオ州立大生 (note.com)の(4)参照)を特定し、その行動を促すためにあらゆるテクニックで他者に影響を与える。

誰だって、学生生活も終え一端の大人になると、信念や道徳心等大なり小なり自分なりの考え方や価値観みたいなものが身に付く。
考え方も仕事の仕方も、身体に染みついて慣れ親しんだものを手放したくない。全てを否定されると自分がスカスカになる気がする。
だけど世の中は必然的に変化する。変化に上手く順応したいが変化に飲み込まれたくない。

変化を促すリーダーと変化に抵抗したくなるフォロワー。
リーダーになるのは大変だ。

(1)変化に抵抗する人たち

■イギリス海軍の事例

その昔、イギリス海軍の隊員の主な死因は事故や戦争ではなく、血壊病だった。1601年、ある船長がレモン等の柑橘類を毎日食べると血壊病にならないことを発見したが、イギリス海軍は医療習慣を変えることに抗い、紆余曲折を経て1795年にやっと長距離航海で柑橘類を摂るというのが習慣化した。またイギリス商船でこの習慣が取り入れられたのは1865年のことだった。

■ペルーの貧しい村の事例

ペルーの公衆衛生サービスは、田舎の村々に対して、健康的な生活のために簡易トイレの設置や毎日のゴミ焼却、感染病の報告やイエバエ駆除等の慣習を取り入れるよう奨励した。Los Molinasという200家族が住む村では、ヘルスワーカーのネリダが2年間もその村を訪れ、お水を沸かして使用するようにと促したが、たった15家族(それも比較的最近この村に移住してきた家族)だけがこれを聞き入れた。現地では、お湯は病人が使うもので、健康な人が湯を使うというのは文化的な規範にそぐわないと考えられていた。また、メリダは村の人々の習慣を否定し叱責するために送り込まれた部外者だとみなされていた。結局村の習慣は変わらなかった。

■キーボードのQWERTY配列

パソコンのキーボードの配列(QWERTY配列)は1873年から変わらない。当時のタイプライターは早く打つと壊れたので、わざと打ちにくい配列になっていた。その後何十年も経ちタイプライターの機能も改良され、早打ちで壊れることもなくなった。1932年、とある大学教授が研究を重ね最も打ちやすい配列を考えたのだが普及することはなかった。ユーザーはQWERTY配列に慣れていたし、せっかく時間をかけて身に着けたスキルを手放したくなかったのだ。

■大企業の法務部門の組織再編について考える

大企業の法務部門の岡本部長はオフィス移転及び再編計画の一環で、パラリーガル(法務事務員。アメリカドラマSUITでいうメーガンの役)をワンフロアに集約することに決めた。以前は20人いる弁護士に対して、それぞれ担当のパラリーガルがあてがわれていたが、弁護士は出張が多く弁護士不在中はパラリーガルの仕事が激減。一方同時に、弁護士の要望に応えて過剰な仕事量をこなすパラリーガルもいた。つまり効率が悪かった。

岡本部長が実行しようとしたことは、多くの大手法律事務所と同じような「標準的な業務手順」を実行できる組織体制に再編することである。

移転の1週間前にパラリーガルに再編内容を伝えるとやはりウケが悪く、「それなら辞める」と言い出す者もいた。良い仕事ができないと感じたのだろう。
弁護士にも不評で、担当パラリーガルの喪失を「降格」のようなものだと感じたようだった。

移転後数週間が経ち、やはり文句が漏れ聞こえる。弁護士はパラリーガルのミスを指摘し、また小規模な調査作業に弁護士自身が時間を費やさないといけないことに腹立てていたた。
パラリーガルも、仕事へのやりがいを感じなくなったり、特定案件に一貫して取り組まないので仕事の質が落ちてしまうと苦情が出ていた。

岡本部長は、何か手を打たなければいけないと考え、またいっそのこと前のスタイルに戻したほうがいいのかと悩んだ。

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私は弁護士ではないが、このような状況に心当たりがある。変化を求められると批判的に考える人が出てくる。特に組織にロイヤルティがない人は周囲に批判を漏らし抵抗勢力になる。
問題はパラリーガルの非効率な活用であり、岡本部長がやろうとしていること(つまり非効率の解消)は方向性として悪くないはずである。私が岡本部長なら、何としてでも組織再編を上手く成功させたい。

(2)彼らはなぜ抵抗するのか

そもそもなぜ人は変化に抵抗するのか。
人は知っていること、慣れ親しんだものを好む。また、今まで培ったスキルをおじゃんにしたくないし、変化のせいでもし経済的利益や今ある地位を失うなんてことがあっては困る。今までの人間関係を壊したくないし、そもそも単に他人に変化を強要されるなんて気に食わない。ということらしい。
であれば、組織内で心地よく過ごしている人ほど、変化を受け入れないということなのだろう。

その結果、リーダーの指示を完全に拒否する者、緩やかに拒む者、リーダーを無視する者、先延ばしする者が出てくるのだ。

ああ、本当によくある。されたこともあるし、したこともある。

クラス内で議論した。どのようなテクニックを使えば影響力を行使できるのか。思ったとおりに人に行動してもらえるのか。

(3)変化を促すために行うべきこと

最もよく使われるのは、「合理的かつ論理的な説明」を事実と共に丁寧に伝えるということである。
そしてもう一つが「報酬と罰則」である。報酬を与える代わりに、リーダーが望むものを得る。そのためにインセンティブを使用する。または、脅迫や懲戒措置等で特定の行動に対する遵守を促すのである。
「合理的な説明」「報酬と罰則」は、それなりに効き目があるので頻繁に使用されるテクニックだが、これがゴールなのか。と教授は問いかけて次の議論に進んだ。

私は、「報酬と罰則」でコントロールされるのは少しバカにされているような気がするが、「合理的な説明」は私には効き目があるように思った。

ただし、これはあくまで私個人の感想であり、エビデンスベースで見るというのが、このクラスのポイントである。
まだまだ考えないといけないことがリーダーにはあるようだ。


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