見出し画像

『邪教の子』 澤村伊智:感想

 「新興宗教系の話?おもしろいんかな?」

最初はそんな風に思ったけど、読み始めてすぐにグイグイ惹き込まれた。

舞台はとあるニュータウン。ある家族が引っ越しきてから、平和だったニュータウンの空気が乱されることになる。新興宗教にハマった母親を持つ女の子、茜ちゃんを助けるために行動する慧斗(けいと)と同級生たち。彼らの出会いと、茜ちゃん救出する手記からお話が始まる。

30分後くらいに雰囲気がガラリと変わる。どう変わるのかを書きたいけど、それすらもネタバレになるかも。簡単に説明すると、矢口というディレクターがニュータウンを訪れる。彼にも「色々」あって、この宗教の秘密や実態を暴こうとするけれど…てな内容。

澤村さんの作品にはオバケや妖怪が出てくるけれど、やっぱり怖いのは生身の人間というテーマがいつもあるような気がする。今回もそうだった。

 ・見た目と年齢がちぐはぐな人
 ・話を良からぬ方向に捻じ曲げる人
 ・おかしな状況にもヘラヘラと笑っている人

”壊れている”感じがしてゾッとする。完璧な「家族」や「生活」やのに、それが逆に不自然で怖かった。私の”普通”は誰かから見たら”異常”で、誰かの”普通”は私から見たら”異常”?そういうものがあやふやになるような感覚がした。

新興宗教や信じるものを持つのは悪い、とは思わない。それで救われる人もいるんやと思う。でも私自身はやっぱり新興宗教的なものは苦手かな。そういうトピックの作品も避けていた。澤村さんはそれを良くも悪くも書かず、お話の一部として描いてるから抵抗なく読めた。澤村さんが取材して、想像の範囲内で書いてるのも良かった。大袈裟でもなく、適当でもない。

〇〇ちゃんは宗教と切っても切れない関係にあるのが皮肉だったな…。そして一番囚われて執着していたように思う。タイトルは「あの人」に関係あったのか〜。

ただ、最後だけが物足りない。無理に現実に引き戻された感じがして、物語の終わりはもう少し余韻がほしかった。邪教、信者たち、矢口はどうなったのか気になる!

澤村さんのインタビューも読んだけど、今作はプロットから話が変わったらしい。本来の「犯人」も違うかったみたい。

本作は雑誌連載の書籍化です。連載前に自分としては細かくプロットを固めたのですが、編集者に何度も「もう一声」と突っ返されて難儀しました。

加えて、いざ連載が始まると編集者のみならず編集長からも、プロットとは異なる提案が頻繁に出されました。結果、連載最終回は当初のプロットとは「犯人」が別人になりました。また連載終了後、書籍では結末を変更してほしいとの提案を強く出され、悩みましたが承諾しました。
(下記のリンクのインタビューより引用)

他のインタビューでは、澤村さんは最近お子さんが生まれたみたい。おめでとうございます!だけどSNSで子供のことは書かないし、子供がいることも匂わせないらしい。

澤村さんの作品は不思議。物語の展開は何となく予想がつくんやけど、息つく暇もなく読み終わる。だらだらしない。最初から何か起きてる/起きる予感満載やから、読み進めてしまう。自分の予想と物語の答え合わせするのも楽しい。ホラージャンルでも、澤村さんの作品はおぞましさ100%じゃないし、見たら呪われそうな表紙じゃないのも好き。

1ヶ月ぶりの読書がこの作品で満足!☺️
以下は少しネタバレ。






最後の部分は、私なら矢口は知らぬ間に洗脳されて入信してたら…って考えたら、お話として面白いなと思った☺️

この記事が参加している募集

サポートありがとうございます。