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No.500 小黒恵子氏の紹介記事-66 (文化人を訪ねて)

 こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。

 様々な新聞記事等をご紹介しています。今回は、雑誌に掲載された小黒恵子氏の紹介記事 をご紹介します。内容は、今までと同じ様な内容になります。

文化人を訪ねて(6)  詩人小黒恵子さん 生命を詩う

 ふるさとは多摩川
 小さな体に大きな夢をのせて
 さあ 元気に行っておいで・・・・・・
 わすれないで 母なる川
 きみたちのふるさと 多摩川
昨年の二月に多摩川で30万匹のサケの稚魚が放流された折、その生命力のすばらしさに感動して、その門出を祝い作られた詩である。雪の降りしきる中、児童合唱団の歌に送られて、新しい生命が未来に向かって出発(たびたち)した。
 先生はその多摩川のほとり、高津区諏訪で生まれ育った純すいの川崎っ子。幼いころから多摩川の土手で一望する桃や菜の花の美しさに心をときめかせ、無類の動物好きのご両親のもとで自然と動物にかこまれて育った。中央大学の法学部を卒業後、二十代は華道を極められ、三十代の初め故谷内六郎氏の表紙絵に出会い、抒情と郷愁その美しい心の世界に魅せられ思いうかぶ詩をかきためるうち、氏に強く勧められ昭和三十一年に処女詩集を出版した。
 ふるさとの川から風が生まれる
 風が生まれる日 わたしは
 みどり色の翼にのって 旅立つ
 「私の詩(うた)は人生というその長い旅の道中を移る風であり、草であり花であり、動物であり昆虫であり友達でありたいのです」と話されるとき、先生の黒く美しい瞳がキラキラと輝いてみえた。こうして作られた詩は五百数十編を数える。

 『飛べしま馬』の世界
 私達が先生をお訪ねした数日後合唱組曲『飛べしま馬』の童謡集がパリの在留邦人の子ども達に夢を与えて好評という記事にふれた。この曲は大自然の中に生きる動物に触れようと、アフリカ取材旅行の体験で作られた野生動物への賛歌である。作曲家高木東六氏の作曲による「ライオンの子守唄」「飛べしま馬」の二冊に収められた十四曲の組曲は子供の歌の芥川賞と云われる「日本童謡賞」(昭和五十七年度)に見事輝いたものである。
 幼いころより小さな虫や花に感動し自然を愛する心が大きく育てられて、この地球に共存する人間も動物も昆虫も、生きとし生けるものみな友だちであり、美しい自然と共にみんなが守り育て、未来への遺産として残さなければ、子どもたちにこの心を伝えたいという気持ちからだった。この野生動物を守る大河の一滴にでもなればという心から、昭和五十七年世界野生生物チャリティー展(絵画)を開催したり、赤い靴児童文化大賞受賞の動物愛護のうた「やあ こんにちは」を発表したり幅広い活躍をされている。
 
 モンキーパズルの木の出会い
 アルプスの麓スイスのファイドウ町の丘の上ではじめて出会ったモンキーパズルの木、名前も珍しいこの木はパナラ松の愛称だそうで、アンデスの麓で再び出会ったとき詩にされ、NHK「みんなのうた」で発表された。この木がぐうぜん熱海の伊豆山にあることを知った先生は早速連絡をとられ、日本のモンキーパズルとの出会いとなったのである。昨年の十一月、これが縁となりモンキーパズルの歌碑が建立された。一本の木と一曲のうた、この楽しい出会いと大きな広がりの輪を大切にしたいと話された。

 子ども達に伝えたい愛の心
 先生は主に子どものための童謡を中心にたくさんの詩を創作してこられたが、今後の抱負をお伺いしてみた。「動物や自然の心に感動し、子どもの純粋な心の世界にひたりきるところは幼いころと変わりありません。現在の仕事を続けながら年令と共に流れ、自分の生きてきた詩の世界を生かして、児童文化のための仕事をしたい。自然の神秘と美しさ、生命の尊さ、生きる悦びと幸せ、そして愛の心をうたを通して子ども達に伝えたいのです。」

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 趣味を越えた素晴しい絵画の数々を拝見し、楽しいお話に時をたつのも忘れるほどであった。
百年をこえるという格式のある大きなお屋敷、市の指定保存樹が十四本もある手入れの行き届いた庭、自然の中にかこまれてご尊父との静かな毎日である。詩作のかたわら日本童謡協会理事、川崎市公園緑地審議会委員など多くの要職もつとめられている。
   ひとすじの心で咲いている
 美しい詩人 小黒恵子先生のますますのご健康とご活躍をお祈りいたしたい。                      (文責 紫穂)

高津の文化 昭和60年(1985年)3月15日 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 次回は、1985(昭和60)年の紹介記事をご紹介します。(S)

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