Photo by esumae エッセイのご紹介429 「花とライオン」(小黒恵子著) 7 小黒恵子童謡記念館 2022年6月29日 16:00 こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。 今回も、産経新聞の「from」に掲載されたエッセイをご紹介いたします。 「from」には9作品掲載されていますが、残念ながら自筆原稿が残っていませんので、掲載された文章をご紹介いたします。 詩人の書いたエッセイ、独特の言葉選び等を感じていただけると幸いです。小黒恵子童謡記念館 2階 展示室より「花とライオン」 小黒 恵子 人はおおかた、大人も子供も美しいものや強いものが好きである。私は、小さいころから、美しいものはレンゲの花の群落、強いものはライオンと決めていたようだ。 子供のころ、家の近くに広々とした原っぱがあり、れんげの季節には、薄紅色の花が風に波打って、あたかも花の海にいる感があった。茫然と立ちすくんで、その美しさに酔いしれて花の海で眠ってしまったのを思い出す。花の女神フローラのいたずらだったのかもしれない。 そして強くてかっこうよいのは、雄ライオンと決めていた。長いたてがみ、堂々とした美しさ。子供のころ、母と行った日本橋のデパートでその像に会えるのが楽しみだった。いまでも私は、ライオンの大きな手をなでて「コンニチハ」と声をかけている。昔なじみのなつかしさ、満足したうれしさとほっとした安堵に満たされる。 美しいもの、強いもの好きがこうじて、私は平成七年に文部大臣認可の公益信託「児童合唱音楽振興基金」を設立し、翌八年に「花とライオン児童合唱音楽賞」をスタートさせた。今夏は第九回の授賞式を迎えた。 この賞は、少年少女の音楽文化の振興と情操教育を目的とし、優秀な歌唱力や長年の音楽活動、ボランティア、外国児童合唱団との交流など、顕著な活動をした合唱団に贈る。毎年、全国から一団体を選び、助成金百万円を贈呈している。少年少女の美しい歌声は、高原のすがすがしい朝風のような清涼感がある。 近年、あっと驚く子供や青少年の犯罪が激増している。心に魔がさしたとき、美しい曲の一節をよみがえらせ、心の底に残る聖なる一瞬の風にハッとして、ストップをかけてほしいものだ。 心の中の抽斗(ひきだし)に、たくさんの好きな楽しい歌をしまっておくことは、幸せなことである。音楽は明るく豊かな、人生の道中を彩るすばらしい友であり、宝であると思う。産経新聞 from 2004(平成16)年7月25日 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 次回も、2004年~2005年に産経新聞に掲載された小黒恵子のエッセイをご紹介します。(S) ダウンロード copy #エッセイ #子供 #紹介 #詩人 #ライオン #掲載 #産経新聞 #小黒恵子童謡記念館 #小黒恵子 #from #少年少女合唱団 7 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート