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過去を振り返るべきときはいつ?過ぎ去った日々を想うことは健全なのか◆虚しさとは何か(下)【ぷろおご伊予柑の大預言】
鼎談:「ぷろおご×伊予柑の大預言」をアーカイブしています。
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大預言を読む
○大預言とは?
ぷろおごと伊予柑が古典を消化して対話をし、
『大預言』を生みだそう!という企画
伊予柑…人類補完計画を企む悪いおとな
ぷろおごとは数年の付き合いがある
今回はスペシャルゲストに素数量子さんをお招きしております。
こちらは鼎談を加筆編集したものです。
むなしさとはなにか?
むなしさは人のいるところならばどこへでも、影みたいについてくる。いなくなったと思ったら物陰からこっちを見てンだ。どうやらあいつらは、オレたちのなくしたからだであるらしい。
むなしさはそこらにいっぱいにいるよな。あれ、誰かのさみしさやむなしさは街にあふれてるけど、オレのが見当たらねえや。どこに行っちまったんだろう。あいつがいなけりゃそれはそれで困る。なんだかバランスが変なかんじなんだよォ…なんだかんだであいつに影みたいに存在を引っ張られてねえと、からだが軽すぎて、妙にふわふわとしてンだ。
そのうち天にものぼっちまうんじゃねえのかな。オレはもうオレがわかんねえ。
しかたないから、オレはオレのむなしさを探しにいくことにした。
だけどさ、オレはどこを探しにいけばいいんだよってな
今回お送りするのは、そんな話です。
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◾️前回記事
◾️テーマとなった記事
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むなしさを感じない人はどのような人か?
ぷろおご:相当数の人に会ってようやく気づいたんですよ。人に会うことによって改善されている部分があるなあと。
改善というのは、向上してるというよりはフラットに戻っていくというかんじで、リズムを整えているみたいな感覚でもあって。
その実感を得たのは相当人数に会ってからで、それも後ろを振り返ってようやく分かったことなんです。それは理論とかじゃなくて実体験に基づく気づきだからナチュラルなもので、納得に向かいやすいじゃないですか。人に会うことによって調子がよくなっている部分があると納得できたんですよね。
そういうのが必要だなとおもう。むなしい人ってむなしいことを気づかないように生活するんですよね。たとえばむなしくなるから飲み会に行かないとかね。それをしていると友達はできなくて、むなしかったことすらも忘れるんですよ
伊予柑:あるある。
僕の会社だとエンジニアの人とかは、会社に来るけど誰ともしゃべらずプログラミングだけして、「飲み会とかいいんで」って言って帰る人もいるみたいです
ぷろおご:今だと「オレたち社会不適合者だよね」っていうむなしさの解消の仕方がひとつありますね。そうやって社会を形成する社会適合者というのはおもしろいですよね。社会不適合者というよりはたんに、そのほかのメジャーなところとうまく折り合いがつかないっていうことなんですよね。
むなしくない人ってあんまりいないんですよ。というよりは、なにかしらのむなしさってぜったいあるとおもうんですよね
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伊予柑:どうですか?
素数さん:むなしさっていうテーマは難しいんですけど、最近自分にあったことでいうと、ゲームをやってるのがむなしいと思ったんです
ぷろおご:あるよね、ハマってたことが急にね
素数さん:僕はゲームを作ってる人たちがわざとむなしくさせてるのかなってふと思っちゃって、急激に冷めちゃったんです。
むなしさを埋める方法として存在しない楽しかったころを思い出すっていうのをやったりしていたんですけど、それもむなしくなってしまって。じゃあ実際自分の過去はどうだったんだっけと…最近、勇気をだして高校時代のグループラインに潜ったんです
ぷろおご:すごい!健康だ
思い出がふえていくにつれて、むなしさも大きくなりうるか?
素数さん:グループラインのアイコンはクラスの集合写真だったんですよ。それも解像度が低くてぼやけてる。パッとわからないけどよく見ると自分がクラスの集合写真の左端にいるのがわかりました。
それは文化祭が終わった最後の日の集合写真なんですけど、その時のことをなんにも覚えてねえやと思ったんですよね。学生時代の記憶でこれといったものがないことに気がついて、強烈なむなしさを感じたんですよ。
このむなしさはけっこう健全なむなしさだなあと思いましたね。存在しないシミュレーション、ストーリーを楽しんだ後、パソコンの電源を落として真っ暗な画面に映る自分が目に入った時に感じるむなしさと比べると、現実にあったむなしさの方が健康的だなあと思って、すごいびっくりしたんですよね
伊予柑:失われてしまった私を取り戻してるんですよね
ぷろおご:死んだ人は悲しい問題ね
伊予柑:そう。つまり高校時代にも誰かとの会話は絶対にあり、そこには秘密があり、あなたを前にした私がいたはずなんですけど、なぜかそれは失われてしまっていた
ぷろおご:そのほうがラクなんですよね。むなしさを記憶ごと一緒に消しちゃうのはラクなんで
伊予柑:でも、記憶を消しちゃったからむなしくなったんじゃない?
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ぷろおご:それもあるね。むなしさがどこに行ったかわからなくなると、究極のむなしさになるからね
伊予柑:卒アルを読んでる瞬間にむなしい人ってけっこうむずいとおもうのよ
素数さん:むなしさをちゃんと認めるってほんとうにそうだなと思いましたね。
友達なんて要らないよね、という味つけを好む人は、友達のいない現状を調えないと食べられないのだろうか?
素数さん:最近、ニーチェを読んでて面白かったのがありまして、ニーチェって宗教を批判してるんですけど、禁欲的な生活も否定しているんです。
その理由として人間はなにもないことに耐えられない動物で、欲望とか希望とかそういったものがなくなっていくと、最後に求めるものが虚無であるっていうふうに言っているんです。
なにもないことよりはなにもないことを求めることのほうがまだマシだから、彼らは禁欲的な生活をしているみたいに批判してるんですよ。虚無よりを虚無を意志することのほうがラクみたいなことを言っていて
ぷろおご:友達がいないことを悲しむより、友達なんて要らないよね。友達がいないほうがかっこいいってことだよね
素数さん:そうなんです。ないことを望んだほうがラクだから
ぷろおご:オレは友達がいない孤独な人間になりたいんだって言ってるほうが生きてるあいだラクですよね
伊予柑:でも、それって社不の連帯と一緒で、だいたいそういう人、連帯してません?ヴィーガンもそうですよね。私たち肉食わないので、って言って連帯してますよね。ガチの孤独な人は山奥に行くんですけど、それはかなりレアケースですよね
ぷろおご:ほんとうにいない
伊予柑:まじでレアなんですよ
ぷろおご:染色体異常がないかぎりはできない
伊予柑:だって、仏教のお坊さんたちもすげえ禁欲生活をみんなでやってるし
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素数さん:そういう意味で、自分がゲームにのめり込んでたのは虚無を意志してたんじゃないかって気がしちゃったんです。結局それはあとに残るものがないというか、存在しなかった記憶だから。
自分にとってなんの記憶もない学生時代の集合写真を見ることは虚無だったんですけど、フッとそれを見たときに、虚無はあったんだなっていう確信があって
伊予柑:それはちょっと高校時代の友達何人かと話をしてほしいな
素数さん:ちょっと会ってみたいですね
伊予柑:会うとどうなるのか。高校の自分がふわって
素数さん:思い出すかもしれない
過去を振り返るなら日記で充分か?言葉にならなかった経験はからだが思い出させてくれる
ぷろおご:おれ高校でうつをやってて、うつをやるとだいたいみんな記憶消えるんですよ。とくべつになにかがあったとかじゃなくても脳のシャットアウト機能が作動するから記憶ごと消えるんです。
それがいまでは、ある程度体力が戻ってきて、大人になったことでいろいろ解釈のバリエーションもふえて、物語的にいろんなことが処理できるようになった。余裕がでてきたからけっこう会うようにしてるんですよ、昔の友達にね。定期的に彼らと会うようになってからやっぱりラクになりましたね。思い出せないだけで忘れてるわけじゃないんです。
からだは絶対に覚えてて、なんだっけな、なんておもうんですよね。おれどんな感じだったっけ、おれはどんなふうに過ごして、なにを考えてたんだっけ。そういったものは忘れてしまってる気がするだけで、からだのどこかには保存されてて、それは掘り起こしてもらわないと思い出せないんですよね
素数さん:それはあるかもしれない
伊予柑:むなしい人は過去の人に会おう、ですね
ぷろおご:過去の人に会うことで、その人の前の自分が発生するじゃないですか。そうなるとその人の前の自分のふるまいも、状況に付随して思い出されるんですよ。ある程度はね。
急に変わるやつってなかなかいないですよ。久しぶりに会っても、しばらくチューニングすると当時の口癖とか喋り方に戻っていくんですよね。それによって「ああ、そういえば昔はこんなふうに思ってたな」とか、なくしたと思っていた記憶を取り戻したり、「そんなやついたな〜」と言えることでそいつと一緒にいた記憶が戻ってきたりするし、あとは地元歩くとかも超いい
伊予柑:そうですね
素数さん:それ、自分も経験してるんですよ。最近引っ越しのために本を片付けて、そんなに傷んでない本は元々いた大学の図書室に寄贈したんです。
大学にはあんまりいい思い出はなかったって自分では勝手に思ってたんですけど、いざ実際に現地に赴いてキャンパスをぐるっとまわったら、「あ、ちょっといいことあったかも」ってなんとなくよかったころの記憶がほんのちょっと戻ってきたんです。
連絡先を知らないとかで人に会うのはハードルがけっこう高いんですけど、キャンパスをまわるだけでも思い出されるものはありましたね
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伊予柑:あと3回行きましょう
ぷろおご:雨の日とか晴れの日とか、いろんなバリエーションで行くといいですよね
伊予柑:これって要するに墓参りですよね
ぷろおご:そう。そこに保存されている自分の身体的な記憶が目の前のものとか存在によって思い出される。存在と不在ですね。あの駄菓子屋なくなってんじゃん、とか、うわ、まだあったんだ、とか、ああいうのが脳にとって強い刺激になる
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ぷろおご:当時歩いていた通学路を往くとかね
素数さん:まったく記憶からなくなってた風景が目の前にあったり、頻繁に行ってたラーメン屋が潰れてなくなってたり、すげえ感動したんですよね
ぷろおご:そうそう。そういうところにむなしさとの向き合い方がある気がする
新しいものはむなしさを忘れさせてくれるのか?
伊予柑:Chat GPTって今だと、4000ワードとかでその会話の内容をどんどん忘れていくんですよね。ただChat GPT自体は学習しているので、会話内容って実は覚えているんですよ。ただ短期的には忘れていくんです。すげえ長期的には覚えてるんですけどね。それと同じような気がしていて
ぷろおご:なるほどね、おもしろいなあ
伊予柑:同じプロンプトを入れるとちゃんとそれが長期記憶から取り出される。プロンプトは小学校を歩くのとおなじ
ぷろおご:安全だよね
伊予柑:むなしい人は小学校・中学校の通学路を歩こう。なぜお前はむなしいのか、それは過去の自分が失われたままになっているから
ぷろおご:拾ってあげないといけないよね
素数さん:けっこう忘れちゃってること多いなあ
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ぷろおご:むなしさとかなにか問題を感じるときに、みんな新しいものへ向かうじゃないですか。今の私じゃ足りなくて満たせられないんだから、なにか新しくてすごいのがどこかにあるんじゃないか、とか。それこそ本とかもそうだけど、なにかすごいことが書いてあるんじゃないか?とか。
でもむなしさでいっぱいになっているときに読むべきは昔からずっと読んでる本で、新しいものではなくもう一度あの本やあの映画やアニメを見たり、そういうことをしたほうがいいんでしょうね。
むなしさと向き合おうとするときに、そのむなしさが恐ろしさみたいなものに変換されて、そこを見たくない、見つめることができない。そういうふうに膨らんでしまったものを抱えている人っていうのはむなしさでいっぱいになっているわけですよね。
それは放置したらそのままどんどんむなしくなっていっちゃうんですよね。ここまでの自分という文脈を失われてるわけだから、そもそもなんだっけおれは。なんでここにいるんだっけ、みたいになってる
伊予柑:ポジティブなやつだと、海外とか同じ旅行先に別の人と行くのとかメッチャ面白いです
ぷろおご:わかる
伊予柑:ここ来たんだわ〜、とかこの裏にね、なんて言って新しいやつを連れ回すというか
ちゃんと儀式をやらないと、むなしさに蝕まれてしまう
ぷろおご:積極的に掘り返す作業ですよね。あの店が美味しかった、とかね。ちゃんと掘り返すっていう作業がむなしさには効くんですね。だからむなしさを認める作業がだいじ
なにをしていてもどこか満たされない
オレはなにをやっているんだろう、なにがしたいんだろう
なんでこんな感じだっけ?いつからだろうか?
あんときぐらいから漠然とさみしいと思って生きてきたかんじがする
そうか、オレはむなしいのか
素数さん:たしかに。振り返らなかったり、見なければ見ないほど虚無が広がっていく・・
伊予柑:そう、怖いんだよね。振り返るのが
ぷろおご:後ろを振り返るっていうのがめちゃくちゃだいじですね。体力がない状態でやると死ぬんですけど、ちゃんと大人になっていって、健康的に生きていて、嫌なことがあってもハハハって言えるような体力になってから恐ろしいものにもう一度向き合うってことですよね
伊予柑:正月に実家に帰るのだいじなんですよね
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ぷろおご:ちゃんと儀式的に重要な場所に行ったり、同じ人に会ったりするのけっこう効きますよね。そのあとも、もうずっと変わりますよ。半年はなんとなく体調がよくなる。そういうふうにむなしさがあって、それを解消するためにさみしさを利用するというのはありだなっていう話を書いたんですね
素数さん:僕はけっこう感情がなにか目的を達成する手段として現われてる部分もあるんじゃないかと思ってたんですけど、むなしいと思うってことはそこに整理されるべき感情が放置されているということのシグナルなのかもしれないですね
伊予柑:過去を振り返ろよ、と
ぷろおご:いまは新しいものが得やすくなったからね。むなしさをかんじたときに新しいものがあるんだよね。Tinderとかさ。それが昔だったら元彼に連絡する、とかじゃん。それはひとつの手なんだよね。それによって悪影響のある場合もあるんだけど
伊予柑:おもしろい。ではこのくらいで終わりますか。
はい、むなしさの話でした
(虚しさとはなにか 完)
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