冒険で生活って、どうやって成り立つんですか?

時々「私も冒険をしたいんですが、話を聞かせてください」という連絡をもらうことがある。

そんな時は、できる限り会うようにしている。

そういう相談に来るのは、概して若い人が多いのだが、どうにも話をしていて今まで「ハマる」感じの人が少ない気がする。

私も若い頃は、いろんな人のところに話を聞きに行った。なので、話を聞きに行く気持ちは分かる。若い頃に自分が何を聞きに行ったかと言うと、北極や冒険の具体的な情報だったり、他分野の冒険をする人がどんなことを考えているのかを聞いて自分の行動の参考にしようと思っていた。

私のところにも、そうやって情報を求めてくる若者はいるにはいるのだが「それって、わざわざ聞きに来なくてもネットで調べられるんじゃない?」と感じることも多い。というか、聞きにくる割には、自発的に調べようとしていない。さらに言うと、聞きにまで来ているのに、あまりそのことに興味を持っていない感じというか、謎な会話が続くこともある。

どうも話しがハマらんなぁ、と思っていると「冒険で生活って、どうやったら成り立つんですか?」と聞いてきたりする。

「冒険したいの?それとも生活を安定させたいの?どっち?」と聞くと「冒険はしてみたいんですが、生活が心配なので…」と言う。

気持ちは分かる。そりゃそうだ。誰しも生活がある。

そんな時は、私はスッパリこう言う。

「若いんなら、一度や二度の冒険に出てもいくらでもやり直しもできるから、好きにやったほうがいいよ。でも、冒険で生活を成り立たせようと思ったら、それは無理だからやめたほうがいいよ」

「え、でも、荻田さんは冒険家で生きてるんですよね?生活できてるんですよね?」

「あのね、冒険で生活しようと思って最初からやってる奴は、生活できないんだよ。冒険で生活なんてできるわけないと思って分かってやっている奴が、結果的にそれで生活できているんだよ」

私も今は自分の活動で生きているが、これだっていつ足元が崩壊するか全くわからない。

マジで恥を晒すが、私も20年極地を歩いてきて、ほんの3年くらい前までアイフルやプロミスにだいぶ貢いできた覚えがある。北極点や南極点の挑戦のためにスポンサーを探したり、あちこちの人に会いに行ったり、極地の遠征費も嵩むし。数年間はひたすら利息だけ毎月返済して元本全く減らず、みたいな状態だったこともある。それらは、今ではすべて綺麗さっぱり返済しているが。

冒険の世界には、あらかじめ用意されたステージは存在しない。プロ野球やサッカーなどのメジャーなスポーツであれば、ステージは用意されているが、そこに上るためには熾烈な競争を勝ち抜く必要がある。

冒険でも芸術でもそうかもしれないが、用意されたステージに上がるのではなく、自分のステージは自分で作らなければならない。そこで諦めずに自分のステージを作ってしまえば、独壇場である。ただ、自分のステージを作ったところで、多くの場合は日の目を見ないだろう。

自分の最終ラインは守りながら、人からの援助を求めるようなことは自分にはできない。別に、自分のやり方が正しいと言うわけでもないし、もっとスマートにやれる人もいるのだろうが、少なくとも冒険の世界で、スマートに実績と生活を安定させた人を私は知らない。

「なんだ、冒険家って夢がないな」

そう思うかもしれない。夢なんてない。あるのはド現実のみだ。夢って言葉を「現状の不満解決を未来に期待する」という、一発逆転サヨナラ満塁ホームランだと考えている人には、それは決して打てないだろう。

あるのは常に今。この打席でフルスイングできる奴にしか、ステージを築くチャンスはやって来ない。

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2000年よりカナダ北極圏やグリーンランドで徒歩を中心とした冒険を行ない、これまで北極と南極を10000km以上を踏破。2018年3月出版した「考える脚」で第9回梅棹忠夫・山と探検文学賞。日本人初の南極点無補給単独徒歩到達に成功。第22回植村直己冒険賞

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コメント (5)
「夢は一発逆転満塁ホームランじゃなくて、今回ってきた打席でフルスイングし続けていくこと」
多く打席に立てるようになりたいと思うようになった今だからこそ深く刺さりました。
現実の地続きで好きなことを黙々とやっていく先に見える景色を楽しみにしたいです。
ありがとうございます♪
丁寧に話を聞いた上での対応ですね。
自分も、毎日、フルスイングをしていけるように、動いてみます!
まさにリアルな冒険者ですね。自分のステージは自分でつくる。
そう考えれば、日々冒険なんだな、と感じました
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