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冒険クロストークvol.16 里見龍樹「不穏な熱帯」

毎回、多彩なゲストを招いてのトークを行う冒険クロストーク、次回のゲストは文化人類学者で、早稲田大学准教授の里見龍樹さん。

日 時:2023年6月18日(日)16:00〜
場 所:冒険研究所 神奈川県大和市福田5521-7 2階
    最寄駅「小田急江ノ島線 桜ヶ丘駅 東口徒歩30秒」
参加費:2000円(学生は1000円)
定 員:会場15名
    オンライン視聴無制限
★オンライン配信は、後日の録画視聴ができますので、当日の都合が悪い方でもご心配なく。

参加申し込みは以下より。

著作「不穏な熱帯」精読に取り組んでいるが、人類学が「旅する哲学」と呼ばれる意味がよく分かる。

自らの姿勢、対象との向き合い方、何か一つの視座に固定化されることに非常に慎重な姿勢は、これまでの文化相対主義的な人類学のイメージとは一線を画す。

メラネシアの島々で10年にわたりフィールドワークを行っている。

南太平洋でのフィールドワークと聞くと、どうしてもマリノフスキーとか、レヴィ=ストロースのイメージが強い。

いわゆる交換論とか贈与論は、現代社会学の分野でも語られることはよくあるが、このイメージが人類学の分野においては相当の前時代的な議論であるのかがよくわかる。

人類学の最前線とは、この位置なのかと驚かされる。

マリノフスキーやレヴィ=ストロースに代表される古典的な文化人類学では、未開の社会の◯◯族にはこのような文化や習慣、風習がある、ということを記録し、報告することで事足りていた。

それは、ある意味で世界に広く、遍く広がっている単一の自然の中で「未開」と呼ばれる人々が独自に営む文化であり、それは西洋とは異なるもの、エキゾティシズムとして処理されていた。

その未開に向き合う人類学者たちにとっては、なぜその習慣が根付いたのか?という歴史は無視されていたが、1970年代以降、サイードの「オリエンタリズム」に代表されるような思想が隆盛となり、未開社会へのエキゾティシズムの懐疑と反省が興る。

「歴史なき未開社会」と「歴史ある西洋」という図式からの変転として、歴史人類学が興り始める。が、そこにもまた西洋主体の歴史主義が顔を覗かせ、未開の地の歴史を西洋との相対主義的に捉える理論に異議を唱える学者が現れる。

2000年代になり、エキゾティックな他者、もしくは「異文化の研究」という伝統的なあり方から脱却しようと「存在論的転回」が起こる。つまり、それまでの古典的な人類学の流れが「自然とは単一であり、多様な文化が相対的にそれを認識している」という「認識論」から「存在論」への転回だ。

そこにおいて、著者である里見さんの最大の課題とは「自然とは何か」そして「人類学者は現代的な手法においてどのようにフィールドを記述するべきか」という姿勢に悩み、苦悩しながらフィールドワークを行う。

とは言え、その現場は文化人類学の超古典的なフィールドである「メラネシアの島々」だ。古典的に研究し尽くされたフィールドで、どのように現代的な人類学的手法を用いて研究を行い、そして記述するか。

この本は、文化人類学の歴史を振り返りながら、現代的な態度表明に至るまでの記録であり、自然とは何か?他者とは何か?歴史とは何か?そして人類学とは何か?を探究した一冊。

ということで、来週日曜日は著者である里見龍樹さんを招いて、3時間たっぷりと「不穏な熱帯」と南洋のフィールドワーク、旅のお話を聞いてみたいと思う。

南洋の旅の記録と合わせてお話しを聞くのが楽しみだ。

参加申し込みは以下より。


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