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Teslaのビットコイン決済停止にみるブロックチェーンは環境に良い?悪い?という話

テスラは米国時間の5月12日、電気自動車を購入する際のビットコインでの決済を停止すると発表しました。

Tweetに添付された画像は、エネルギーの使用量を示していて、環境に多大なコストをかけたことがその大きな理由であることを説明しています。


現代において、世界のメガトレンドである脱炭素問題は、パリ協定やRE100を始め様々な議論が行われており、大規模なエネルギー転換を目指す欧米のグローバル企業は、再生可能エネルギーに注目しており、自動車業界においても例外ではありません。


ビットコインは非常にエネルギーコストがかかると言われる一方で、ブロックチェーン自体は、エネルギーを語る上では無くてはならない技術とも言われておりで、結局、環境に良い、悪いのどっち?と疑問に思われる方もいると思います。今回は、環境とエネルギーとブロックチェーンをテーマに書いてみたいと思います。

環境に悪いのはPoWにおけるマイニングであるという点

まず結論として、増加し続けるビットコインのマイニングによるハッシュレートは、電力消費・CO2排出量に大きく負担をかけていることは紛れもない事実です。
パブリックブロックチェーンには、中央管理者が存在せず、それらが存在し続けるために、不特定多数の協力者に対して、支払われる経済的インセンティブの付与による合意形成の仕組みの一つがPoWと呼ばれています。
一斉に参加者が数学のクイズを解き、最も早く正解にたどり着いた人が、マイニングを行う権利を得ると例えられますが、このクイズの回答のために、大量の計算を行うことになり、そのためには大量のエネルギーを投下しなければなりません。世界中で行われるマイニングによって多くもCO2が排出されているという観点では、環境に対しては悪影響であると言えます。


しかしながら、ブロックチェーンの合意形成の仕組みはPoWだけではありません。実際にTeslaが次に注目している暗号通貨としてDogeCoinがありますが、環境に配慮したPoSという方式に移行するのではないかという話もあるようです。宇宙開発企業SpaceXの商用月面ペイロード「DOGE-1」がDogeCoinで支払うことができると発表されたこともあり、話題となっています。結論としては、必ずしも環境に対する悪影響を及ぼすわけではなく、マイニングの種類によっては、環境に配慮することは可能であるということが言えます。

電力のP2P化にもたらされるブロックチェーンのメリット

消費者が生産者を兼ねることを、プロシューマーと表現することがあります。農業、ファッション、DIYの世界では、プロシューマーの存在が当たり前ですが、電力の世界でもプロシューマーになることが可能です。ソーラーパネルなどによって電力を発電する、誰もが自分たちが利用する電力を自給自足することができます。さらにプロシューマーに、貯蔵する(ストレージ)を足して、プロシューマージャーという言葉も出てきましたが、自給自足で作った電気を貯蔵し、最終的には、それらを市場で取引を行う人たちことを指します。

この事例は、中部電力と、Cryptoeconomics Labが実証実験をした余剰電力の実験の事例ですが、余った電力を個人間で取引を行うことで、災害や事故などで中央にある発電所からの経路が断線した場合でも電力を補い合うことができたり、再生可能エネルギーの普及が進んだりと大きなメリットが期待されています。
ブロックチェーンはインターオペラビリティと言われる規格の統一化によって、様々なアプリケーションや、システムを結合することができます。以前サプライチェーンの文脈で、様々な事業者間を複雑につなぐ経路の中で、ブロックチェーンのインターオペラビリティがどのように活用されるかという事例を書きましたが、電力の世界も例外ではありません。事業者との間の電気の仕組み、ソーラーパネル、電気メーターなど様々なアプリケーションの間を超えていく繋がるケースにおいて、ブロックチェーンの相互互換性は非常に有効です。

P2P電力取引の現実と非現実

2000年に始まった、電力の自由化によって、全国でおよそ700社の電力小売りに新規参入が相次ぎました。しかし、2020年12月末に高騰が始まり、それまで1kWh当たり25円程度だった市場価格は、1日平均で最も高い日は250円以上となり、卸電力価格の高騰が続く状況となりました。経産省が今年の1月に出した「スポット市場価格の動向などについて」という資料では、寒波の到来に伴う電力需要の増加や、燃料在庫の減少に伴うLNG火力の出力低下などが要因であると書かれていますが、原因は他にもあるとの見方もあります。

その一例が、国内の発電電力量の約8割が「旧一電(=旧一般電気事業者)」の発電部門によって作られており、電力市場が寡占市場であるという見方です。多くは独自の電源を持たず電力調達を市場に頼っていることから、需要と供給のバランスが崩れやすくなっているというわけです。また、LNG火力の依存度が高いことも要因としてあげられており、太陽光のほかに風力・水力・地熱・バイオなど多様な自然エネルギーの導入が必要であるとも言われています。

ギガファクトリーによる蓄電池の生産


TeslaはEV、リチウムイオン電池の活用についても活発に行っています。
2014年6月から、ネバダ州スパークス郊外にてギガファクトリーを建設しました。世界のリチウム電池の生産量を増やすことを目的としてこの試みは"ギガファクトリー"と呼ばれており、2021年には、現在ある13ラインに1ラインが加えられ、年間生産能力を35GWhから約39GWhに引き上げが見込まれています。太陽光を始め、自然エネルギーは安定的な供給が難しいため蓄電池による蓄電が必要となりますが、イーロンマスクはこのようなギガファクトリーを地球のあらゆる箇所に設置することで、地球のエネルギーの全てを担保できると試算しているといいます。


注目されるEnergy Web Foundationの取り組み

Rocky Mountain InstituteとGrid Singularityが中心となって、2017年に結成された国際エネルギーコンソーシアムがEnergyWebFundationです。フランスのengie、ドイツのTWL、オランダのShell、英国のCentrica、アメリカのGE、日本の東京電力など、大手エネルギー関連企業が参加しています。
イーサリアム上にオープンソースのP2Pプラットフォーム「TOBALABA」を構築し、その上でさまざまなオープンソースのアプリケーションを乗せる試みとして開発が進められています。

Conclision

子供の頃、21世紀の乗り物として、ソーラーカーが色々な漫画やテレビに出てきましたが、現時点では、トヨタ『プリウスPHV』が掲載している車種のみとなっており、まだ実用化には遠い状況であると言えます。

太陽光が電力の生産に対して不安定であることや、太陽光パネルの価格、さらには電気を貯めるための蓄電池など色々な要素があり、難しくしていると言われていますが、環境という観点では、車の中だけで電気を循環させるだけではなく、ブロックチェーンのトレーサビリティを用いることで、他のアプローチを考えることもできます。
J-WAVEを聞いていると、毎月1日の放送を風力、水力、バイオマスといった自然エネルギーによって発電された「グリーン電力」を使用し、J-WAVEが1日に必要とする3500kWhをグリーン電力で賄います、とグリーン電力による放送を謳っているのと同じように、トレーサビリティを活用して、太陽光のみで生産された電力を活用して車を稼働させることも、環境という観点からは必要なことであると思います。

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