【基礎編】メラトニンのおはなし。(睡眠改善/体外受精)#9
こんにちは、yukiです。マガジン「からだのおはなし。」本日は基礎編、メラトニンのおはなしです。たまに訪れる寝つきの悪さに悩んでいたところ、たどり着いたこの神経ホルモン。一通り調べてみましたが「メラトニンサプリで不眠解決、お勧め!」という内容ではありません。プロテインやビタミンのように誰もが摂取必要というものではなく導入の際にはしっかりと情報を把握した上での自己判断が必要です。それでは、しばしお付き合いいただければ幸いです。
保険に入れない。
まずはメラトニンにたどり着いたきっかけから。自律神経失調症が酷かった2018年からちょくちょく頼るようになった入眠剤(ゾルピデム5mg)。藤川徳美先生のメガビタミン療法に出会い、サプリのおかげで頻度は月に数回と減ったものの、外泊時やたまに訪れる寝つきの悪さに完全に入眠剤を立ち切れず…。悩んでいたことろ、メラトニンの存在を知りました。
もっと生々しいはなしをすると、保険の見直しに行ったのですが、入眠剤処方が原因で加入できなかったのです。5年は新たに医療保険に加入できないとのことでした。改善されたとはいえいきなり5年も眠剤なしで過ごせるか!と思い色々調べ、メラトニンにたどり着いたのでした。
ナイアシンも効果あり。
メラトニンについて詳しく見る前に、ナイアシンのおはなしも少々。前回のマガジン「ナイアシンのおはなし。#8」でもおはなしした通りナイアシンも睡眠改善に効果があります。
▼メラトニン合成プロセス
葉酸=ビタミンB群の一種
5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)=セロトニンの元となる有機化合物
SAM-e(S-アデノシルメチオニン)=アミノ酸の一種
セロトニン=三大神経伝達物質の一つで精神の安定に深く関わる
メラトニン=脳の松果体から分泌される神経ホルモンで睡眠に深く関わる
睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから合成されます。その合成に必要なのが、ナイアシン。体内吸収率の低い鉄も重要です。ナイアシンは体内酵素の5分の1を助ける補酵素として幅広く活躍するため、ナイアシン不足による疾患が多く存在するそうです。なので、メラトニンを入眠剤代わりに薬的役割として導入するのではなく、まずは「何が原因で睡眠の質が低下しているか」探ることが大切です。
▼補足
20種類のアミノ酸がDNAの設計図情報をもとに合成されたものがタンパク質。設計図により様々に形や機能を変え、約10万種類のタンパク質でわたしたちの体は構成されています。アミノ酸には体内で合成可能なアミノ酸と体内で作ることのできない必須アミノ酸があり、必須アミノ酸の数は9種類。セロトニン、メラトニンの合成に必要なトリプトファンは食事から補う必要があります。
脳について。
メラトニンが分泌される脳についても少しだけ。脳には1,000億個もの神経細胞があり、神経細胞が互いに情報を交換しています。具体的には、神経細胞と神経細胞の間に化学物質である伝達物質が流れることで情報をつないでいます。この脳内をめぐる伝達物質の種類と量によって「心」が決まります。例えば、テストで良い点が取れた時、脳内に快楽物質ドーパミンが増え「喜び」という感情が現れるのです。
この伝達物質は現在100種類ほど確認されており、有名なものだと興奮性のノルアドレナリン、抑制性のセロトニンなどがあります。この通り、伝達物質には神経を興奮させるアクセル、神経の興奮を抑えるブレーキの2種類に分けることができます。「平常心」とは脳内の神経細胞の興奮度合いがちょうど良い状態のこと。この脳内伝達物質のバランスが崩れてしまうことが心の病気の原因と言われています。
メラトニンとは。
やっと登場です。脳の松果体(しょうかたい)という部位から分泌される神経ホルモン。松果体はトウモロコシ一粒ほどの大きさで脳のほぼ真ん中にあります。メラトニンは夜に放出され夜中の3〜4時がピークとなり、明るい昼間には放出されません。そのため「暗闇のホルモン」や、睡眠に深く関わるため「睡眠ホルモン」と呼ばれています。
メラトニンレベルが上がると、深部体温(脳の温度)が下がり、脳が睡眠に入るというメカニズム。体内時計をコントロールする重要なホルモンです。
メラトニンとセロトニン。
では、どのように1日のリズムがつくられるのでしょうか。メラトニンとセロトニンの関係をみてみましょう。先の段落で光がメラトニンの分泌に関わることを知りましたが、分泌源の松果体は脳の奥にあり、光を感知することはできません。そこで松果体に指示を出しているのが、目の奥にある視交差上核(しこうさじょうかく)です。い、言いにくい…
明るい昼間に活動的になり、夜に活動が低下し眠くなるのは、視交差上核が感知する光、つまり太陽の光によってコントロールされているのです。
メラトニンの効果。
(1)寝つきを良くし、睡眠の質を改善
これは上記の通りですね。眠れないということは、メラトニンの生産に問題があるということです。
(2)気分を上向かせる
アメリカで人気の高い経口避妊薬B-オーバルを服用した方がハイ状態になったことをきっかけに成分を調べたところ、他の避妊薬にはないメラトニンが含まれていることが判明。この研究からメラトニンには気分を上向かせる効果があり、メラトニンが低下すればうつ状態になることがわかりました。うつ病はまだまだ未解明な部分が多く、原因には様々な仮説がありますが、モノアミン(ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミン)が密接に関係していると言われています。ただ、メラトニンがどのように働いて気分を変化させるかは解明されておらず、今後の研究を待つ必要があるとのこと。
(3)抗酸化作用と不妊治療
調べる中で一番驚いたのがこの効果。不妊治療にメラトニンを使用している病院がいくつかありました。なんでもメラトニンにはビタミンCやビタミンEよりも強い抗酸化作用があるとのこと。卵胞内にメラトニンが存在し、活性酸素による酸化ストレスから卵子を守る働きがあるそうです。こちらの病院ではメラトニン使用、未使用時の体外受精の培養成績が記されているのですが、内服した方が成績がよくなっています。”メラトニンの抗酸化作用と生殖”というタイトルのこちらの論文もとても興味深かったです。
▼補足
活性酸素は細胞内での情報伝達・免疫・代謝の調節など重要な役割を担う一方で、適量を超え、体内の抗酸化防御システムを潜り抜けた活性酸素は細胞を傷つけてしまいます。活性酸素は不安定な分子で、安定させるために他の物質と結びつこうとする際に正常な遺伝子や細胞を攻撃。病気の約90%はこの活性酸素が原因といわれています。
メラトニンの増やし方。
ここからは睡眠に問題を抱えている方に向けた内容となります。うつ病にメラトニンが関わっていますが、思い当たる方は自己判断に頼らず、医師の指示に従ってくださいね。また、薬に頼りたくない方は藤川徳美先生のこちらの栄養療法がとってもおすすめです。
前述より夜間にメラトニンをしっかり増やせば睡眠が改善されることが判明。そこで、3つの方法をまとめました。
(1)光の遮断
光をたくさん感知している限り、視交差上核から松果体へメラトニン生産の指示は出ません。部屋を暗くしていても、PCやスマフォなどのLEDライトにはブルーライトが含まれており、浴びることで昼間と勘違いし、メラトニンが生産されません。わたしは以前、寝る前によく携帯を見ていたのですが、最近は食後か入浴後21時〜22時くらいから間接照明に切替え、なるべく携帯を見ないようにしています。
(2)メラトニンの原料補給
もう一度、メラトニンが合成されるまでの流れを見たいと思います。
上図からメラトニンに合成に必要な栄養素は下記通り。
①トリプトファン(タンパク質)
②鉄
③ナイアシン、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12(ビタミンB群)
④マグネシウム
マグネシウムは体内に25gほどあり、その50〜60%は骨に存在しており、不足時は骨から放出されます。栄養素として重視したいのが①〜③の3つ。
①トリプトファン
まず一番重要なのが必須アミノ酸のトリプトファン。原材料ないとそもそも合成できません。必須アミノ酸は体内で作ることができないので、食事から摂取する必要があります。「タンパク質のおはなし。#2」で記載したとおり普段の食事から最低限、自分の体重(g)の必須アミノ酸全種を含んだタンパク質を補うことは難しいので、わたしはホエイプロテインで補っています。タンパク質、プロテインの選び方はこちらをご参照ください。
②鉄
トリプトファンから5-HTPへの合成に必要で、トリプトファンを大量に摂っても鉄が不足していては合成量は増えません。鉄はミネラルの中でも吸収率が非常に悪く、摂取量の15%ほどしか吸収されません。特に女性は生理によって毎月大量の鉄を失うため、意識して摂取する必要が。日本ではヘム鉄が主流ですが、ヘム鉄よりも吸収率が高く胃腸にもやさしいキレート加工されたフェロケル、という鉄がお勧めです。わたしも病院で処方されたヘム鉄は飲んですぐ胃痛と下痢になりましたが、フェロケルは問題なく飲めました。
◆サプリ通販サイト「iHerb」
・Source Naturals, アドバンスト フェロケル、180 粒 ¥1,065
※1日2〜3錠(54mg~81mg)
※人によって飲み始めは便が緩くor硬くなり、便の色が真っ黒になりますが問題ありません
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③ナイアシン、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12(ビタミンB群)
普段の食事がご飯、麺、パンなど糖質が多い方は代謝にたくさんのビタミンB群が必要なので要注意。意識してタンパク質を摂取するようになると、代謝にこれまで以上にビタミンB群が必要となります。ビタミンB群は体内で合成できないため、ビタミンB50コンプレックスというビタミンB群8種類がそれぞれ50mgずつ配合されているサプリで補っています。
◆サプリ通販サイト「iHerb」
・Now Foods, B-50、250粒 ¥2,234
※1日2〜3錠
※ビタミンBは水溶性のため過剰症の心配はありません。尿がとても黄色くなります。
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(3)メラトニンサプリの摂取
(2)の工程を飛ばしてメラトニンサプリを摂ることはもちろんできますが、(2)の栄養素は睡眠改善以前に、健康な体になるために不可欠な栄養素。(2)抜きでメラトニンを摂ることは、枯れた土地に生えた木に刹那的に雨を降らせるようなイメージです。藤川先生の栄養療法に取り組んで、タンパク質と鉄だけで睡眠改善された方もたくさんいらっしゃいます。藤川理論ではメラトニンは効果が強すぎるということで、ナイアシンが推奨されています。
メラトニンサプリ摂取量。
とはいえ、私はメラトニンを選んだわけですが、摂取量の考え方が難しい…。調べた情報をみていきます。
▼情報1
2018年4月フランス政府は炎症性疾患又は自己免疫疾患の患者、妊婦、授乳中の女性、子供、ティーンエイジャーに対し、メラトニンサプリの服用を避けるよう推奨。メラトニンには炎症促進性作用と免疫活性化作用があるため炎症性疾患、自己免疫疾患に罹患している人は内服しないよう警告しています。また一日摂取量を2mg以下に規制。原文はこちら。
▼情報2
不妊治療でメラトニンが処方されていることがわかり、その摂取量を調べてみると2〜3の病院で1日3mg寝る前に服用とありました。フランスの規制文にはこのように記載がありました。
”メラトニンを含むサプリメント摂取後に発生した90件の有害事象がANSESの栄養監視システムに報告された。有害作用は一般的な症状(頭痛、めまい、眠気、悪夢、過敏症)、神経疾患(振戦、片頭痛)及び胃腸疾患(吐き気、嘔吐、腹痛)のように様々であった。”
海外では1錠5mgや10mgのメラトニンも販売されているので、かなりの量を摂取したか、サプリの効果は個体差が大きいため繊細な反応が生じたか、どちらかかなと推測しています。なので3mgでそのような症状はそれほど多くないのではと。もちろん、体に合う合わないはあります。
▼情報3
Wikipediaにはこんな情報も。体内にあるメラトニンは0.3mg程度。
”0.5mgまでが生理学的な作用で、それ以上が薬理学的な作用となるため、通常の3mgの錠剤では生理学的な量の10倍となる。”
もともとビタミンは規定値を超えて大量摂取しているのですがビタミンE以外は水溶性で余分な分は排泄されます。メラトニンはそういう作用はないので生理学的な量が0.5mgまでということは知っておいた方がよさそうです。
さて、上記3つの情報を元に、どのように判断したかというと。メラトニンサプリは1錠3mgのこちらを購入しました。あれこれ悩んでも、試してみないとわかりません。ちなみに日本では製造・販売は許可されていないため海外のサプリサイトiHerbで購入。上限が決められており、1回に2ヶ月分までとなっています。
◆サプリ通販サイト「iHerb」
・Natrol, メラトニン、3 mg、 60錠 ¥750
※必ず就寝前。1時間前を目安に。
※iHerb紹介コード入力でどなたでも毎回5%OFF→ANG7430
ここ最近は寝つきが良いため必要なかったのですが、試しに0.5錠服用。入眠剤0.5mgと同じ効果を感じました。最近は入眠剤を使っていないので、効きすぎるくらい。ですが翌日日中に怠くなることもありません。適正量を探るため、次の日に半錠をさらに半分にし、0.25錠にしてみると、それでもしっかり効果があり、即寝。いつもは朝方4時ごろ一旦目覚めるのですが6時までノンストップでした。特に帰省時、入眠剤に頼ることが多かったのでこれで外泊時も安心です。
はい、ということで以上がメラトニンのおはなしとなります。長文にお付き合いくださりありがとうございました。読みやすくするため短くできないかと再考しましたが、どれ一つとして省いてはいけないと思いフルボリュームでお届けさせていただきました。何度も繰り返しになりますが、プロテイン 、鉄、ビタミンB群に挑戦されていない方はまずはそちらをお勧めいたします。その根拠をこちらの記事にまとめていますので、お暇があればぜひご覧ください。コメントもお気軽にどうぞ^^
▼更新中のマガジン「からだのおはなし。」はこちら
<参考文献>
●生田哲(2011)『脳と心を支配する物質』
身体弱ヨワ系のみなさんの、お力になれますように。