『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の庭園

キアヌ・リーヴス主演のアクション映画のシリーズ第4作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を見た。169分間ずっと誰かが殺し合っているこの作品の中で庭園がいくつか登場したので紹介していく。

1.大阪コンチネンタルホテル屋上庭園(架空)

 キアヌ・リーヴスはシリーズを通してずっと命を狙われているわけだが、今作ではまず旧友を頼って大阪にやって来る。その旧友が真田広之で、シリーズの重要な架空ホテルチェーン「コンチネンタルホテル」の大阪支店の支配人。撮影では、外観に六本木の国立新美術館(黒川紀章設計の名建築)を使用しているが、内観はベルリンの撮影スタジオ。
 キアヌと真田広之の久々の再会は、このホテルの屋上庭園で行われた。ロケ地はベルリンの国際会議場(通称ICC)。このベルリンの名建築の屋上庭園を和風にアレンジし、大阪コンチネンタルホテル屋上庭園とした。いわゆる外国人の思うJAPANなデザインだが、ダサくはない。「松」と「ネオン」という、どちらも日本的でありながら、決して同じ場所に置かれることはなかった2つが、見事に美しい景観を作り出している。ジョン・ウィックシリーズは、延々と続くアクションシーンが最大の特徴としながらも、そのルック、画面の美しさ、アート性も魅力のひとつだと私は思っている。特に今作の美しさはシリーズ屈指だ。パリ、ベルリン、ニューヨーク、大阪、それぞれで絵画的なショットが不意に現れ、その美しさに息をのむ。次に紹介するのは、その中の1つとなったシーンの舞台となった庭園だ。


2.大阪コンチネンタルホテル庭園(架空)

 真田広之vs盲目の殺し屋ドニー・イェンの舞台となったのが、大阪コンチネンタルホテル庭園。全くの架空で、撮影スタジオに作られたものだろう。いわゆるホテル庭園で、日本でいえばホテル椿山荘の庭園に近い。森林のようになっていて、所々に紙の灯籠(石ではない。いわゆる地域活性化のイベントでよく使われる紙の中にライトを入れて綺麗となるやつ)が置いてある。それも美しいのだが、最も美しい、前述した絵画的ショットが見られるのは、建物と鐘楼を結ぶ道の左右が池になっていて、また所々に紙の灯籠が置いてあるところ。ここはあまりにも美しい。今作のベストショットのひとつ。フランス整形式庭園を和風にしたようなデザイン。一見、日本ぽさを感じるが、決して日本では見られないデザインだろう(整形式庭園+寺社庭園+ホテル庭園)。

3.リュクサンブール庭園

 パリの中心部にある庭園で、現在は公園となっている。悪名高い王妃マリー・ド・メディシス邸「リュクサンブール宮殿」に付属する庭園。
 香港を代表するアクション俳優ドニー・イェンの登場シーンがこの庭園。ただし、一瞬しか映らない。


付録)登場する建築・庭園・絵画リスト

<建築・庭園>
パリ
1.ガルニエ宮(ガルニエ設計、1875)ヴィランに謁見する場所
2.ヴェルサイユ宮殿 大厩舎(マンサール設計、1682)ヴィランが馬遊び中。出てこないが宮殿の庭園はフランス整形式庭園を代表する庭園
3.ルーヴル美術館 ドラクロワの絵画を鑑賞するヴィラン
4.ルイ・ヴィトン財団美術館(フランク・ゲーリー設計、2014)ヴィランの本拠地。美術館は遊園地「アクリマタシオン庭園」に隣接
5.サン・トゥスタッシュ教会(1532-163)最終決闘前で精神を落ち着かせる
6.トロカデロ広場(1878)最終決闘の詳細を決める会議
7.エトワール凱旋門(1836、シャルグラン設計)終盤の凱旋門の周りを延々カーチェイス
8.サクレ・クール寺院(1914、アバディ設計)最終決闘会場

ベルリン
1.国際会議場(ウィッテ+シューラー設計、1979)大阪コンチネンタル屋上
2.バウムシューレンベルク火葬場(シュルテス+フランク、1998)ヴィランが支配人にクビを宣告した場所
3.クラフトワーク(1961)大衆が踊りまくるクラブの内観
4.旧国立美術館(シュテューラー設計、1876)大衆が踊りまくるクラブの外観

その他
1.国立新美術館(六本木、黒川紀章、2006)大阪コンチネンタルの外観
2.ルーズベルト記念公園(ニューヨーク、ルイス・カーン設計、1973-2012)大阪から一時NYへ戻った時

<絵画> いずれもルーヴル美術館の同じ部屋に飾られている。
1.ドラクロワ《民衆を導く自由の女神》(1830)ドラクロワの代表作。ジョン・ウィックが体制からの自由を求めて決闘に挑むメタファー
2.ジェリコー《メデューズ号の筏》(1819)ドラクロワの兄弟子ジェリコーの代表作。乗客は見捨てられ船長だけ生き残った事件が題材。悪徳船長=ヴィランのメタファー
3.ドラクロワ《サルダナパールの死》(1827)古代の王サルダナパールの最期が題材。ヴィランの死のメタファー


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