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良運の方程式 第61話

福島原発のALPS処理水放出の決定を受け、中国政府は日本産水産物の全面禁輸措置を決定しました。過去にも台湾産パイナップルの禁輸措置やオーストラリア産石炭の禁輸措置など、政治的恫喝のために中国政府は度々禁輸措置を実施してきたのはご承知の通りです。今回も政治カードとして、中国は日本産水産物の禁輸措置を振りかざしてきました。短期的には水産業者の打撃は大きいものと危惧されますが、日本にとっては、思わぬ有難い応援団が現れました。在日台湾人団体の連合組織「全日本台湾連合会」が8月27日、日本の漁業者や水産物への応援を在日台湾人に呼びかける声明を発表したのです。今日はそのニュースをご紹介したいと思います。

①全日本台湾連合会とは?

2017年6月4日、台湾意識の強い在日台湾人団体17団体による連合組織として結成されたのが「全日本台湾連合会」(全台連)です。17団体には、在日台湾同郷会、在日台湾婦女会、日本台湾医師連合、台湾独立建国連盟日本本部などが含まれています。発足の際は、蔡英文総統も祝電を送り、「全台連が日台の友好関係を促進し、双方の友情を深めるために貢献してもらえれば…」と、期待を示しています。全台連の会長に選ばれた実業家の趙中正氏は「台湾優先、団結第一」を設立趣旨に掲げ、台湾人としての主体性を強く主張し、団結して日本と台湾の連帯感を強めたいと趣旨説明を行っています。

②今回の中国政府による禁輸措置への全台連の声明

「全日本台湾連合会」は8月27日、日本の漁業者や水産物への応援を在日台湾人に呼びかける声明を発表しました。「日本の水産物をたくさん消費して中国政府のむちゃくちゃな暴挙に反対」するよう求め、世界各地の台湾人に対する積極的な情報発信を促しました。

声明では、東京電力福島第1原子力発電所にたまる処理水の海洋放出が8月24日に開始されたことに触れ、国際安全基準を満たしていることを国際原子力機関(IAEA)が結論付けた「包括報告書」が公開された上で行われているものだと説明。十分に安全が保証されたものであるにもかかわらず、中華人民共和国が日本に対して各種SNSを通じて理不尽な抗議を行い、加工品を含む水産物の輸入禁止を一方的に決めたと非難しました。

その上で、在日台湾人は安心して日本の食材を食べているとし、「決して中国政府が主張する放射能の危険はありません」と強調。「われわれ日本に在住する台湾人は、日本政府および日本のあらゆる漁業、水産加工業者が生産する食品を支持します。安心が保証された日本の水産物を応援致します」と表明しました。

東京都内では8月27日夜、政治団体、福爾摩沙共和会の林逸民理事長ら一行の訪日に合わせた夕食会が複数の在日台湾人団体によって開かれ、にぎり寿司や刺し身、エビチャーハンなどの海鮮料理が振る舞われました。夕食会に参加した邱泰源立法委員(国会議員)は、台湾政府のこれまでの管理の程度や立法院(国会)の食品に対する要求はかなり厳格なものだと説明した上で、日本政府の処理水放出については「もちろん慎重に対応する。だが、過度に心配する必要はない。日本政府は必ずや熟慮の上で行っているものであり、危険を最小限にする状況下で、少なくとも全ての食品を安全の範囲内にとどめさせると信じている」と語っています。

③過去の日台の相互支援の歴史(大地震)

平成11(1999)年9月21日、台湾921大地震
震源は台湾中部の南投県付近で、最大震度は7を計測。台湾にとって20世紀最大の地震で、死傷者およそ1万4千人という大被害となりました。余震が続くなか日本は真っ先に救助隊を派遣し、阪神淡路大震災の経験を活かした救助活動を展開。さらに日本から送られた義援金は各国総額の8割におよび、このことは当時の台湾で大きく報道されました。

平成23(2011)年3月11日、東日本大震災
日本人である私達にとって、この時の被害は記すまでもないでしょう。そしてよく知られているように、このとき台湾から送られた義援金は官民合わせて260億円以上に及び、これは世界最多の額となりました。台湾からの支援はこればかりでなく、救助チームの派遣、民間団体による炊き出しや現金配布、復興住宅や病院建設への支援など、挙げればきりがありません。震災後の被災地へ直行便を飛ばして最初の旅行客を送った国も台湾でした。

平成28(2016)年2月6日、台湾南部地震
台湾南部の中心都市・高雄を震源とし、最大震度は7。強い揺れにより高層ビルの倒壊などが相次ぎ、死者120人以上という被害が出ています。日本は地震当日のうちに高雄に調査チームを派遣し、100万ドルの緊急支援を表明。自治体や民間からもそれぞれ義援金が届けられています。

平成28(2016)年4月14日、熊本地震
ここでもいち早く反応した外国は台湾でした。当時の馬英九政権は当初1000万円の寄付を表明するも、台湾国内から「額が少なすぎる」と突き上げを受けて6400万円に増額。ほかにも高雄、台南、台中など有力市の市長らが給与を返上し寄付に振り向けました。

平成30(2018)年2月6日、花蓮地震
台湾東部、花蓮県を中心としたエリアに最大震度7を計測。死者17人、家屋倒壊やライフラインの切断など、大きな被害が報告されました。このとき日本は、外国で唯一となる救助チームを派遣し、救援に従事しています。

④過去の日台の相互支援の歴史(地震以外)

令和2(2020)年4月21日、日本のマスク不足
中国の武漢から世界に拡大したコロナウイルス禍のなか、マスク不足に苦しむ日本へ、台湾から「日本加油」(日本がんばれ)とプリントされた200万枚のマスクが贈られました。その後さらに防護服5万着などが追加寄贈されています。

令和3(2021)年3月1日、中国による台湾パイナップル禁輸
従来ほとんど中国へ輸出されてたいた台湾パイナップル。まさに収穫期を迎えたこの3月、中国が突然「台湾パイナップルの禁輸」を通告しました。もちろん、今回の日本産水産物禁輸と同様、政治的な圧力です。台湾は対応策として日本へのパイナップル輸出に力を入れ、また日本でも台湾を応援しようとキャンペーンが張られたため、対日輸出量を含む販売量は前年度の対中国輸出量を超えることになりました。

令和3(2021)年6月4日、日本から台湾へのコロナワクチン支援
中国の妨害により、台湾は予定されていたドイツ企業からのワクチン調達が困難となっていました。それを救うため、日本は台湾へのワクチン支援をスピード感を持って実施し、第一弾として124万回分のワクチンが空輸されました。その後もワクチン支援は続けられ、計6回、420万回分のワクチン提供が行われました。

⑤まとめ

ご紹介したように、日台はお互いが窮地に追い込まれた時は、でき得る最大限の支援を善意を持って実施し合ってきました。東日本大震災の時、260億円を超える義援金で日本を助けてくれた台湾の当時の総統•李登輝は、「これで台湾大地震の時の恩返しが少しでもできたか」…と語ったとされます。「まさかの時の友こそ真の友」…と言いますが、今回の全台連の支援を呼び掛ける声明は、私達日本人に、真の友とは誰なのかを改めて認識させてくれます。

⑥最後に

ALPS処理水放出に反対しているのは、中国、北朝鮮、そして韓国の野党「共に民主党」等、一部の国や団体に留まっています。それらの科学的見地を無視した無謀な反対論は、水産業者への風評被害を煽っています。私達日本人は、風評被害に生活を脅かされている同胞を守る道義的責任があると思います。しかし、国内でも一部政党、勢力による中国と足並みを揃えた、風評被害に加担する日本人がいることはとても遺憾なことです。台湾等、海外からも支援の動きが出る中で、同胞を窮地に追い込む姿勢に対しては、憤りを持って抗議したいと思います。

今日も読んで下さり、ありがとうございます。皆さんがたくさんの「良運」に囲まれて幸せな毎日を送れますよう、心より祈念致します!


数多の若き英霊が海の藻屑となりました。感謝と鎮魂の誠を捧げます!合掌!