見出し画像

良運の方程式 第57話

皆さんご存知の通り、現在野球の世界一を決めるWBCが開催されています。東京ドームで行われた1次ラウンドで日本代表は4連勝で1位通過を果たしました。その第3戦で日本はチェコと対戦しましたが、日本の若きエース、佐々木朗希投手がチェコのエスカラ選手に対してデッドボールを与えてしまいました。そして、その後の佐々木投手の対応が、今チェコや米国のマスコミに取り上げられて大反響を巻き起こしていますので、ご紹介したいと思います。

①事の発端

佐々木朗希投手(21)は3月11日のチェコ戦に先発。4回に制球ミスで打者ウィリー•エスカラ内野手(24)の左膝に160キロを超えるストレートをぶつけてしまいました。「ボゴッ」という不気味な音が響くほどの衝撃で、エスカラ選手は、その場で仰向けに倒れ込み悶絶しましたが、やがて立ち上がって笑顔で一塁へ歩き出し、一塁ベース上で山川穂高選手が帽子を脱いで謝罪して何か話しかけると「大丈夫」と山川選手の背中に笑って手をやり、足の状態を確かめるようにファウルグラウンドでダッシュ。東京ドームの観客は大歓声と拍手でエスカラのスポーツマンシップとファイトを称えました。

②その後の佐々木投手の行動

ロッテマリーンズの広報室の公式ツイッターによると「ずっと気にしていた」という佐々木投手は、翌々日の13日、午前8時半過ぎに、東京都内にあるチェコの宿舎のホテルを訪れ、豪州戦が行われる東京ドームへ向かうバスに乗り込む寸前のエスカラ選手に2つの袋一杯に詰めたロッテのお菓子を手渡して、死球について謝罪したそうです。佐々木投手のこの紳士的行動に対し、チェコメディアや米国メディアが絶賛して報道しています。

③チェコメディアの報道

チェコのスポーツメディア「iSport.cz」は、マーティン•ハシク特派員の記事で「死球への謝罪:有名な日本人は袋一杯のお菓子を持参した」との見出しで、佐々木投手の行動を大々的に報じました。同記事では「ササキはエスカラの膝に162キロの強烈な死球を当てたことにきちんと決着をつけた。日本国民の憧れのササキが、土曜日の試合に起きた不愉快な出来事を謝罪に来た」とし、4枚の写真を掲載しました。バスの前でお菓子を受けとった瞬間、佐々木投手がエスカラ選手のボールにサインをしているシーン、ジャージをまくって左膝の当たった箇所に異常がないことを示しているものと、2人のツーショット写真です。 そして謝罪を受け入れたエスカラ選手のコメント、「素晴らしかったよ。謝罪に来たなんて信じられないよ。試合には死球はつきもの。日本人は素晴らしい人たちであり、素晴らしい文化。これ以上、何と言えばいいのか…」そして、「ピッチャーに直接謝罪されるなんて初めてだよ。彼(佐々木)に出会えて本当に良かった。彼は信じられないような人格者だ」と、佐々木投手の行動と、その人間性を称えるエスカラ選手のインタビューを配信しました。

また、チェコのパベル•ハジム監督が、豪州戦後の公式会見に日の丸に「必勝」と書かれたハチマキを巻いて登場、「スポーツが単なるビジネスではなく紳士の競技であることを思い出させてくれたロウキの行動にとても感謝している。20歳の彼はスポーツを超越した存在。大会前から私のお気に入りの選手だったが、今日私を虜にしてくれた」と語ったことも紹介しています。

④米国メディアの報道

今回の佐々木投手の行動を米国メディアも大きく取り上げています。ESPNは「日本のササキが死球の謝罪のためお菓子の袋を持ってくる」との見出しを取って「WBCでのエスカラの痛い経験は、日本の天才、ササキの予期せぬ訪問によって甘い終わりをもたらした」と伝え、WBCの公式ツイッターに投稿されたツーショット写真を掲載しました。記事では「WBCのデビューであっと驚かせた新たなエースのササキは、チェコの宿舎でエスカラに会い、2つのお菓子の袋とサインボールも渡した。21歳のササキは打者にぶつけた後にギフトを手渡す日本の慣習に従っていた」と紹介。エスカラ選手の「彼はいろいろな違う種類のお菓子をくれた。そして私は、彼に思い出としてボールにサインをしてくれないかとお願いした。このサインボールは手元に持って置いておくものだ。とてもクールだ。決して忘れないように大事にする」とのコメントも伝えています。

USAトゥデイ紙も「日本の天才、ササキがチェコ選手に101マイル(約163キロ)のボールをぶつけた後、お菓子の袋をプレゼント」との見出しを取り、「エスカラは投球を足に受けた後に見るからに痛そうだったが、最終的にいい終わり方をした。投球を打者にぶつけた後に贈り物を渡す日本の慣習に従って、日本の天才投手が翌日に大量のお菓子の袋2つをプレゼントした」と報じています。

⑤MLB公式サイトの反応

MLB公式サイトも今回の佐々木投手の紳士的な行動を称賛しています。 「ササキは世界のほぼ誰よりも速い剛速球を投げることができる。チェコ戦にササキは66球を投げ、21球が100マイル(約161キロ)を超えた。残念ながら、その投球の1つがエスカラの左足に当たった。信じられないことにエスカラは退場もせず、その後、欠場することもなかった。月曜朝にはササキが償いにやってきた。打者に当てた後に謝罪と贈り物を渡す日本の慣習に従い、ササキは、バスが球場に向かう前にホテルに立ち寄り、エスカラのボールにサインし、日本のお菓子がいっぱいに詰まった袋2つを持ってきた」

さらに、エスカラ選手の声と共に主将ペトル•ジマ選手(33)の「驚いた瞬間だった。日々、日本の文化に対する驚きが止むことはない。また1度、それがあってロウキは、スーパースターとして新たなレベルに達した。彼は時間を取ってバスまで来て、エスカラと会って、我々にお菓子をプレゼントしてウィリーのためにボールにサインをした。大いなる敬意の表れだ」とのコメントを紹介しています。

⑥まとめ

打者に当てた後に謝罪と贈り物を渡すという慣習は日本にはないわけですが、日本人の礼儀正しさや謙虚な姿勢に対する評価の表れとして、今回の佐々木投手の行動に賞賛が集まっているのでしょう。日本人が培ってきた文化には「おもてなしの精神」や物を大切にする「もったいない精神」など、優しさや慈しみを感じる美徳がたくさんあります。今回の佐々木投手の行動も、日本人の持つ美徳の一つとして、世界に大きな反響をもたらしました。時代は変われど、日本人として大切に守っていきたい精神ですね。

⑦最後に

佐々木投手がチェコ戦で先発した3月11日。12年前の同じ日には東日本大震災がありました。佐々木投手は、その震災によって実家の岩手県陸前高田市で父親、祖父、祖母の3人を亡くされています。今や世界中で注目される若き大投手になり、今回のように世界から愛される人間性を兼ね備えた立派な大人になった姿を天国から見て、お父様もお祖父様、お祖母様も、さぞかし微笑んで見守って居られるのだろうなと、フッと思いました。ご冥福をお祈り致します。合掌。

今日も読んで下さり、ありがとうございます。皆さんがたくさんの「良運」に囲まれて幸せな毎日を送れますよう、心より祈念致します!


数多の若き英霊が海の藻屑となりました。感謝と鎮魂の誠を捧げます!合掌!