コドモ受けとオトナ受け、アンパンマンこそ最強のキャラデザなのかもしれない

くやしい。。。父親になる前から、僕はデザイナーだった。

学生時代にはNeafの積木の美しさにおどろき、サブダの仕掛け絵本に一喜一憂し、オモチャやボードゲームを作る課題にハマって徹夜で作り込んだりしていた。

僕が教わっていた桑沢デザイン研究所は、バウハウスのモダンデザイン教育を下敷きにしていて、必然的に美しさの基準がミニマル寄りの教育が多かった。

だから、いつか自分が親になったら、こどもに買い与えるのはNeafにサブダにetc...

世の中にこんなにある、美しき工芸品の数々。これに囲まれて育つコドモは幸せだなぁ・・・と、勝手に考えていた。

Neafが拾ってきた棒に負ける世界

冒頭に戻ろう。くやしいのはなぜか？

それは、僕が顧客ニーズを見誤っていたことだ。わかりやすくいえば、こどもの好きなものはこども自身が選ぶ、そんな当たり前のことが見えていなかった。

1歳の次女は時価2万円のNeafの美しい積木よりも、道端で拾った棒の方が好きだ。ごきげんに振りまわし、先端にしゃぶりつき噛み砕く。お願いだからしゃぶるのはやめてくれ。

4歳の長女もNeafでは少し遊ぶものの、好きなのはアンパンマン。プリキュアにはまだ興味を示さないが、プリンセスになりたいとか鏡見ながらブツブツ言っているので時間の問題だろう。

これがどういう事かおわかりいただけるだろうか？？

仮にもインテリアデザイナーとして空間をデザインする立場でありながら、クライアントを説得も教育もできず、あまつさえクライアントに喜んでもらえるならばと自分の美学をあけ渡してしまった。。。

完全に、敗北感。。。

美しさとつまらなさ

ただ、子育てをしていていくつか気づいたことがある。

こども達が興味を示すものと、大人が美しいと思うものは必ずしも一致しないという事。でも、一致するものもある。

たとえば、シャボン玉。2人育ててみて、これには2人ともかなりの興味を示す。確かにシャボン玉は美しいし楽しい。

花火もそうだ。BBQや水遊びも。芋掘りなどの収穫体験も。
野山での土遊び、トランポリンのような巨大な遊具、ながい滑り台も。

ここら辺はたぶん、人工物よりも自然のものや体を動かすアトラクションに対して魅力を感じやすいのかもしれない。そして、情報が整理されて整然としたものほど刺激が少なく学びが少ない＝つまらない、になるのかもしれないと感じている。

家の中なら原色を多用してパキッとわかりやすい配色に、シンプルだけどハッキリくっきりとした要素。そういうキャラモノが受けがいい。

そういうモノはなるべく置きたくなかった。でも、シンプルで美しい（と大人が思う）空間が、成長期のこども達にとって刺激に欠ける退屈な箱なのかもしれない、そう思うとちょっと考え方が変わった。

偉大なる顔の丸いヒーロー

やなせ先生は偉大だ。

長女はアンパンマンが大好きで、将来はアンパンマンになりたいらしい。いくら長女の顔が丸いといっても、正円は目指さなくていいと思う。

「もう少し人間でもなれるやつのほうがいいんじゃないかな〜？」とお父さんは思うけれど、目指すのは自由なので彼女の意思は尊重したい。

でも、この顔の丸いヒーローが毎月表紙を飾っている「めばえ」という幼児雑誌を買った時は、違法薬物に手を染めるような気持ちになった。

幼児向け雑誌と付録のオモチャがあれば・・・2時間くらいは間が持つ＝仕事ができる。フリーランスで自宅で育児をしながらの状況では、この昼間の2時間は死活問題だ。

結局、僕は禁じられた冊子＝めばえに手を出した。

ディスカウントストアの売り場を思わせる、原色バキバキのコントラスト高めで雑多な配色。踊り狂う丸ゴシック。もはや余白を探すほうが困難なレイアウト。

こいつがうちの本棚に入るのか・・・

はじめて買う時はなんともいえない苦い気持ちになったのを覚えいる。が、食えないプライドよりも目の前の作業時間だ。締め切りは待ってくれない。

そうして手を出してみて、最初はかなりの抵抗があったが、受け入れてしまえばなんてことはない。

見下していた雑多で猥雑な幼児ゴシップ紙が、今では束の間の2時間を格安で提供してくれる神様のように思える。ベビーシッター雇えばこんな値段で2時間は無理だ。なんなら月刊じゃなくて週刊でお願いしたい。

こどもに教わるいろいろなこと

美しさとつまらなさが同居してしまうことを見つけたり、クリエーターとして子育てで得られた学びは本当にたくさんある。

僕はまだまだ、その学びを自分の創作に活かしきれていない。

でも、現在進行形で日々どんどん成長して行く娘たちを見ていて、この小さな先生たちから学べることを大切にしたいなと思う。

願わくば、Neafをもう少し遊んでくれると、お父さんは嬉しいんだけどなぁ。

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