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渋谷Niruのロゴデザインができるまで

2019年7月半ば、一通のメールが届いた。

いつもnote楽しく拝見させていただいています。

独立を目指して10年飲食業に携わり、8月から独立への一歩を踏み出すことになり、ロゴの必要性を感じています。

今は仮でロゴを作っているのですが、付け焼刃感がいなめず。。

それと、この相談をきっかけにヤマシタさんにお会いできたらなという目的もあります。note、ほんとにおもしろく読ませてもらってます!家賃を抑える方法の記事も勉強になりました。

なんて良い人なんだろうか!

僕のnoteの読者さんであり、新しくお店を出すのでロゴデザインをお願いしたいとのことだった。

店名が「Niru」
コンセプトは「煮込み料理とワイン」です。

ワインは日本ワインを半分は置き、煮込み料理は「地鶏の塩レモン煮込み」や「トリッパと黒目豆の煮込み」などどっちかというとジャンルレスな趣で考えています。

開業までの道のりをnoteに書いています。わたしの人となりも少しわかるかと思います。流し読みしていただけたら幸いです。

https://note.mu/westfumi13

僕はSNSは仕事のために頑張りはじめたのだけれど、実際に仕事に繋がるのはInstagramが多く、実はnoteでは初めてのオファーだった。嬉しくてすぐに返事をした。

そして、お店のこと店名や想いなどをヒアリングして、お会いしてすぐロゴデザインをお引き受けすることが決まった。


今日は渋谷に生まれたマイクロビストロともいうべき素敵なレストランの、ロゴデザインの舞台裏のお話です。


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現地を見つつ身の上話をする

まずはお会いして色々と開業へ至るまでの経験や、お店を開くにあたっての思いなどを聞かせていただく。

ロゴデザインは機能もだけれど、そこにかける熱量と思いがいちばん大事だ。

シンボルとしての視認性、WEBや紙媒体でも使える汎用性、店舗の看板として立体化しても不都合のないディティール、一目見て記憶に残るようなフック、長く使っても色褪せないタフネスさ。

でも、それら機能を設計して盛り込むのはデザイナー側の仕事。

しかしどれだけ優秀なデザイナーでも、はじまりの原点=オリジナルの想いを作ることはできない。だから、最初はオーナーさんの気持ちを汲み取って憑依させなきゃいけない。

ここはすごく重要なので、どういうお店でどんな風にお客さんに思って欲しいのか...などをじっくりコトコト聞き込んだ。



まずは方向性を探る

ヒアリングはできた。想いのバトンは預かった。

さて、今度はこの想いをベースにロゴの方向性を考えていく時間...


僕がオーナーさんだったら、こういうテイストのこういうロゴにしたいはず。

僕がお客さんだったら、こういうロゴのお店なら入ってみたくなるかも。

僕がSNSを流し見していたら、こういうロゴなら目を止めるかも。

あのお店の壁ならどんなロゴが似合う?


こんな風に、もしも自分が〇〇だったら?を何種類も想像しながら、イメージを寄せ集めていく。

そして特徴を整理しつつ、どんな要素を抽出していくのかを浮き上がらせていく。

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まず、煮込み料理というジャンル。

煮込むといっても色々ある。語源を調べたり、調理法を料理の技法書でもっと深掘りしたり、煮るという言葉の本質を探していく。

この時点ではまだゴールイメージはボンヤリ。


別々の表現の3種類の方向性

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もう少し絞っていくと、煮という漢字の成り立ちに当たった。燃え立つ炎の上にある鍋、そして象形文字をベースにした台の上のシバが特徴的。

ここら辺で、煮込み料理を感じさせる要素から3方向のデザイン案へと絞っていく。

A案:煮込んで角の取れた感じ
B案:炎と鍋と枝でピクトグラム化
C案:鍋のアイコンでシンプルに

ここまで決まったら、今度は実際にラフなロゴを作ってみることに。



A案:煮込んで角の取れた感じ

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まずはA案。これは、実際に鍋に文字の形に加工した素材(野菜など)を入れて煮込んでみて、取り出してロゴを作るという提案。

ロゴを作るプロセスそのものも動画に撮り、実際に煮込んでロゴを仕上げました、というアイデアだ。

遊び心はたっぷりだし、動画と連携してプロセスを見せると記憶にも残りやすいだろう。

反面、本当に美しい形に煮込めるのかは実験が必要だし、コントロール不能な要素も多い。手間もかかる。


B案:炎と鍋と枝でピクトグラム化

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B案では、象形文字の「煮」の文字に着想を得て、現代的な鍋と炎と蓋にアレンジして組み替えてみた。

また、漢字の「煮」という文字を入れ込んだお鍋と炎のカタチのアイコンを作り、合わせてNiruの最後のuの文字の下にも炎を描き込んでお鍋で煮込んでいるイメージにした。


C案:鍋のアイコンでシンプルに

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C案では煮込み料理の相棒であるお鍋をテーマにアイコン化し、シンプルに組んだ。

今回はこれは選ばれていないが、意外にこういう手の込んでいないサラッとしたオーソドックスなものが飽きがこなくて選ばれたりもする。

案数をたくさん作るのは無駄だ、1案で決めろ!というプロもいる。その言い分もわかる。

でも、プレゼンはプレゼントでクライアントへの贈り物だと思っているから、好きな人へのプレゼントは色々とこだわりたくなるものだろう。案を他にも作ることは、僕は決して無駄ではないと思っている。


そして後日...この3案を持ってオーナーの佐保さんご夫婦と夕食をしつつロゴをプレゼンした。

結果はB案のシンプルでモダンな印象のものが良いとのことで、B案をベースにさらに絞っていくことになる。


ブラッシュアップA案

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正統進化させたのがこちらの案。鍋のマークはかわいかったがお役御免で、その名残はUの下の炎に込めた。

最終的にこの形をベースにさらに細かく詰めていくことになるのだが、実はこの時点でも全然別の方向に振った案も用意していた。


ブラッシュアップB案

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もう少しアナログ感のある案。煮込み料理に使われていたであろう薪=燃料をイメージさせる枝のシルエットで文字を構成している。

A案のモダンでスッキリした印象から一転、柔らかくて手触りのある感覚だ。これはこれで好きだったし、この方向性はどうかな?と思って作ってみた。

実はB案も結構気に入っていた。こんな風にトレーシングペーパーという半透明のシートをかぶせて、ベースの形を意識しつつ手描きでラフを描いてからデータ化して調整...を繰り返して作る。こだわった料理と一緒で、意外と手間がかかる。


最終形を決め、細部をアップデート

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こちらが最終形。PlanA++++となっているが、要するにあれから4回ほど微調整をしている。

細かくいうと、まず文字の輪郭。コピー機で縮小コピーと拡大コピーを繰り返してアウトラインを荒らして、煮込み料理の角の取れた感覚を表現した。

Nの文字も可読性を上げるために突き出過ぎていた部分を調整し、rの文字の交わる箇所に液溜まりのようなニュアンスを加えて自然物の幹と枝の要素を入れ込んだ。

uの下の炎についてはコピー&ペーストで同じ形を並べたくなかったので、4つともバラバラに作り直した。

こんな細かいところ誰も見ないだろうが!と思いつつ、俺が見るんだよ!と自分で自分にツッコミを入れながら深夜にシコシコ作った。


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最終形が決まり、色設定やレギュレーションも決まり、印刷用のデータは納品した。各種SNSアイコンやヘッダー画像なども作って差し替えた。

本案件はこれにて完了!だったのだが、現地を見ているのでやはりドアにちょっとサインが欲しいな...と思っていた。

そこでサービスでドア面の店名サインも提案して、ようやく先日そちらも納品してガラス面にサインを入れてきた。


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お店のロゴなんてジェネレーターでサクッと作ることだってできる。クラウドソーシングで数千円でロゴを依頼できる相手もゴロゴロいる。既成のフォントをちょっといじって作る人もいるし、手間をかけたから正解って訳でもないだろう。

今回の案件、個人の方が開業時に払うフィーとしてはきちんとした報酬をいただいた。クラウドソーシングなら数十回くらいロゴデザインをお願いできるだろう。

そういう評価と信頼をいただけたことがまず嬉しいし、ご期待にこたえてちゃんとそれ以上の成果を出せたハズだ。

そして、佐保さんの作る料理や選ばれているワインと、これからもっと良いお店にしていきたいという思いがこのロゴと一緒に煮込まれて、深い味わいになっていけばいいなぁ...と1人の酒飲みとして期待している。


ー お店へ行ってみたい方へ ー

さて、ロゴデザインのnoteから興味を持ってお店へ行かれる人がいるかはわからないけれど、せっかくなので案内を置いておきます。

Niruの公式Instagramでは新入荷のワインがどんどんアップされているので、日本のクラフトワインを飲みつつ小皿料理を愉しみたい時にぜひ!

渋谷の路地裏で、L字型のカウンターでのライブキッチン。これから距離を詰めたい2人や、すでに仲良しの2〜3人でゆっくり飲んで語るのにはピッタリです。貸切なら10名〜20名くらいまでいけそうです。

気になるお値段はチョイ飲みなら3000〜4000円、がっつり飲む場合は何のワインを頼むかで変わりますが5000〜8000円くらいあれば収まります。

場所も渋谷なので、お声がけいただければ僕も行きます!呼ばれなくてもたまに座っている可能性あるので、ぜひよろしくお願いします。

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