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想像力に委ねず新規ビジネスを生む組織開発

起業あるいは新規事業の立ち上げ時は、多くの場合、1つのアイディアをカタチにすること(商品化)から始まるでしょう。そして、それが軌道に乗るなど初期の目的を果たすと、商品そのものよりも、それを世に出す意義が強調されるようになります。したがって、起業あるいは新規事業を生業と成すためには、この2つ、すなわち商品化と意義が、コインの裏表のごとく一体化していく必要があります。
生業となった新規ビジネスは、組織化されていくことになります。この時、“共通の目的”は“意義”から発生していくでしょう。そしてそれは、「理念」として言語化されていきます。余談ですが、組織が大きくなったり、あるいは事業の開始から長い時間が経過したりすると“共通の目的”が曖昧になっていくため、ビジョン、ミッション、パーパスなど、「理念」に屋上屋を重ねていくことが必要になっていきます。いずれにしても、“共通の目的”が組織メンバーにとっての鎹(かすがい)となり、貢献意欲やコミュニケーションを土台としたシステムを形成していくうえでは、重要な要素だと考えます。具体的な商品だけでは、そこから何ができるのかといった未来を、狭い範囲でしか照らしてくれません。しかし、抽象化された概念から描き出せる未来は、限りなく広がっていきます。しかも、どのように広げていけば良いかの具体的指針は、既に商品として示され、それは一定の成功を収めています。だから新規ビジネスは、強い求心力を持つのでしょう。
一方、新規ビジネスには、「出る杭は打たれる」のごとく厳しい処遇に甘んじる(規制に阻まれる)こともあれば、「勝ち馬に乗る」がごとく有象無象が群がってくることもあるでしょう。この時、創業者あるいは創業メンバーが「理念」を守り通せるほどに強いと、これらを払拭し、カリスマとしてもてはやされていきます。そして新規ビジネスは、ある意味で既存の視座に対するアンチテーゼとなり、既存の視座の中で十分な満足を得られなかった層に対して魅力的な存在に映っていくことでしょう。
このように成功したビジネスは、多くの人とお金を囲い込み、やがて“新たな既存”となっていくのかもしれません。
しかし“新たな既存”は、既存となることで新たな視座を必要とすることになるでしょう。また、それ以上に、新しさが見かけだけで、実体は既存の温存ということも、しばしば見られます。1つの視座は、他の視座を見失わせてしまいます。そして“既存”を覆したという成功体験が、その視座を永遠不変のものと錯覚させていきます。オーバーツーリズム対策として、外国人観光客だけ割高にしようとする動きがあります。これに対して、2重価格は公正さを失うという意見があります。また、G7で2重価格を採用している国はないと指摘する声もあります。しかし、観光は輸出産業だとみなせば、国外と海外での販売価格が異なることは自然です。つまり、オーバーツーリズム対策としての外国人価格は、単に為替の問題だということです。この考えに基づいてG7各国が2重価格を採用すれば、外国人観光客割引を実施しなければならないでしょう(だからG7各国は2重価格を採用していない)。
新規ビジネスの創造には、新たな視座の獲得が必要であると同時に、常に視座を増やしたり、移動させたりする柔軟性が必要だと思います。そうでなければ、創造された世界も一過性のものとなっていくのではないでしょうか。

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