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牛肉 × D2Cビジネスの可能性

今回は牛肉のD2Cについてビジネスの可能性を検討していきたいと思います。

1. 食料品におけるD2C

食料品が生産者から消費者に届くまでのプレーヤーを整理してみます。

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食料品はコンビニ、AEON、スーパーなどオフラインでの購買も多い中、コロナやスマートフォンの普及によりECの比率も上がってきています。

Amazon・Yahoo・楽天などの大手プラットフォーマーではない、食料品を直販するサービスも増えてきました。

野菜や果物でいうとOisix食べチョクなどがあります。

一方で畜産業、すなわち牛肉・豚肉・鶏肉などの生産者が、商品を直販する事例が出てきていないのではないかという仮説の下、D2Cビジネスの可能性を検討していきたいと思います。


2. 牛肉業界の概要

畜産業の中には、牛、豚、鳥などがありますが、今回は牛肉に絞って見ていきたいと思います。

農水省の資料によると、毎年牛肉は約850千トン、国産は約350千トンほど消費されており、国産の割合は約40%です。

牛肉350千トンは3.5億kgなので、牛肉のkg単価を3000円とすると、約1兆円の市場規模があります。

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国内の流通構造は下記の通りです。販売額は農水省などのデータを元にした推定値です。

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肥育農家から生きている牛が運ばれ、と畜卸売業者(①食肉卸売市場、②食肉センター、③と畜場)のいずれかで食用の枝肉に解体されます。そこから加工仲卸業者を通して、小売事業者に販売されます。

食肉卸売市場や食肉センターは、と畜場に衛生的に不備な点が多かったこと、流通過程が不明朗で価格も不安定であったことを背景に、国によって1960年代に全国に作られた組織です。

食肉卸売市場では、牛肉が分類され、肉の品質と肉がどれだけ取れるかでランク毎に価格が付けられます。

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牛には、肉用牛(牛肉を生産する目的で飼養されている牛)、乳牛(酪農経営で産まれた雄牛を肉向けに肥育したもの)、交雑牛(乳牛の雌に肉用牛の雄を掛け合わせて質の向上を図ったもの)の3種類があります。

例えば、東京食肉市場の肉用牛(和牛)の価格は下記です。

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東京食肉市場でせりに参加して枝肉を購買し、加工して販売しているのは例えば下記の企業などです。

この企業から飲食店やスーパーなどの小売店に商品が卸されて、その後消費者の手に届きます。


3. D2Cビジネスの可能性

D2Cは辞書的には以下のように定義されることがあります。

新しい消費の価値観を持つミレニアル世代以下のターゲットに対し、ユニークな世界観を下敷きにしたプロダクトとカスタマーエクスペリエンス、SNSや店舗を通じた顧客とのダイレクトな対話、垂直統合したサプライチェーンを武器に、VCから資金調達を行い、短期間に急成長を目指すデジタル&データドリブンなライフスタイルブランド

牛肉を活用したライフスタイルブランド構築の可能性について、みていきます。

海外の事例でいうと、シリコンバレーのスタートアップ、Porter Roadが参考になります。シードラウンドでCollaborative Fundから3.7億円を調達しています。

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豚肉、ラム肉、鶏肉など高級な熟成肉を購入できます。地元の畜産農家と契約し、飼育段階から熟成処理、パッキングといったすべてのプロセスを管理することで、厳格な基準を満たした製品のみを提供しています。

熟練のシェフと精肉店のオーナーが創業し、当初はナッシュビルの店舗販売のみでしたが、ニーズの増加に伴いオンライン販売も開始しました。好きな肉を選んで定期的に届けるサブスクリプションボックスも行っています。

国内ではミートガイという企業も輸入肉を中心に販売をしています。

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Youtubeで調理方法を乗せたり「肉食女子会!」というコンセプトでおいしく食べている様子を見せるなど工夫しています。

また、りんご和牛のように、地域の食品産業から出てくる副産物を発酵処理して飼料として使うユニークな育て方をする牛もあります。りんごの滓を含んだ時に、通常の肉よりもグルタミン酸の含有量が多くなり旨味が出るという発見をし、「りんご和牛」としてブランディングしています。

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D2C事業の立ち上げのためには、加工・仲卸業者から肉を買い、ブランディングをして販売する形になります。

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牛肉は下記理由からも、D2Cに適した商材だと思っています。

①ブランド価値を作りやすい

牛の育つ地域・育て方・加工方法は様々なので、生産過程をストーリーとして描くことができます。それによってブランド価値を作り、高価なものとして販売することができます。

②コミュニティを作りやすい

野菜・果物・米などと比較すると、消費者が高級商材と認知していることもあり、パーティー・BBQ・肉フェスなど体験型のコンテンツも盛り上がりやすく、コミュニティを使ったマーケティング活動ができます。

③リピート消費する

食品なので消費のサイクルが早く、気に入いれば何回もリピートしてもらえる可能性があります。

コロナの影響もありEC事業者は多少増えた気がしますが、近いうちに、牛肉D2Cブランドが出てきそうな気がしています。

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スーパーに売っている説明の無いパックの肉を何となく買うよりも、ブランド説明のある肉を、オンラインで買う時代がすぐに来ると思います。

今回は「牛肉 × D2C」の可能性について考察してみました。

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