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「強い想い」で勝ち取ったチャンピオンと成長

2020年のシーズンを終えたSUPER GT。私が応援するRAYBRIG、牧野任祐選手はRd.8のチャンピオン、そしてシリーズチャンピオンに輝いた。この瞬間、私は心の底から「牧野選手を応援していて良かった」と思った。まだ応援し始めて2年目。でも牧野選手は確実に強くなっていると感じた。昨年から応援してきて、今回優勝した牧野選手の姿を私なりに残しておきたく、筆をとりました。私は牧野選手の知り合いでもなんでもなく、ただのファンです。そのため推測も、私が見ていて感じた主観もあります。でも牧野選手の素晴らしさ、強さ、魅力を1人でも多くの人に伝えたいので書きます。

シリーズチャンピオンになった牧野任祐


11/29(日)ひんやりとした風が吹く曇り空の富士スピードウェイ。誰もがシリーズチャンピオンになりうる可能性を秘めた異例の接近戦となった2020 AUTOBACS SUPER GT最終戦。牧野選手がドライブするRAYBRIG NSX-GTは予選7位という結果により4列目からスタート。もちろんRAYBRIGもこの最終戦でチャンピオンになれば、シリーズチャンピオンになりうる位置にいました。ですが、前には同じくシリーズチャンピオンを目指す6台がいるという厳しい戦い。最終戦前のチャンピオン予想では上位にいたRAYBRIG。私も望みを捨てずに祈り続けていました。


前半スティントを担当するのは牧野選手。グリッドにマシンを停め、マシンから降りてきた牧野選手。

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一度ピットに戻り、なかなか戻ってきませんでした。いつもわりとそうなのですが、最終戦の時はいつも以上に戻ってこなかったような気がします。今考えると、監督と最後に戦略を話し合ったり、精神集中していたのかもしれません。


スタート直前に戻ってきた牧野選手。

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淡々と準備をし、

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最後山本選手と話をし、マシンに乗り込みました。

フォーメーションラップでは念入りにタイヤに熱を入れ、無事にスタート。スタート後は一時8位に下がるも、ここから“攻め”一点の走り。「あ、やる気だな」と見ていて思いました。500クラス・300クラスを問わず、「どけどけ!!」と言わんばかりのパッシングに牧野選手らしいなと微笑ましく、とてもカッコよく私の目には映りました。前に立ちはだかるSupraたちを「なぎ倒す」という言葉がぴったりなほど、どんどんと抜いていく姿に大興奮でした。

そして見事7位から2位まで追い上げ、22周目にピットイン。山本選手と交代をし、給油・タイヤ交換を終え、RAYBRIGはコースに戻って行きました。

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交代の際に山本選手が牧野選手のヘルメットを「よくやった!」と言わんばかりに叩いた姿にグッときました。

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牧野選手は最高の状況で山本選手にバトンを渡したと思います。前に他チームのマシンはいるものの、「山本選手であればやってくれる」という安心感がありました。

この牧野選手の走りは本当にカッコよかった。第7戦のSC明けの牽制MAXな走りもカッコよかったかど、やっぱり牧野選手には“攻め”が似合う。きっとこの走りにチーム、山本選手も刺激を受けて、チャンピオンを獲る!という気合いが入ったのではないかと思います。

山本選手が後半スティントを担当。後ろから責めてくる36号車au TOM’S GR Supraにヒヤヒヤしながらも、山本選手はしっかりと守り抜き、2位からトップを走る37号車KeePer TOM’S GR Supraを追いかけます。後半スティントのスタート時点では15秒あった差が徐々に縮まり始め、ついに2秒差まで詰め寄ります。ですが、残りのラップ数を考えると、37号車を抜くまでは厳しいか…と、誰もが「優勝は37号車」と思った次の瞬間、信じられない光景が目の前に広がったのです。なんとチェッカーの約400m手前で37号車が突然のスローダウン。原因はなんとガス欠。その隙に山本選手が37号車を抜き去り、100号車がRd.8のチャンピオン、そして2020 AUTOBACS SUPER GTのチャンピオンになったのです。

※レース全体の詳細は下記記事をご覧ください。


チャンピオンへの強い想い


誰もが予想していなかった100号車RAYBRIG NSX-GTのチャンピオン。山本選手がチェッカーを受けた時、牧野選手はピットウォール・スタンドにいました。そしてチャンピオンになった瞬間、泣き崩れていたのです。

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いつも強気で自信たっぷりで、時には人をいじるようなキャラクターである牧野選手の泣きじゃくる姿。この姿を見て、涙せずにはいられませんでした。この涙こそ、1年間、牧野選手が100号車に乗って戦うSUPER GTにいかに本気で取り組んでいたかということを物語っていたように思います。

今シーズンの開幕が新型コロナウイルスの影響により、延期になっていた時、私はこんな記事を書きました。

ここには2020年シリーズをRAYBRIGで走ることに対する牧野選手の覚悟が記されています。

牧野選手は2019年もSUPER GTに参戦しており、2019年シリーズでは64号車Modulo NSX-GTに乗っていました。ですが、牧野選手は2020年、自らの意志で100号車RAYBRIG NSX-GTに移籍しました。その時のことを牧野選手はこう話しています。

2019年シーズンは、ホンダ勢のなかには優勝をしているクルマもあったのに、ぼくはそういう領域で戦えなかったので、今年はチャンピオン争いができるクルマに乗りたい、どうせなら事実上ホンダのエースカーである100号車で(山本)尚貴さんと組んでみたいと思っていました。
思うだけでそういう気持ちを外に向けて表現しないでいるよりも、周囲に「牧野はこういうことを言っていたな」と意識してもらうほうがいいと思ったので意思表示をしました。

Nakajima Racingを離れて、新しい環境でチャレンジすることを選んだ牧野選手。しかもHONDAのエースカーである100号車、ジェンソン・バトン選手の後任として。これがものすごいプレッシャーであること、覚悟を持たなければできないこと、口だけではできないことであるのは容易に想像ができます。
そんなプレッシャーを感じながらも、

結果を出せばその先にいろんな話がついてくると希望を持って、しっかり結果を出すつもりです。

と力強く語るのが、なんとも牧野選手らしい。

2019年の頃から牧野選手は常に「勝ち」にこだわっていました。というかきっとこれまでもずっと牧野選手にとって一番大切なことは「1位になること」だったのではないかと思います。「勝ちたい」「優勝したい」という想いが人一倍強く、そういった感情をこれほどまでに強く全面に出しているドライバーはあまり見ないように感じます。だからこそ結果が出なかった時、ミスが起こってしまった時は心の底から悔しがり、怒り、落ち込んだりするのが牧野選手の良いところだと思っています。


そんな牧野選手は2020年1月のオートサロンでの体制発表の時に、「100号車を1号車に戻す」と力強く宣言していました。

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そして11/29(日)、見事その言葉の通り、チャンピオンになったのです。優勝が決まった時の泣きじゃくる姿は、100号車に乗ることを表明する勇気、覚悟、そして100号車に乗り始めて、さらに感じたであろう重圧、不安、プレッシャー、そしてより強くなったであろう「勝ち」への想い。その全てが詰まった涙だったのではないでしょうか。

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牧野選手の成長


SUPER GT 2020年シリーズを通して、牧野選手はすごく成長したように感じます。(おこがましい発言ですが…)
印象的だったのが、泣きじゃくりながら受けたインタビューのコメントです。

そうですね…。あの、ちょっとなんて言葉にしたらいいかわからないし、えー…37号車がレース、リードしてて、僕たちペースは良かったんですけど、まさかこんな結末で終わるとは思ってなかったですし、もちろんチャンピオン獲れて、初優勝もできて、本当に最高なんですけど、1年間、37号車とも一緒にレースしてきて、ちょっと鈴鹿でアクシデントがあったりもしたんですけど、もちろん平川選手、山下選手、ニック選手の気持ちもわかってるつもりなので…。
ただ、本当にチャンピオンが獲れて良かったです。チームのみんなのおかげでありますし、本当尚貴さんに1年間お世話になって、本当頼りっぱなしだったので、本当に良かったです。

昨年、SUPER FORMULAでチームメイトだったアレックス・パロウ選手が優勝した時、パロウ選手に祝福の言葉をなかなかかけられず、Twitterでレース2日後に「正直中嶋レーシングの9年ぶりの優勝も素直に喜べない自分がいる」と吐露していた牧野選手が、平川選手や山下選手、ニック選手への言葉や配慮、敬意、周囲への感謝の気持ちをしっかりと伝えている姿に頼もしくなったな、大人になったな、と感じました。(ちょっぴり寂しさも笑)

自分の感情が先走って、いっぱいいっぱいになることは誰しもあるし、消化できないこともある。でもチームワークが重要な競技であるからこそ、牧野選手の周囲との関わり方が良い影響を及ぼすこともたくさんあると思います。チーム1人1人の成長がチーム全体にプラスの影響を与えて、結果が出る、というのはどんな組織でも最高のチームです。きっとTEAM KUNIMITSUはそんなチームなんじゃないかなと推測します。だから優勝できたんじゃないかなって。

レースでも2019年は本来の牧野選手らしい「強い」レースをなかなか見ることができず、「速いのに強くない」と牧野選手自身も話していました。ですが、今年は、特にシーズンの後半は速くて強い牧野選手をたくさん見ることができました。牧野選手の「見たかコラーーーー!!!!!」が聞こえそうなレースが、たくさんあって、すごくカッコよかったし、魅了されました。

きっと2019年、1年走って、自分の強みと弱みを自覚して、ちゃんとそんな自分を自分で認め、弱さとも向き合い続けた2020年シーズンだったのではないでしょうか。RAYBRIGに走っていれば、山本選手との実力差を感じる場面も多々あったことでしょう。でもそれを確実に吸収していって、レースでも牧野選手らしい強気で自信たっぷりな走りができたから、チャンピオンになれた。

「自らが目指す目標のために、自らの力で環境を作り出し、その環境で自らを自らの力で成長させる」

有言実行で成し遂げた牧野選手はまた一つ自信をつけ、強くなったのではないでしょうか。
かつてFIA-F4でシリーズチャンピオンを逃し、泣きじゃくっていた少年が、SUPER GTのシリーズチャンピオンとして泣きじゃくる青年へと成長した姿に私は大きな人間ドラマを感じました。
これだから牧野選手のこと応援するのやめられない。
2020年はSUPER FORMULAでの戦いがまだ残っています。まだまだ強い牧野選手を私は見たい。

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