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推しが入隊することがわかった日に読むnote

韓国で活躍する男性アイドルや男性アーティストを好きでいれば、いつか必ず訪れる兵役、軍隊、入隊。様々な言葉で表されるこの試練はオタクにとって“推しと会えない約2年間”を指します。韓国の義務である以上、満28歳になる前にこの兵役という事実を突きつけられることを覚悟しているオタクはたくさんいると思いますが、いざ突きつけられた時ー。どんな感情になるのか、どんな風に空白の2年間を過ごせばいいのか、不安でいっぱいになるオタクたちもたくさんいると思います。そんなオタクに読んでほしい。私の実体験をもとに兵役を乗り越えてほしいというエールを込めてお届けします。

兵役とは?

韓国と北朝鮮は現在、休戦状態ではあるものの、いつ戦争が起きてもおかしくない状況です。そのため、韓国では戦争に備えるために兵役制度を採用しています。具体的には「兵役法」で全ての成人男子(韓国では満19歳で成人)に兵役の義務が課せられています。所属によって期間が異なり、陸軍と海兵隊が21カ月、海軍が23カ月、空軍が24カ月とされています。入隊する年齢は基本的に19歳からとされていますが、進学や芸能活動などのやむを得ない理由で延期することもでき、多くの芸能人はこのパターンで延長しています。以前は満30歳までには入隊をしなければならないとされていたのですが、2018年5月に兵役法が改正されたことにより、現在は満28歳までに入隊をしなければならないとされています。場合によっては入隊を免除されるケースもありますが、その理由は外国の永住権を持っていることや徴兵検査で身体的または精神的に兵役が不可能と判断された場合など、非常に限定されています。

すなわち韓国で活動する男性アイドルは韓国国籍であれば、この兵役からは逃れられないのです。そして韓国の男性アイドルを推してるオタクも兵役から逃れられないのです。
先日、私が応援しているPENTAGONのリーダー、フイが12月に軍隊に入ることが発表され、オタクたちの動揺、悲しみ、葛藤といった複雑な感情がTwitterに蠢いていました。

では、そんな兵役が決まり、実際に兵役に行っている約2年間、どんな風に過ごして耐え凌ぐのか、自分の気持ちの整理をどうつけるのか、あるいはオタクとしてあるべき姿は何か、そんな話をしたいと思います。
一つ言えることは兵役は推しの人生においても推しを取り巻く環境においても「大きな区切り」であるということです。

兵役が決まった時にオタクが抱く感情

推しが兵役に行くことが決まった時、オタクが抱く気持ちは寂しい、悲しい、2年間どうやって生きていこう、グループは大丈夫かな、そんなやり場のない気持ちがぐるぐるとすると思います。
推しに恋していたら…2年間姿を見ることができないという事実に自分が耐えられるか。とにかく寂しくて、悲しくて。兵役の2年間、怪我をすることなく、推しが過ごせるかと心配になる。会えない日々を憂いで、推しを心配する。
推しが生き甲斐だったら…推しの活動を主軸に自分の生活を組んでいたり、推しの現場で会う友人たちとの交流が生活の中心になっている。推しがいなくなったら、自分も現場に行かなくなり、生活がどうなるのか?自分の休みの過ごし方はどうなるのか?と全く想像がつかない不安に襲われる。
箱推しだったら…他のメンバーへの影響を心配したり、活動がどのくらい減ってしまうのか心配になる。また兵役に行くメンバーがメインコンポーザーの場合は楽曲のリリースはどうなるのか?という不安が生まれることも。

もちろん上記に書いた不安は不安になって当たり前なことで、いなくなる空白期間、会えなくなることはオタクにとっては不安を通り越して、ちょっぴり怖い、なんて感情にもなるかもしれません。でも実際に私がオタクとして兵役を経験して思う一番の大きな不安は軍隊に行く前から徐々に始まり、行っている間にどんどんと変化する推しを取り囲む環境なのです。

私のオタクとしての兵役経験

私はBIGBANGのG-DRAGONを推していた時に推しの兵役を経験しました。「BIGBANGの兵役」と言えばわかる人はわかる、BIGBANGが活動してきて最大といってもいい程の危機が訪れ、それのせいなのか彼らはいまだに活動を再開できていません。
G-DRAGONが兵役に行ったタイミングは法律で決められたギリギリのタイミングで、オタクたちの中でも「もう行くよね…行かないとやばいよね…」という空気が流れていました。BIGBANGのメンバーの年齢構成としてもメンバー間にそこまでの年齢差がなかったため、5人一緒に行くんだろうと。人気絶頂だったこともあり、ギリギリまで引っ張るだろうと。そのため、公式としても兵役前最後のドームツアーをやったり、兵役に向けたラストスパートがかけられました。そして歳上だったT.O.Pが一足先に2017年2月9日に入隊。その後、SOL、G-DRAGON、D-LITEがそれぞれ2018年2月、3月に入隊。末っ子のV.Iだけが残る形でそれぞれ入隊していきました。

そもそも推しが入隊するとどんなことが起こるのか。入隊を告げられるまで色んな想定をしていました。一番はリアルタイムに顔が見れなくなること、番組への露出がなくなることはもちろん、SNSの更新もなくなるんだよなぁと。この辺りがつらいんだろうなぁと思っていたんですが、実際はそれ以上につらいことがありました。それは毎年のツアーがなくなること。韓国のアーティストだと日本でのツアーはなんとなく毎年同じ時期にやっていると思います。BIGBANGも毎年11月〜1月くらいまで日本各地にあるドームでツアーをやっていました。その間は福岡から東京まで全国を飛び回って、何度も会場に足を運んでいました。コンサートに行くだけでなく、オタク友達と各地の観光をしたり、各地でいつも行く定番のお店があったり、と知らぬ間に毎年恒例の慰安旅行みたいな年間イベントと化していたのでした。それがないことがなんとまぁかなり退屈。お金は貯まるけど、「あ〜ツアー始まる!繁忙期が始まるよ〜!」っていうワクワクドキドキでもちょっと大変だな!感が無くなる。そもそもそんなことが自分の人生のルーティンになってたことにすら気付いてなく、そんなことが喪失感になるとすら想定していなかったので、すごく驚いたことを覚えています。リアルタイムで顔が見れないこと、会えなくなることは覚悟していたので、そこまでしんどくなかったけど、この喪失感によって、より「あ、会えないんだ」っていうことを再認識した感がありました。

その後のBIGBANGのことについて。2017年6月にT.O.Pが大麻吸引で摘発。その後、精神安定剤の過剰摂取で緊急搬送されたこともあり、ファンとしてはすごく心配する状況が続きました。T.O.Pには懲役10ヶ月および執行猶予2年、追徴金87万ウォン(約8万5千円)を求刑。世の中からも大きくバッシングされました。そしてBIGBANG史上、いや韓国の芸能界史上、最悪の事件が2019年2月に起こります。その名もスンリゲート事件。この事件によってBIGBANGが築き上げてきたものは全て崩れ去ります。スンリゲート事件はあるクラブで起きた暴行事件をきっかけに芋づる式に犯罪が表面化。これらの犯罪容疑で司法当局から調査を受けたV.Iは全ての容疑を強く否認し、反省した様子を見せませんでした。そのため、大きな批判を受け、社会に大きな波紋を起こしました。V.Iは性売買斡旋、証拠隠滅教唆、食品衛生法違反、性暴行犯罪の処罰に関する特例法違反、横領など7つの容疑を受け、この一連の騒動により、芸能界引退を表明し、BIGBANGを脱退、所属事務所であるYG ENTERTAINMENTとの契約も解除されました。
これだけに収まらず、BIGBANGをプロデュースし、当時YG ENTERTAINMENTの代表を務めていたヤン・ヒョンソクも6月に立件されました。性売買斡旋などの行為の処罰に関する容疑を受けており、過去にソウルの高級レストランで海外の投資家を相手に性接待をした疑惑でした。
さらに2019年7月D-LITEが2017年に買収したカンナムの建物で違法な遊興酒店(いわゆる風俗店等)が運営され、性売買斡旋まで行われているということがメディアによって告発されました。

これらは全て入隊後に発覚したこと。V.Iの事件が引き金になったことは間違いないですが、まさしく鬼の居ぬ間に。これらの騒動によってBIGBANGはもちろん、韓国三大事務所と言われていたYG ENTERTAINMENTは転落していきました。ただでさえ、BIGBANGがいない間の稼ぎ頭がいない状況だったのにも関わらず、追い討ちをかけるように。

「BIGBANGは戻ってこられない」「BIGBANGは活動できない」そんな言葉が叫ばれる中で、BIGBANGがYG ENTERTAINMENTと再契約したことはわずかな可能性ではありますが、会社が傾きかけている状況をどう打破するのかというのは気がかりではあります。

兵役を経験して

私はG-DRAGONが入隊すると決まった時、「まぁ会えなくなるし、見れなくなるけど、お金貯まるかな」なんて思っていたりして。でもこの一連の騒動を見て、ファンが本当に果たさないといけない役割は「兵役後、推しが活動できるように戻る場所を守り続けること」だと痛感しました
2年弱もあれば、世の中の流行も動きも大きく変わります。その中で推しの身に何かが起こるかもしれないのはもちろん、推しが所属するグループに何か起こるかもしれない、事務所に何か起こるかもしれない。今は法律が変わったこともあり、グループ全員が一気に入隊するということはなくなり、少しリスクが減ったように思いますが、こういうことも起こるんだなと教訓にしています。

「推しのいないグループにお金払うのは…」
「推しのいない現場に行くのは…」
その気持ちはすごくよくわかりますが、ドライに見るとオタクができることはお金を払うことしかない。残念ながらそれが現実だと思うと、推しが戻ってくる場所を守り続けることが一番大切なのかも、と思うのです。
些細なことでもいいと思います。CDを1枚だけでも買い続けるとか、ファンクラブを継続するとか。私はBIGBANGのファンクラブは入隊中に退会してしまったけど、買い忘れていたDVDを大量に買ったりしていました。

ただ兵役って推しにとってはそんなに悪くないものだと思います。むしろ一つ、人生において節目を迎えるというものだと私は認識しています。もちろん訓練はキツいし、怪我のリスクが付き纏う。でもアイドルになっている推しは幼少期からこれまでずーーーっとアイドルになるために24時間365日練習漬けの日々。練習生として限られた世界で限られた人たちと過ごしています。ライバル意識なく、気軽に付き合える友達もきっと少なかったはず。男同士でバカ騒ぎしたり、プレッシャーや何かに追われることなく規則正しい生活ができる。自由はないけど、人からバッシングされたり、過度なプレッシャーから解放され、健康になる芸能人もたくさんいます。G-DRAGONも心穏やかな表情をしていたのがすごく印象的でした。


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アイドルとして生きる人生の休暇と言ってもいいのかもしれません。だからこそ祈るべきことは健康で行って帰ってきてくれること。戻ってきてくれること。

少し休んで、また輝く推しに会えるように、推しと話せるその日が来るように。推しが入隊することがわかったあなたには2年弱推しの居場所を守る大切な役目がある。推しを推し続けてほしいと願うのでした。



おけい

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