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嘘と光

この世に倦んだわけではない

君への情緒が成長し過ぎたために

強い無意識の力に抗えなくなった

だから私には消え去る道しかなかった


君にこころを固く繋ぎとめられて

かつて私の知らなかった欠片が生まれた

でも君のために嘘を吐き 

秘めたものは何も伝えられなかった


言葉と想いとが次第に離れてゆき

ひとみに捉えられないほど遠くに去ってしまう

君に教えられた情緒を伝える言葉は失われ

呪いのこころだけが残る


忘失した言葉を取り戻すために

気の遠くなる道を走り続けた

でも君のために嘘の真実を紡ぎ

大切なものは何も伝えられなかった


最後の最後の機会を得るために

深淵をまいで歩み続けた

でも優しい嘘を吐くことで

勇気を振るう機会は永遠に失われた


君に何一つとして告げられなかったけれど

不思議と後悔はしていない

叶わぬものを見詰めているだけで

こころはしあわせのなみだに満たされていたから


私の結晶も欠片も

空虚の内に葬られようとしている

何もかもが掌を離れていってしまうけれど

君に対する光だけは失われない



一言コメント

 今作も過去の作品を投稿します。この作品は今まで投稿した作品群と異なり、実際にあった話を題材にしたものではありません。詩に描かれている世界は完全に想像の産物で、例えて言うなら詩で物語を創り出そうとした結果がこの作品になります。厳密に言えば、この詩は「孤弱なる魂の転回」という作品群に収録した作品の一つであり、全ての作品を通して一つの物語になるように”計算”して創っています。”計算”した創作という点では、詩というよりも小説に近いかもしれません。実際、この詩を創作した頃は小説も創作しており、世界そのものを創作した詩というものを模索していた時期でもあります。その一つの到達点が「孤弱なる魂の転回」という作品になりますが、この試みはこの作品を最後に一旦止めました。と言うのも、世界そのものを創造するということが、私には上手くできなかったからです。小説もそんな理由から、筆を折りました。そのため、この作品以後は現実にあったことを元に、詩的世界に仕上げていくという表現法に変わりました。

 そんなわけで、この作品はお世辞にも上手い作品と言えるものではありません。しかし、個人的には気に入っている作品でもあるため、今回投稿することにしました。今回の作品を含め「孤弱なる魂の転回」は、嘗ての私の理想(イデアの方がしっくりくる気もします)を詰め込んだものと言えます。そのため、嘗て何を考えていたのかを探る上でも個人的には重宝しています。作品全体としては抽象的な表現も多いため、何を表現したかったのかは敢えてここに記すことはしません。是非、皆さんそれぞれの解釈でこの作品の中に世界を見つけて下さい。

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