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自作小説

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自作の小説をまとめたいと思っております。 うらっしゃおらーす!!
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記事一覧

かっこうの餌食(未完)

 一
 いつのまにか枯れてしまった指先は新聞紙を捉えられず、するすると滑った。常田は妻が淹れたアイスコーヒーのグラスに浮かびあがった結露で指を湿らせ、ページをめくり、デスクへ前のめりになって当選発表欄とくじ券の組番とを一文字ずつ見比べた。それが終わると今度は口に出して言った。
「一等、二千万円、七十四組、一、〇、二、〇、三、四番……こちらもまた七十四組、一、〇、二、〇、三、四番か。」
 常田は椅子

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最近「即興小説トレーニング」なるサイトで遊んでいます。

http://sokkyo-shosetsu.com

三本載せます。
#小説 #短編小説

アレルギー(即興小説)

テーマ 残念な猫 30分
気付かぬうちに床で眠ってしまっていたらしく、体は凝り固まり、浮腫んでいる感じがする。窓は開け放しのままでときおり寒風が吹き込むのでそのたび私の肌は粟立った。仰向けのまま首だけをどうにか動かすと、冷え切ったフローリングの上にきらきらと光るものがベランダから続いているのを見つけた。涙が滲んでいるせいだと思い私は目を手背で擦り、もう一度そちらを見やった。しかしその煌めきは以前変

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将校の絵画(即興小説)

テーマ 強い絵画 30分

豪奢な額に納められている将校の絵画と睨み合っているうちに窓から外に見えている空は鮮烈な夕焼けに変わってしまっていた。店の奥まったところにあるカウンターの向こうでは骨董店の女主人である老女が膝の上に掌を揃えてうつらうつらと居眠りをしている。
私はこの絵画の値段を聞きたかったが、だからといって財布の中身に余裕があるわけでもなく、そもそものところ気まぐれに入っただけの店であっ

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射撃場

とある射撃場の受け付けに薄汚く痩せぽちな男が一人訪れた。男はこの頃もう、死にたくなって、たまらなく、首に縄をかけ吊ってみたり、家中の錠剤をかき集め手当たり次第に飲んでみたりしたのだが、死の淵をなぞるばかりで未だ、彼自身望まないままに生きてしまっていた。
しかしそれも今日までだろうと思う。人を殺めるためだけに作られた兵器を己に向ければ、それはもう確実だろうと、考えついたからである。
受付に立つ見事に

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キリンのペニス

吹き荒ぶ寒風が男の肌を粟立たせた。
「すみません、マフラーありませんか。」
「それならキリンのペニスがございますよ。」
「ええと、それは表現というか、商品名ですか。」
「いえいえ、正真正銘、サバンナの風を切り、おそらく命を紡いだ、キリンのペニスでございます。」
「ええと、それはそういう使い方をするものなのですか。」
「それは私の決めることでなく、あなたの決めることでございます。」
「でも、そんなも

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