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炎を知らない子どもたち


火 を見たことのない子が増えているのだとか。


何年か前に聞いた話だけど、2歳前の子が焚き火の炎を掴もうとし、慌てて親が抱きかかえて止めたと。

赤やオレンジや青や黄色に白に…大きくなったり小さくなったり…いっときもじっとしていない炎は小さな瞳にとても魅力的に映ったことは容易にわかる。

触れば熱い ということが体験として備わっていない。そもそも 熱い という感覚を知らないのかもしれない と、保護者であるその人は言っていた。ガスコンロもストーブもない家。マッチなんてもはや絶滅危惧種。


調理や暖を取るという行為から、火 の居場所が減っている。

安全面を考えれば、直火じゃない方が良いのかもしれないけど。

直火は危険なものだと知るのは幾つなんだろう。



子どもがよちよち歩きの頃は、石油ストーブを使っていた。これは熱いもので怖いものだと教えるために、火を消してから数分経ったストーブの天板に子の掌を押し付けて教えた。大人が暖かいと感じる程度になってから

これは あちち だと

アイロンも同じようにした。


友人には

なんてことする親!

と驚かれたけど。


熱いからダメだよ の 熱い が何か分からなきゃ何の意味もないと思ったから。

彼らはストーブの前には近寄らなかった。

あちち が何を意味するかが分かったのかどうかは、当時の彼らに聞かないと分からないけど。


このやり方は、義理の祖母から学んだ。

裁縫をしている祖母に近づいて行った子の腕を彼女は針先でチクッと突く。

親指と人差し指で挟まれた針先で、ほんの一瞬。針先は二本の指先の中に埋もれてるけど、指先を当てるとわずかに肌に何か触れる程度。当然針の跡なんて残らないし、大人だと あれ? っていう感覚さえないぐらい。たぶん針仕事に慣れてる人じゃないと無理な微妙な加減。

危ないから近寄るなって言ったところで子どもには無理だから。面白そう、なんだろうの興味の方が勝つから。体で覚えないと。

と祖母は笑ってた。和裁を教えていた祖母はそうやって小さな子に針の怖さ伝えて来たらしい。同居人も小さい頃よくやられたと笑っていた。よく…って、一回で学ばないんかよ!



その昔は鉛筆も削れない子どもがいる とか、魚は切り身で泳いでいるとか 笑い話のように言われたりしたけど。

鉛筆が削れなくても魚の生態を知らなくても、生きては行ける。

でも、なんでも知らないよりは知っていた方が楽しいと思うんだ。


次に、知られなくなるものは何なんだろう。


我が家のチビもたぶん火は知らないだろうな。教えるのは親の仕事だから、ババには何もできましぇん。


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