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新百合ヶ丘|リリエンベルグ|新百合ヶ丘より心を込めて


こんにちは。CONOMACHI STORIES編集部です。

定期的に小田急沿線の「この街」スポットを紹介していくレポート。

今回は、新百合ヶ丘にあるウィーン菓子工房「リリエンベルグ」オーナーパティシエの横溝さんにお話しをお伺いしました。

■地域の方に愛されるお店を目指して

リリエンベルグは、できたての香りや鮮度を大切にしたケーキ・焼菓子を販売する洋菓子店。その丁寧な手仕事と、食べた人の心を魅了し続けるおいしさで知られる名店です。

オーナーパティシエの横溝さんは、ウィーン王宮御用達「デメル」において、日本人で初めて修行を許された方。日本にザッハトルテを広め、数々のパティシエを育て、洋菓子界の礎を築かれた方です。

看板商品の1つ、ザッハトルテ。
本場ウィーンは重厚な口当たりですが、リリエンベルグは軽めの口当たり

お店のオープンは1988年。店名を直訳すると「百合の丘」という意味。「新百合ヶ丘にこんなお店があってよかった」そう思ってもらえるような、地域の方から愛されるお店にしたいという想いが込められています。

1年で1番混雑するのが年末。大切な人への手土産を求めて多くの方が来店されます

平日でも行列ができ、予約をとるのも至難の業…。それでも「買いに行ってよかった」そう思うのが、リリエンベルグです。

リリエンベルグの魅力は「鮮度が生むおいしさ」。

他店との大きな違いは「極力作り置きをしない」点。
リリエンベルグでは、当日複数回に分けて作った、できたてのスポンジやクリームなどを使用。フルーツも旬を見極め、焼菓子の賞味期限も短めに設定。作りたてだからこそ味わえるおいしさに出会えます。

リリエンベルグで提供されるお菓子はいわば「横溝流」。
それは、スイス、ドイツ、ウィーンで研鑽を積み、「お菓子の魅力を自分なりにとらえることの大切さ」に気づいたからだと言います。

海外で学んだ基礎や伝統を尊重しつつ、日本の素材や風土を考え「食べておいしいと感じる」お菓子が作られています。

毎月、季節や旬を活かしたケーキが並び、お客様を楽しませています

■新百合ヶ丘は「大切な時間を預けられる街」

新百合ヶ丘について、横溝さんにお話をうかがいました。

(横溝さん)
「新百合ヶ丘は、緑豊かで家族と一緒にのびのびと子育てやお菓子作りができる街。いつかお店を持つならというイメージに合ったんです。地域の方と『自分たちの手で街をよくしていこう』と声をかけ合い、夏祭りやごみ拾いをしました。ここはそうやって地域の方と一緒に育ってきました」

かけがえのない時間を共に歩んできた軌跡と、お互いを大切な存在として想い合う豊かな関係性が見えます。

お客様の手作り作品。店内で大切に飾られています

■人々を魅了し続ける理由

リリエンベルグでは1日1,500個以上のケーキ、3,000個を超える焼菓子が作られ、そのすべてに、リリエンベルグで働く方の「まごころ」が込められています。

(横溝さん)
「うちでは、できたての香りや鮮度を大切にしています。おいしいお菓子を作るために、材料にこだわったり、腕を磨くのはどこのお店でもやっています。でも、『できたてを提供し続ける』ことは、コストや時間、手間を考えると、大変難しい。だからこそ、大きな武器になるーそう考えました」

(横溝さん)
「そして『手作りのあたたかさ』も大切に。イメージはお母さんがお子さんのために作るお菓子―まごころが込められ、できたてのおいしさを味わえますよね。そんな食べた人の心があたたまる、喜んでもらえるお菓子を作っています」

お菓子には横溝さんの想いが込められたメッセージカードが添えられています

そんなリリエンベルグですが、時にはご意見をいただくことも。

(横溝さん)
「ご連絡をいただいた時に、その方に会いに行ってお話を聞きました。私たちは『お客様に喜んでもらえるお菓子を作りたい』と思っています。その方のお口には合わなかっただけと言うことは簡単だけれども、もっと何かできるんじゃないかと思ったんです」

横溝さんの原動力はここにあるー。そして、そのまっすぐな想いがお菓子を通して伝わるからこそ、リリエンベルグのお菓子は、食べる人の心に残るのだと感じました。

リリエンベルグのお菓子は、「自分も含めた、大切な人のために買って帰りたくなるお菓子」。それは、大切な人の「おいしい」という笑顔を、喜ぶ姿を想像できるお菓子だから。そして作り手が「喜んでもらえるように」と心を込めて作っているお菓子だから。
リリエンベルグが愛される理由は、そんな「揺るぎない信頼」がお客様の中に生まれるからではないでしょうか。

■人の心に残るお店

お客様の心をつかんでいるのは、お菓子だけではありません。

屋根の芝は横溝さんたちの手で植えたそう。
季節ごとに花が咲き、昨年はなんとカルガモが孵化。お店の方々で見守ったそう

気持ちのいい接客、思わず笑顔になる遊び心、思いやりのひと手間など、お菓子を食べる前からお客様の心をつかむ「心意気」が存在します。

お客様がわくわくできるようにと、厨房の様子が窓からのぞける設計に
遊び心とあたたかみを感じる店内。壁のタイルや絵などは横溝さんと従業員の方の手作り

(横溝さん)
「『リリエンベルグで働いてよかった』そう思ってもらえたら、と考えています。楽しみながら一緒に働いていただく、それが大事です」

横溝さんがそう考えるようになったのは、ベルリンでのある経験だったと言います。

(横溝さん)
「デニッシュペストリーがうまくできなくて、気持ちが落ち込んでね。そしたらある日、親方が『お前の失敗は私の責任だ』と言って、つきっきりで見てくれたの。『こういう人になりたい』と思いましたね。できなくても視点を変えて一緒にやる。できるようになるとうれしいし、楽しいですから。楽しいことを見つけて、みんなで考えて店を育てています」

ここで働いてよかったと思える職場だからこそ、お店のことを心から想い、「お客様を喜ばせたい」という横溝さんの想いを一緒に届けることができる。そして、前向きな気持ちで働ける事で、目の前のお客様やお菓子に対して誠心誠意、心を込めて向き合うことができる。

偽りのない、その「本物の仕事」がお客様の心に響くのだーお話をうかがい、そう気づきました。

■お菓子屋の醍醐味

「お菓子屋ができること」を常に考え、笑顔の輪を広げる活動をおこなっている横溝さん。

東日本大震災時には、自ら陸前高田市などの避難所にお菓子とパンを届けたり、市と協力して川崎へ避難している親子にお菓子教室を開催したり、「ハッピーバード運動」という募金活動も実施。

これはハト型クッキーの代金を直接募金箱へ入れるもので、ウクライナの難民支援時、そして現在、能登半島地震の支援もおこなっています。

(横溝さん)
「お菓子作りを通して、社会のお役に立てることは幸せなことです。売っておしまいではなく、人に想いを伝えられること、人を幸せな気持ちにできることーそれがお菓子屋の誇りです」

リリエンベルグはただおいしいだけのお店ではありません。
おいしいの先にある、お客様を喜ばせたいという想いにあふれたお店。その想いに裏打ちされた手仕事やアイディアは、お客様の期待以上。

「おいしい」「喜んでもらえた」「いい思い出になった」リリエンベルグを通して体験した1つ1つの思い出が、お店への愛着となり、ひいてはその人の人生の中でかけがえのない存在となっていくーリリエンベルグとはそういうお店だと感じます。

横溝さんは今日も、人の人生に寄り添えるパティシエという仕事に誇りを持ち、人の心に残る「幸せのかたち」とまごころを届け続けています。

横溝さん、貴重なお話しをありがとうございました!

今後も横溝さん、そしてリリエンベルグさんの活動を応援し続けます!

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