元芸人と元AV助監督の交換日記#10

 今回でこの交換日記も10回を迎える。普段慣れない文章でのやりとりということもあるのか、体感的には30回くらい続いているように思えてならない。ただ、後輩との5往復のやりとりの中で幾つか気づいたことがある。

 一つ目は、僕にとっての悩みでもあった祈との意思疎通が文章だと割とスムーズに行えるということだ。意思疎通まで言ってしまうと大げさになってしまうが、祈はとにかく会話ができない。会話に落ち着きがないのだ(別に悪口の意図があるわけではないことは明言しておく)。言いたいことや思いついたことがあると脳内で精査もせず、その瞬間に口に出ているタイプ、1/1のパチンコ台である。しかし、文章になると考える時間があるからか、僕の意思も汲んでくれるし話もまとまっている。今後は原稿に沿って会話をしてほしいと思うほどだ。とはいっても、あまり落ちついて会話されてしまうと無言の時間が流れてしまうので上手い具合に釘を調整して頂きたい。

 二つ目は祈が僕をあまりにも神格化しているということだ。まるで『空手バカ一代』の大山倍達が如く、フィクションとノンフィクションの垣根がなくなっている。第9回を読み、これはかなり由々しき事態だと悟った。まず、僕は相方と解散したとき悲しい感情なんてなかった。動画内で元相方が解散した日に涙したと言っていると祈は書いていたが、それを読み、ちょっと気持ち悪いと思ったくらいだ。僕は解散したその足で当時の彼女と遊びに行き、新しい門出に祝福の酒を飲んでいた。夢なんて幾つあってもいい。たまたま一つの夢がなくなってしまっただけ、また見つければよいではないか精神だ。祈が神格化している人間はこういう人間なんだぞ。そもそも、付き合いがもう長いのだから僕が喜怒楽の3つの感情で動いていることを理解してほしい。だから、少年漫画の主人公さながら、悲しみを隠し気丈にふるまっていたことなどない。もしも、本当に悲しいことがあれば、直接そのことを伝えるし、必要であれば目の前で涙することもあるだろう。俺とお前は気の置けない仲じゃないか。
 だから、祈よ。僕を神格化しないでほしい。どうしようもない人間だという姿も何度か見せたのだから、卑下してもらって構わない。ただ。尊敬はしろ。

 そんなこんなでまた日記は書けなかった。まあ、ここ最近起きた出来事と言ったら、唐揚げを冷まさずに食べて上あごの皮がむけてしまったくらいなので、そのことを書くよりは有意義な文章になったと思う。寧ろなっていないと困る。
 そんな僕の今の夢は、お金持ちになり綺麗な女性と結婚することだ。この夢が破れてしまったらまた新しい夢を探そうと思う。格好良いお墓に一人で入るなんて言うのも悪くないだろう。

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