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3月14日 おじいさんの見栄と糞

お昼過ぎ。狭い店内が医者や看護師でごったがえしていた。
こっそりレジを抜けトイレに向かった。尿意はそんなに無かったのだが、絶え間ないレジ打ちに疲れてきたので少し気分転換のつもりだった。
病院内にある売店なので、一度店を出て、病院のトイレを使う。このトイレまでの一分間の道のりが、絶大なリラックス効果をもといリラクゼーション効果を僕にもたらすのだ。

しなくても小便を済ませ、急げ急げとトイレから出ると、おじいさんと看護師さんがいた。
おじいさんはどうやら足が悪いみたいで、両手に登山の時持つ棒みたいなものを持ち、スキーをする感じで平面の廊下を歩いていた。
看護師さんの「大丈夫?いける?」という声が聞こえた。
病棟のトイレではなく、お見舞いに来た人も使うトイレだったため、看護師さんも男性のトイレに入りずらいようだった。
手伝おうかどうか悩んだのだが、店も忙しいし、何しろ素人の僕が手伝って怪我でもされたら困る。
などなど考えていると、「ちょっと手伝ってもらえますか?」と看護師さんに声をかけられてしまった。
「はい!!」と威勢よく返事をした。
どうやら話を聞くと、その看護師さんもたまたまトイレに行こうとするおじさんを見つけ、「大丈夫ですか?」と声をかけたばっかりだったらしい。
「中まで一緒に付き添ってあげてほしいの。」と言われたので、
「了解でーす!」とおじいさんを誘導しながらトイレに入っていた。
トイレの外から「ごめんね〜」と看護師さんの声が聞こえた。
僕が先に奥に進み、床が濡れていないかを確認しながら、おじいさんを導いていった。
おじいさんは「悪いねえ!アッハハ。」と言った感じの気さくで上品な方だった。
「小便ですか?」
「そうそう。」
ホッとした。大便だった場合、僕には彼を待っている時間が残されていないからだ。

僕は最近まで、店から突如姿を消す。という行為にハマっていた。何も言わず誰にも見られずこっそり店を出て、病院内をウロウロするのだ。
すると店内では「落合君どこいった!?」「なんか聞いてる?」「どこ?」となり、誰かが僕を探しに行こうとする一歩手前くらいの所で、
「お待たせ。」みたいな顔をして、店に登場するのだ。
したら皆が、「どこ行ってたの〜〜〜〜!!もう!!」みたいな感じで盛り上がり、それが何だか気持がいいって事で、味を占めて週に二度は店から突如姿を消すようにしている。
が先日、僕が姿を消している最中に鬼課長が来ていて、「落合どこだ!!」「何で行き先を告げないんだ!」「勤務中だぞ!」と極当たり前の事を言うので、皆面喰らっちゃって、無断外出、突如姿眩ましが禁止になってしまった。

そのような状況の中、誰にも言わずトイレに来てしまったもんだから、僕がいない事を気がつかれない内に、急いで店に戻らなくてはならないのだ。
「小便ですか?」

「そうそう。」
と言いながらおっさんが、個室に入っていき、扉の鍵を閉めた事には驚きを隠せなかった。
「小便ですよねええ???」
「そうそう。」
そうかそうか。座りながらトイレをしているのか。その方が楽だしな。と思っても待てどくらせど出てこない。音がしないのも何だか心配なので、
「大丈夫ですかあ??」と聞くと、
「は〜〜い。」と間抜けた声が返ってくる。
トイレに入ってから5分は経過した。流石にマジで怒られると思い、トイレの前で待っている看護師さんにバトンタッチしようと思って、トイレから出るともうそこに姿はない。いやがらないのだ。
俺かよ!なんて思いながら、おっさんをほっとく訳にもいかないので、申し訳ないのだが、少し急かしてしまおうと思った。

「大丈夫ですか??」

「は〜〜い。」

「あの小便ですよね??」

「もう大丈夫だから〜〜。」

「あ、はい分かりました。」

成る程。わかった。わかった。さっきから小便の音がしない。
小便かどうか聞くと、「もう大丈夫だから。」と茶を濁してくる。
わかった。この人、うんちしているんだ。
しかも俺にバレないようにゆっくりうんちしているんだ。
俺がいるから、ブリブリ出来ないんだ。
だったら、逆に早くこのトイレから引きずり出すには、僕がいない方がいい。厳密にはいないテイを取った方がいいと、策士コト落合aka僕は判断した。
だが「じゃあ僕もう行きます!!」と行って、おっさんを不安にさせてもなんだしと思い、僕は覚悟を決めて五分間黙る事にした。
おっさんの中で僕がいない時間を五分作ってあげる事にしたのだ。
最後に「大丈夫ですか?」と聞き「は〜〜い。」と返事が来たので、僕はそれからトイレの前で気配を消す事にした。

これでおっさんは、僕がいるかいないか分からない状態になったのだ。

僕の狙いは、おっさんが自身の中で合理化し「少年はもう行ったのだな。これで思うことなく」となり一心不乱に気張ってもらう事だったのだが、中々音がしない。
それどころかおっさんは「いやああ。これがなあ。」とか「いやあ、寒いねえ〜〜」なんてまるで「うんこじゃないです!!」みたいな牽制を僕に仕掛けているのだ。
僕がいるのか、いないのか分からなくしてしまった事により、おっさんの肛門も中途半端な開き方になってしまったのだ。

15分は経過した。流石にヤバイ。店長にキレられる。
この流れを説明するのも怠い。

僕はストレートに攻めてみる事にした。とゆうか始めからそうすれば良かったんだ。

「お腹痛いんですか?」

「いや小便小便。」

「にしては結構時間かかってますけど・・・」

「今ねえ。ベルトを締めてるのよ。結構硬くてね。」

「もうズボンは履かれてるのですか?」

「おおう。」

「用は済みました?」

「おう。」

「じゃあ。扉開けてくれたら手伝いますよ!」

「。。。。。。」

「大丈夫ですか?」

(ジャーーー!!!!!!!)

用済んでなかったんじゃねえか!
なんて思いながら、もう店を抜けてから20分は経過してしまっていた。

やっとおっさんが出てきた。
僕は少しだけ、ほんの少しだけ腹が立ったので、ちょっぴり意地悪な質問をしてやった。

「何してたんですか?」

「かなり着込んできててね。ほら、寒いから。かなり着込んできてるのよ。着るのに時間かかっちゃって。」

店長に怒られる覚悟が出来た僕は、バス乗り場までおっちゃんを誘導し、手を振ってバイバイした。


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落合諒です。お笑いと文章を書きます。何卒よろしくお願いします。