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あなたひとり

立ち止まって、しゃがんで、もと通り。
たとえうまくいかない事があっても、靴紐を結び直すようにすればいい。
そういう風に歩いていたつもりだった。
はじめは気にも留めないほどの小さな綻びだったのだと思う。

大切にしてくれたひとを、うまく大切にできなかったこと。
優しさを素直に、上手に受け止めることができなかったこと。
気持ちをまっすぐ伝えられるあなたを、心のどこかで羨ましく思っていたこと。
地に足を付けて歩いていたはずが、いつのまにか綱渡りだったこと。
結局、その綱さえも渡れなくなってしまったこと。

時間が経つほどに、時を戻したい気持ちは増すばかりだけれど。
いま元に戻せたとしても、きっとまた同じように悲しい思いをさせてしまう。そんなこと、あっていいはずがない。だからこそ書き留める。

私はあなたひとり、幸せにできないでいた。

そんな人間が、一体誰を幸せにできるというのか。とてつもなく悲しくて、悔しくて、思い返すたびに涙が出てしまう。
どんなに泣いても、感傷に浸っても、この気持ちは癒える気がしない。
終電間際、傘をさして足早に去ってゆく後ろ姿を忘れる日は来ない。

大切なひとよ。
あなたはあなたの世界で、心穏やかに笑っていてほしい。

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