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『社内の「知的確信犯」を探し出せ』⑦危険な誤解

会社に潜り込んで、上司を貶めたり、同僚の手柄を横取りするばかりのサイコパス社員。そんな悪質なサイコパスがなぜ、うまく会社に入り込めるのか、そして出世できるのか。

上級職に求められる特性

『社内の「知的確信犯」を探し出せ』(ロバート・D・ヘア/ポール・バビアク著)によれば、それは、サイコパスの見せかけの印象が、上級職に求められる特性に見えてしまうからだという。

常識では、雇用主は求職者の悪質さや威圧的な性質をたやすく見抜けるはずだから、そのような求職者を重要な役職、とりわけほかの従業員との協調性が求められる役職に採用することはありえない。同僚を欺いたり攻撃したりすれば、懲戒免職になるのが落ちだからだ。ところが、われわれが扱った事例を見る限り、必ずしもそうとは言えない。…

上級職に求める特性を管理職に聞いてみると、聡明、まじめ、誠実、社交性という回答が返ってくることが多い。ところが、まさにそれは、これまでの調査で、サイコパス社員に好感を持ち支持する人々が指摘した特性でもある。

『社内の「知的確信犯」を探し出せ』

サイコパスの「まじめ」「誠実」は他人を操り支配するために、演じているにすぎない。従ってサイコパス社員が影響力ある立場になると、間違いなく混乱が起こる。

サイコパスに関する勘違いとその危険性

ところが、それなりの知識人が時々、サイコパスにもいいところがある、と言うことがある。

よくあるのが、サイコパスの冷静さやリスクを恐れない性格は、危機においてはリーダーシップを発揮できる、といったものだ。

果たしてそうなのだろうか?
実際のところ、サイコパスは冷静ではなく、冷酷である。そしてリスクを恐れずというのは、失敗した時の責任をとってこそ、意義がある。責任をとらないなら、それは横暴でしかない。

サイコパスが危機にはリーダーシップを発揮する、というのはサイコパスの表面的特性だけを見て、空想している無責任な見識でしかない。

実際、サイコパス社員のリーダーシップにより危機を乗り越えた、というのは皆無に近い。実は他の有能な社員の手柄によるものが殆どだったりする。その手柄をしばしば、サイコパス社員が横取りしているに過ぎない。

そんなサイコパスの問題を、今も目の当たりにしている者として、『社内の「知的確信犯」を探し出せ』の著者の以下の言葉には、心の底から納得する。

「サイコパスにもいいところはある」と主張する人たちは、本物のサイコパスをほとんど知らないのではないかとしか言いようがない。

サイコパスと仕事をすれば、彼らの破壊的な行動によって散々な目に遭うことになる。たった一人のサイコパス社員を野放しにするだけで、ほかの従業員の意欲や生産性やチームワークは著しく損なわれる。

『社内の「知的確信犯」を探し出せ』

愛情関係を結べないサイコパス

共感力のないサイコパスは、おそらく、きわめて基本的な感情さえ持ち合わせていない。

『社内の「知的確信犯」を探し出せ』

そんなサイコパスは、愛情で心を満たすことができない。その代わり、人を操り支配することで、心を満たそうとする。この支配ゲームこそが、サイコパスの人生そのものなのである。

サイコパスに同情を寄せても、結局はサイコパスの餌食になるだけだ。ましてサイコパスを有能と勘違いすれば、混乱が起きるばかりだ。

悲惨な被害者を生まないようにするために必要なのは、サイコパスに関する正しい知識だ。

聞くところでは、欧米では、企業によるサイコパス対策がされていることがあるそうだ。日本では知る限り、それはない。

サイコパスに貶められ、そこから立ち直り、そして、その後もサイコパスの悪行を見ている者として、サイコパスに関する正しい知識の普及の大切さを痛感している。

今後もそんな情報を発信していきたい。

読んでくださった皆様、ありがとうございました。

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