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【虎に翼 感想】 6/14 家庭裁判所、発足


直明に託す寅子

“一番大事なことは何か”
仕事をしていると、いや、仕事だけではなくても、日々過ごしていると、見失いがちになる。
寅子は、花岡奈津子に対する偽善的な謝罪からの、桂場の「正論」「純度」の言葉が頭に残っていたのだろうか。
昨日の記事で、“これからも直明の言葉に耳を傾けていきたい” と書いたばかりだったが、早速のご登場だ。

“直明のキラキラ大作戦”
利害関係のない、純粋な若者たちを連れてきたのは大正解だった。

直明の言葉一つ一つにほだされるのは、両脇の女子大学生だけではない。おっさんにもその権利はある。
稲垣が最初に嗚咽したのも、ナイスアシストだった。
管轄や名前で衝突している場合ではない……家事審判所、少年審判所の面々が弱ったところで多岐川がすかさず話をまとめ上げ、家庭裁判所設立の見通しが立った。よかったよかった。

“俺たち、私たちの苦労っていったい……” との寅子たちの心の声が聞こえた昭和23年12月初頭のことである。


設立準備、急ピッチ

地方の裁判所はともかく、東京家庭裁判所の各場所の確保をしていなかったんかい!と、一瞬ツッコみたくなったが、バタバタだったからやむを得ない。
結局、大みそかまでバタバタだ。法曹会館の宴会場を、職員が使用する場として、無事、確保できた。引っ越し作業には、猪爪家の面々、直明の属する東京少年少女保護連盟のメンバーも総動員だ。でもこういうのって、案外楽しい。優未ちゃんは、家でもお手伝いしているのかな。かわいい。

花江の直明に対する勘繰りは、現代ではセクハラになりそうだが、将来の姿が見えてきた。年をとったら仲人業をやればよい。花江はある種、あの時代に生まれてきてよかった人間だと思う。

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最後の仕上げ……泣けた。泣けました……。
あの大きさだから、多岐川が持ってきた時点で絵だと分かったから、そこで早々にグッときてしまった。
いい絵だ。子どもに包み紙だけ渡したのかとか言うんじゃない。事実のとおり描かなければいけないわけではないはずだ。パパがもらってきたチョコレートを家族で分け合っていることが伝わる絵だ。久しぶりに花岡家の家族が笑顔になれた喜びが、1枚の絵に凝縮して表現されている。いい絵だ。

「法律ちゅうもんは、縛られて死ぬためにあるんじゃない。人が幸せになるためにあるんだ。幸せになることを諦めたら矛盾が生じる。彼がどんなに立派だろうが、法を司る我々は、彼の死を非難して、怒り続けなければならん」

戦争中、“お国のため” “天皇陛下のため” に死ぬことを求められていた時から3年しか経っていない。ややもすれば、花岡の死も立派なものとされてしまう。しかしそれでは、食糧管理法という法律に不備があったことが掻き消されてしまう。法曹資格を持つ彼らは、怒り、不備を指摘する立場でなくてはならない。その戒めで飾り続ける。
昨日から、第52話で多岐川が花岡を批判していたときの「人間、生き残ってこそ」の言葉が少しずつ染みてきていたが、今日こそ染みわたった。

個人的には、法律に対して、“幸せになるため” と、そこまで求めているわけではない。ただ、穏やかに生活していけるためには存在してほしいと思っている。

この場に学生たちがいてよかった。冒頭、学生たちに心動かされて家庭裁判所設立に至ったが、学生たちもまた、多岐川の言葉に心動かされるものがあったはず。忘れずに社会に旅立っていってほしいものだ。
桂場と久藤も手伝いに来ればよかったのに。

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日付が変わった。子どもたちは眠り、大人だけの深い時間となる。多岐川も寝ているが。彼は決してお酒は強くないようだ。直明が当たり前のように大人に混じっている。まだまだイメージをアップデートできていないことを反省している。

汐見によると、多岐川は、死刑判決を下した死刑囚の処刑の場に立ち会ったことがきっかけで、その職責から逃げてしまった経験があった。そして、敗戦も追い打ちとなる失意の中、日本に引き揚げ、上野に降り立ったとき、身寄りのない子どもたちに何もしてやれなかった経験から、多岐川はもう逃げ出さないと誓った。
寅子は、「分かる気がする」と一言添える。
寅子は少し前に久藤から、多岐川とウマが合うと言われていた。そのときは「今のところはまったく」と受け入れていなかったが、今は、一度逃げ出した経験のある者同士、多岐川と通ずるものがあることを、素直に受け入れていた。


昭和24年1月1日

家庭裁判所の設立は、準備室の解散を意味する。皆とは職場がバラバラになるのだろうか。とてもさみしいことだ。寒さに震える中、“東京家庭裁判所” の看板(張り紙)を皆で見ることができた朝は、一生忘れないのだろう。


次週予告

いよいよ、よねとの再会の番がきた。だが、相変わらずよねはこじらせているように見えた。
どうなる、寅子。


「虎に翼」 6/14 より

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