【虎に翼 感想】第40話 優三の遺言
出征
優三さん、無理だよ……現代だったら何がしかの病名がつくかもしれない、そのお腹を携えて戦地にいくなんて無理だよ……
出征の前にしたいことを尋ねられ、「寅ちゃんと出かけたい」と希望する。優未を預け、河原へ出かける二人。
寅子は何を謝っているのだろう。寅子と同じ世代に生まれて、出会って、結婚して、家族を作ることができた。共に法曹の道を目指した同志でもある。優三さんは、十分満たされていると思っているんじゃないのか。
「寅ちゃんができるのは、寅ちゃんが好きに生きること。(略)僕の大好きな、何かに無我夢中になっているときの顔をして、何かを頑張ってくれること。いや、やっぱり頑張らなくていい。寅ちゃんが後悔せず、心から人生をやり切ってくれること。それが僕の望みです」
そんなことを言われては、寅子は、優三さんがもう戻ってこないのではと、不安になってしまう。それでも言わずにいられなかった彼の気持ちを汲んであげたい。
優三さんはずっと優しい。おにぎりを、お乳をあげられるように、2つとも食べろと寅子に言う。分け合って食べる二人。美味しいものを一緒に食べる時間があって本当によかった。
出征前に優未ちゃんを離さない姿が切なかった。
これまで、書生として猪爪家の皆に気を使って生活し、寅子と結婚しても、事実上、お婿さんみたいなものだった。そんな優三さんが、今までで一番強く意思表示をした場面だった。
“名は体を表す”
優未ちゃんもきっと優三さんのように、性別・身分などにとらわれない、優しい人間になるよ。
寅子は、不器用な手で千人針を縫った。原則、一人一針のところ、「虎は千里を走り、千里を帰る」という言い伝えのもと、寅年生まれの女性だけは年齢の数の縫い目を作ることができた。このとき寅子、31才。数えたら確かに31個あった。
優三さんの「心強いなぁ~」の言葉には実感がこもっていた。お腹に当てておくんだぞ……頼むから……
婦人弁護士、潰える
冒頭、寅子を訪ねてきたのは、明律大学の後輩、小泉だった。そこで、女子生徒募集の停止と、高等試験自体が中止になることを聞かされる。
この時代、いろいろなことがストップしていたから、高等試験の中止は、その中の一つに過ぎないだろう。だから、“婦人弁護士を誕生させる” というチャレンジングなことは、できるはずもなかった。
「試験が再開したら、必ず受験する」という彼女に、寅子は「頑張れ」とは言えなかった。
・・・・・・・・・・・・
昨日の、誰もいない教室で寅子からの手紙を読む穂高教授の姿を思い出してしまう。
教授の言っていた、 “雨垂れ石を穿つ”。
寅子と同級生の仲間、そして久保田先輩たちは、最初の1滴だ。まだ窪みもない平らな固い表面に落ちていく。落ちて、散らばっていく。
窪みができてからの1滴であれば、その窪みに水滴がどんどん溜まり、ひとたまりの “水” となる。
寅子は以前、法を、“綺麗な水の湧き出ている場所” と表していた。窪みの中の水は、法に通ずるものともいえるのではないか。
寅子たちは、困難な役割を担わされた。教授は、その認識があったのだろうか。
それこそ、100年先までの理想を見過ぎてしまい、目の前の寅子たちの姿がぼんやりとしていたのではなかろうか。灯台もと暗しである。
だけど、今こそ、出征した今こそ、優三さんの言葉を思い出したい。
「全てが正しい人間はいないから」「みんないい面と悪い面があって、守りたいものがそれぞれ違う」
だから、教授を責める気にはなれなかったのだ。
「虎に翼」5/24より
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