【虎に翼 感想】第39話 よねとの決別
なんだか10年以上前のことを思い出してしまった。昼休みに外食に行ったとき、隣のテーブルに座っていたOL4人組のことを。その中の1人(仮にA子という)が他の3人をランチに誘ったらしい。
A子:「実は、結婚することになって……」
3人:「えー!えーっ!おめでとう!相手は?」
A子:「〇〇課のB男さんで、仕事の用で内線で話すようになって……よくかかってくるなとは思ってたんですけど、それでよく話すようになって……」
3人:「おめでとう~!!」
A子:「Cさん(上司)には、手続きの関係でもう話してあるんですけど、皆さんにも伝えようと思って……」
私の心の声:(誰にどの順番で報告するか、すっごく考えたんだろうな……旦那も同じ会社だしな……)
よねとの決別
寅子の妊娠は、最悪の順序で関係者に伝えられてしまった。穂高教授、寅子が自分から言わなさそうだったから、あえてか。
黙って事務所を出ていってしまう、よね。
そうだよね。だって、たぶん時間的に30分くらい前に、「私もやれることはする。お前は一人じゃない」って言ったばっかりなんだから。
寅子とはパートナーだと思ってたのに……寅子はそう思っていなかった……思ってたのは自分だけ……
地位のある男性3人に、「ご婦人弁護士が来ると分かったときから、こうなることは予想していた。仕事は引き継ぐ。休め休め」と、こぞって優しい言葉をかけてもらっているのを目の当たりにする。
ちゃんとした事務所だと思うが、婦人弁護士に腫れ物に触るように接する男性陣に、よねは不満顔だ。さらに、その言葉に “先頭に立たなくてよいのだ” とホッとし、素直に受け入れる寅子に我慢ならなかったと見える。
早退したよねを訪ねるため、久しぶりに上野へ出向く寅子。上野の様子もすっかり変わっている。よねが働くカフェも、軍歌を流して細々と営業していた。
よねの “よろず法律相談” は、今でいう非弁行為とは違うのかな。お金はもらっていないのか?時代が違うからよく分からない。マスターが、これで細々と生きているって言ってたけど。さりげなくこのシーンを入れた意味が、後々出てくるのだろうか。
「勝手に使命感に燃えて…くだらないと思っていた。(略)いちいち悲劇のヒロインぶりやがって。自分一人が背負ってやってるって顔して恩着せがましいくせに、ちょっと男たちに優しくされたらホッとした顔しやがって」
なんだか近親憎悪みたくなっているよねも、ちょっとめんどくさいが、すでに寅子は “あっち側” の人間である(土居志央梨さんが少しセリフ噛んでるところが、臨場感があってとってもよかった)。
「女の弁護士は必ず生まれる。だから、こっちの道には戻ってくるな」
虚実ない交ぜの言葉だ。よねだって、去っていった仲間たちの思いを背負いながら、何年も受験していた。だけど、クローズアップされるのは弁護士である寅子だけ。バリアを張ることで、自分と、もしかしたら寅子も守ろうとしたのかもしれない。
寅子とよねは最高のパートナーになる!と、勝手に期待していた。よねが試験に受からなくても、パラリーガルとして寅子を支えてほしい、そのほうがむしろ合っていると思っていた。雲野法律事務所の5人の構成がとても良いとも書いた。本当に残念だ。せめてよねは、パラリーガルの仕事はやめないで欲しい。そしてもちろん、いずれ寅子と再会できると信じている。
身ぐるみはがされた寅子
よねからすれば男性3人から優しくされているように見えたことも、寅子からすれば違っていた。
昨日までは、寅子が背負っている荷物を一つ一つ優しく降ろそうとしてくれていた男性(穂高教授)がいた。しかし今日は、3人がかりで後ろからワーッときて、強引に引っぺがしていったようなものだった。
寅子は心が折れてしまった。背中は傷だらけだ。「休めばよい」と言ってくれる雲野法律事務所は、職場としてはとても良いと思う。しかし、“0か100か” でしか考えられなくなっていた。
その日に事務所に辞表を提出し、帰宅してはるさんに報告する。すぐに2階に上がり、思いを断ち切るかのように、六法全書をはじめとした書籍を行李箱へ押し込んだ。
自分語りで申し訳ないが、思い出してしまった。
乳がんと診断されて、治療に専念するために勤めていた法律事務所を辞めた後、とてつもない喪失感に襲われた時期を。
そのときに、事務職員用のテキストとか、東京弁護士会の研修資料などを全部捨てたことを。
もう仕事をすることはないだろうと思っていたのもあるが、できるとしても、同じ仕事しか探せない自分では、人生が進まないと思ったから。
寅子のそれとはまったく違うのだけれど、時が経てば、穏やかな日々にも慣れてしまう。だけど、また人生を進めようとするときが、必ず来る。生きてさえいれば。
いろいろ思い出してしまった今日の第39話だった。
昭和18年10月22日
前日に明治神宮外苑競技場で行われた「出陣学徒壮行会」のニュースがラジオから流れる中、寅子は花江と縫い物をしている。
花江は、「女学校時代のようだ」と嬉しそうだ。
寅子が明律大学の学生たちとの関係を深めたことで、少し距離が離れた二人だったが、その学生たちとの別れを経て、また距離を縮めている。寅子に委ねられている人間関係のようで勝手にも見えるが、そんなものなのでしょう。
昭和19年春
博多華丸さんの、「よその子はすぐ産まれるね~」の朝ドラ受けを期待してしまった。
“佐田優未(ゆみ)”
優三さんから一文字とりました。ひつじ年の優未ちゃん。いいところで泣いて、明日へ続く。
「虎に翼」5/23より
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