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地下鉄と神の手

地下鉄、階下に横たわる海柘榴
声にならぬ声が刻まれた紙面39面
キスを刻む段数に、2468はそっと唇を噛みしめる
剥がされた革靴 暴かれたハイヒールの行方
紅に濡れた花片は艶めかしく
階上の紙煙草を静脈血で浸せば
忌避すべき喧騒も、モノクロームの靴音も
そっと柔らかに消え去ってしまうから……
カラーテレビ、白黒を染めるのは
被害者じみた殉教者の血だって
そう嘯く記憶の少女たちはいつも
渇ききった砂場にロザリオを埋めていた。
血漿ばら撒く讃美歌
(曇天に潰れた心臓)は安らかな吐息を吐きだし
トーチカの水死体を火葬する為に奮闘している
砂塵舞う戦争は4月を鮮やかに染めて
黒い雨すら、曖昧なドレスコードを纏って――
神の手は滲むピンク
じりじりと夜をゆく
春の境界線、肌の死を忌避したいから私は?
試験管に閉ざされし造花は
その愛撫を瞬く間に散らして
8限目、理科室の夢うつつ
藍色の心肺を纏ったセーラー服
静脈ひた奔る硝子の靴
――世界は再び濃霧に覆われて
名ばかりの3人は匿名の遺体となった
街を包む水色の抽象に
少女たちは唯、その濁った瞳を浄化してゆく
清廉さに浸された景色の片隅__
そう、拍動する僕の両目の充血は
未だに逢魔ヶ時をさしたままだというのに……

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