北村灰色

詩や小説、短歌、詩画、朗読、詩画。 器楽・即興演奏、宅録等で表現している。 「文芸思潮…

北村灰色

詩や小説、短歌、詩画、朗読、詩画。 器楽・即興演奏、宅録等で表現している。 「文芸思潮」現代詩賞 第十一回、第十三回・入選、第十四回・奨励賞、第18回・優秀賞 ブックショート2015 12月期 、2016 3月 優秀作品等 https://youtu.be/B3MVQl9KdXI

最近の記事

泡沫の花いちもんめ

炭酸水の雨が境界線上の蟻を拐かす 跳ね回る罠の甘美 溺れ痴れる漆黒 歩道の無垢なる長靴に穴が空いて 六歳の隊列の行進が乱れゆく 赤い靴、異人の右手 左手の痕跡に突き刺さる安全ピン 遺影と花瓶の罅 入学式に砕け散った鼈甲飴 赤蟻の手錠を傍観する教員免許 赤を重ねた赫が齎すのはきっと―― 罪を悔やめば花いちもんめ 君を殺めば花いちもんめ 包み紙に仕組まれた悪意と職員室 理科室のクロロホルムが記憶を融解して 匿名の新聞記事を延々と校正する。 「音素文字の壱参」 彼のかくれんぼは鬼の

    • +3

      北村灰色による詩画 三選

      • 詩誌掲載のお知らせ

        『文芸思潮 91号』に今年度の第十九回現代詩賞において奨励賞を頂いた拙作、「新宿駅、午前二時」が掲載されました。 過去に表現や人生における挫折や壊れてしまった事とか、色々改めて書き伝えたい事柄はあるけれど、それはまた別の機会にということで、今回の詩誌掲載が近い内に名を上げる狼煙になる気がするので、多くの人に本誌や俺の作品を読んで頂ければ幸いです。 また、少し先になりますが、5月1日に蝶尾出版社様より発刊される『開かれた窓』に、私の原稿用紙詩画とスケッチブック詩画を掲載して頂

        • 茫漠の桜花爛爛

          桜花爛爛染まる血汐に華やいで 触れる指先青く悦ぶ ――蒼き夕暮れの舞踏会は 曖昧な死を描く抽象画から零れ落ちた 「最期の一滴のクランベリー」だと笑うのは 此処に遺された空白の棺桶と 【名も無き墓標】だけだったから 柔らかなシーツに溺れる君とロゼワイン 余りにも穏やかな呼吸停止を ただ暗い目をして傍観することしかできなかった (沈黙に浸るサイレン) 最期を告げる慟哭は狂う憐憫、記憶__ 忘れた茜色を君が振り翳すナイフが描きだして。 左手__それでも夢うつつは淡くゆらめくだけ

        泡沫の花いちもんめ

          崩れ落ちるラストダンス

          変容を繰り返す黄昏に、 暗澹たる針時計は狂うまま―― ――然し穏やかに世界は轢断された 「全容の無い逢魔が時を彷徨う君は、赤いランドセルの巡礼者みたいだね」 そう嘯き肩を叩くのは、夜を纏う異邦人だから…… あの日の色毒に季節は昏倒し、 或る日の色彩に排斥は哀悼すら、 瞬く間に「3」の火種へと変換する レンズ罅割れ、空は渇ききって やがて私の薬指が幽かに痛んで 爪先は救済無き砂漠の色を零す__ 「青ざめたスクリーンから這いでる6の愛欲に色彩を求める骸骨はその左手を欠落したまま

          崩れ落ちるラストダンス

          モノトーンに溺れる絵筆

          業火の縹靑/燐藍 火傷に彩られた青蔦 火刑に陥った水面は、未だに翡翠色を保ったまま 白日の焼け跡だけが、眩いほどに鮮やかで―― ――訪れた宵闇に彼岸花咲き誇り 祈りの様な10/0.7の狂炎が 酩酊に浸された如月を柔らかに抱擁した__ 0.7 0.2 0.0 0.1 0. 霞みゆく左眼の記憶に収斂されし、鮮烈な水彩画 木枯らしに滅び去った世界に 幽かな奇数の照光が射し込む 枯葉、或いは朽ち果てた亡骸に 手向ける造花の花束を求め 彷徨う巡礼者にとって、その光はあまりにも鋭く __

          モノトーンに溺れる絵筆

          絶望の灯火揺れて夜を往く浅き夢見し縊死せよ乙女

          籠女は茜雨に草履を失くし 手を伸ばせば届く琥珀の光に触れず 「君の首切り裂く季節ピアノ線 蒼に隠れて揺らめくまま」 ――そう、死者の花束はいつも山茶花だった 雨音揺らめく追憶、彼岸花の嫉妬 黒い葬列が赤く変容する時 炭化した朝焼けに手錠煌めく 静かな警報、映写機の奸悪 君が裸足の理由はないから 君に硝子が刺さる理由は―― 「薄荷飴うつろう刹那夏忘れ サンダル捨てた歩道の死者」 無言の喧騒、ザザ降り雨、群青、 右の耳鳴りが止まない 風雨に切り刻まれながら 車道でシャボン

          絶望の灯火揺れて夜を往く浅き夢見し縊死せよ乙女

          黄昏の蒼に轢かるる夕陽の眼零れたミルクすくわれぬまま

          左目に映る硝子世界に二重瞼は脆くも崩れ 右の君のステンドグラスとノスタルジアは 空白に17:09の水彩画を染みこませて 「誰か」を望む奇数番地の住宅街 転がる三輪車、錆びついたシャベル 子供の悲鳴はいつも悪意に浸されているきがして 私の唇から夕闇色の血が滲む 嗚咽すらなく、永遠に開かない鍵に爪痕を遺すのは あの日を繰り返す少女の記憶だったから―― 暗い影が這い回る共同墓地 心臓を象る甘味料とプラスチック バレンタインの祈りを捧げるのは 限りなく茜色に近い蒼だった 夕刻(だけ)

          黄昏の蒼に轢かるる夕陽の眼零れたミルクすくわれぬまま

          夜伽の風鈴砕けて

          歩道橋の水平線上 焼けつく夕日に手を振るのは いつも日々の泡だった 彼方を彷徨う「墜落を夢見た亡霊」 硝子のような夕刻と夜伽の障子 さし込まれる刃先に映る人々は 今日も無観客試合を演じて 最期に遺るのは始発電車の放つ 無呼吸の悲鳴だけだ、と…… 落花生散らばる鳥居の境界線上 一輪の椿と零れ落ちる右眼 未だに鳴り止まぬ偏頭痛を模した笛太鼓 向日葵を焦がした裸の太陽に 不敬罪の敬意を示さなければ 君は藍色の陰画のまま―― ――君は轢断欠席のままだよ? 傍らに立つ断頭台の女 或いは

          夜伽の風鈴砕けて

          Air Sketch Construction Set

          出血と共に平穏な新緑は不穏を帯びる 転倒したままの兎と亀 埋葬される広辞苑 轢断されしミルフィーユから滴るのは―― クラクションが告げる刑期 過ぎ去るポートレイトとフラッシュライト 二文字患いを×××してしまう花片と匕首 終焉に向かう春風に、誰がシアンを混入したの? 暁に変異してゆく桜花水色 彼方の蝋燭に火が放たれて 世界は牢獄と化した (懲役を傍観し懲役の懲役を苦役が) ヴァースコーラスヴァースの方程式にうんざりして (懲役と懲役は兵役の懲役が懲役を) それでも繰り返す、あ

          Air Sketch Construction Set

          地下鉄と神の手

          地下鉄、階下に横たわる海柘榴 声にならぬ声が刻まれた紙面39面 キスを刻む段数に、2468はそっと唇を噛みしめる 剥がされた革靴 暴かれたハイヒールの行方 紅に濡れた花片は艶めかしく 階上の紙煙草を静脈血で浸せば 忌避すべき喧騒も、モノクロームの靴音も そっと柔らかに消え去ってしまうから…… カラーテレビ、白黒を染めるのは 被害者じみた殉教者の血だって そう嘯く記憶の少女たちはいつも 渇ききった砂場にロザリオを埋めていた。 血漿ばら撒く讃美歌 (曇天に潰れた心臓)は安らかな吐

          地下鉄と神の手

          8mmフィルムのRe.

          有刺鉄線が藍色を纏う時 硝子の靴は粉々に砕け散った 太陽の亡霊 砂漠の亡骸 薔薇の亡命 少女が終末時計の針を忘却していたのは 「狂っていたから」だと綴られる 39面の死亡記事が切り裂かれた時 ローヒールの爪先は行方不明を装い__ 8mmフィルムから零れたアイスピック 穴の空いた夕刻に誰の影も消えて 唯琥珀の空白と着色料が漂流している 何処に?――何処へ? 疑問符が四分音符に添付され 錆びた6弦は静かに失踪していった 0月、モノトーンの変調に私は呼吸を喪う―― 704号室、赤濡

          8mmフィルムのRe.

          氷結したトローチ

          氷結したトローチが輪廻を描く 空白の観覧車に朧な藍が揺れて 太陽の焼け跡が、蜃気楼の浸透圧を高める (淡い雲海、溺れる鴉の群れ) (匿名の校舎屋上から身を投げる二人) 全てのシーンが虚ろな熱病に冒されて―― 1月の薄荷色、渇ききった喉を潤す冷熱 化学式散らばる白線上 零行進と群青のアスファルト 刻まれた礫死体 啄まれた頸動脈 サイレンを消音にしたままの最果市街地 血痕すらも蒼白な暁の罪跡___或いは爪痕 白と黒が過ぎ去る国道254号歪んで 十字架模様は逆さまの哀歌を口ずさむ

          氷結したトローチ

          奇数のメスカリンカラー

          11月の欠落、蒼の空洞と罅割れた試験管 あてどなく彷徨う足首は紫斑帯びて 十字架の機密事項に気づくこともなく―― 奇数を刻まれた足首の枷はその黴を悔いることも忘却せしめ軍隊蟻を蹂躙し諸刃の刃に自傷の悦楽に笑みを浮かべ涙すら宝玉と化したと宣う間に口紅の痕が消えることなく夜の帳を唾棄した愚かなる革靴の擦傷陪審の付箋と共に殺人者は妻を埋葬した ……「月光」の磊落と7 偶数を決して許さない王座にしがみつくのは ブランデー漬けのハツカネズミだけ 影すら落ちない白日に 子供たちは一人

          奇数のメスカリンカラー

          四四番目の空白

          エンドロールに映る暗濘の彼方 流砂のような火炎が全てを焼き尽くしていた 傍観或いは感傷 (それら)に浸る誰もが 柔らかに火葬場の暗闇深くに沈められ__ 刹那に映る炭化した彼らは 暗幕の小さな悲劇にすらなれなかった 視えない鬼が手招きする黄泉比良坂 言葉も無く 表情も無く 醜き亡骸の啜り泣く声だけが反響して…… 形骸化した微睡みのなか 溺れゆく私の左手を摑むのは「わたし」だった 「わたし」の名前? 「     」 「     」の悲劇的な絵筆 削ぎ落とした「    」の右耳は

          四四番目の空白

          C'était à cause du soleil

          無軌道な雑踏、都会の喧噪、真夜中のクラクション 終わりなき譜面の不協和音に冒されて それでも黙秘を貫く桜の花は 「正体不明」とイロを孕んでゆく ……春の35階高層ビルは不穏だ 白線の内側を奔る理由なき葬列 早過ぎた埋葬から滲みでる鬱血 蒼白の人差し指が示す真相、37頁に潜むのは__ 刹那に散りゆく桃色の画鋲の痛絶 出血を催す止血剤を求める匿名 錆びたダガーナイフを振り翳す陰画 光のなかで鴉の群れが断末魔と糾弾を―― 「チョコレートミントの溺死体は夏に浮かぶ」 誰かがそう囁いた

          C'était à cause du soleil