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網膜のゾアとアスピリン

白磁散りばめられし水色に
瞬冷の秋は微かな暖かみを帯びて
全ての風葬された遺体に
無垢なる祈りを捧げる
――無表情の海抜39.9が
ア_オの無い頸動脈を引き裂こうとも――
死を柔らかにいざなうモルヒネの笑み
炭化したアブサンの残り香
12月の空席/拐かされし太陽
オレンジ轢断した罪と罰の断片
網膜に浮游する春雷の幻惑
鼓膜に降る雨に、誰も傘を差しだすことは無く……
左手の機密、寝台の裏表とコイントスの反転
「網膜のゾアが選択肢を迫る 」
模型と化した空虚なる都市の一角
「人形」としてのアイデンティティを
群青のパステルとフィルムの形而下に
(ありふれた死)として形骸化すると
果たして、彼らの元素記号は解体することなく
針を忘れた空を彷徨う透明性に拮抗できるのか?
……私にはそれがわからなかった
存在しない「紅きあやめ」
あの日の色彩をアスピリンが暴きだす時
海岸線を流れゆく百合と白いワンピースは
瞬く間に冷たい赫に濡れてしまった
泡沫、灰色の路地裏の記憶さえ__
傷だらけの裸足が
透き通った水槽の深海を彷徨う
右眼を這い回る蜥蜴と影
覆面の白衣 早過ぎた納棺
指先が催す悲劇の末路は
描かれなかった黒猫の余韻と「   」
――60F,チョークの跡 剥がれ墜ちる境界線
いつか、青い砂漠の砂塵を全て
私の血で固めることができたら――

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