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黄昏の蒼に轢かるる夕陽の眼零れたミルクすくわれぬまま

左目に映る硝子世界に二重瞼は脆くも崩れ
右の君のステンドグラスとノスタルジアは
空白に17:09の水彩画を染みこませて
「誰か」を望む奇数番地の住宅街
転がる三輪車、錆びついたシャベル
子供の悲鳴はいつも悪意に浸されているきがして
私の唇から夕闇色の血が滲む
嗚咽すらなく、永遠に開かない鍵に爪痕を遺すのは
あの日を繰り返す少女の記憶だったから――
暗い影が這い回る共同墓地
心臓を象る甘味料とプラスチック
バレンタインの祈りを捧げるのは
限りなく茜色に近い蒼だった
夕刻(だけ)に溶けゆく白い手が
君の安堵と罪を羽交い締めにする
幸福な行方不明者、
空虚な咳が空に熔けるように、
フィルムに遺された瞳孔に幽かな血と恐怖が滲んで
――滲んだ(だけ)だった
そう、「黄昏の蒼に轢かるる夕陽の眼零れたミルクすくわれぬまま」

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