宿でくつろぐと云う贅澤なひと時…
前回、ただ新幹線の中で酒を呑んで驛辯食べていただけの内容となってしまいましたが、その續きとなります。
まずは驛に着いたのでありますから、どこにも行かずに驛舎を散策する事と致します。
今や驛そのものも立派な観光地でございます。
「思えば遠くへ來たもんだ」と地域の香りのするこの場所をゆっくりと観て廻ります。
すぐに移動しない。これぞ一人旅の樂しみでございます。
やはり當地は將棋の駒です。
驛のあちらこちらで展示を見かけますが、この驛には「天童市将棋資料館」と云う施設が存在します。
まずはそこを見學して行きましょう。
イマドキは博物館をゆっくり観るなんて云う事はなかなか出來ません。
何故かこんな樂しそうな場所を皆さん敬遠されてしまうのです。
色々な知的好奇心をくすぐられ、しかも然程混んでいないのです。こんな良い場所はなかなか在りません。
しかし館内は殆どが撮影禁止だったので画像はございませんが、早速にお土産を幾つか購入致しました。
博物館と云えばパンフレットです。
當館にも「公式ガイドブック」と云う名前で賣っておりました。謂わば「攻略本」です。
そして著名な棋士の方々の座右の銘の揮毫された扇子を一つ。
色々な言葉が並ぶ中で私の最も心に響くのはこれなのです。
残念乍ら「四捨五入」「出前迅速」「落書無用」の3つは無かったのですが、この扇子は現在お部屋のテレビジョンが安置されている場所にそっと飾られております。
画像が無く、お傳えする事がなかなか難しいのですが、この博物館には日本は勿論、世界の色々な將棋が展示されており観ているととても面白いのです。
國や地域によって駒の名前が異なるのは勿論ですが、各々の形状一つを見てもとても個性的であります。
時代や場所が変わっても人類皆同じく「樂しい事はみんな大好き」なのであります。
日本の將棋も同じく、時代によっては色々な種類の將棋が誕生しております。
日本の將棋は世界でも珍しく「持ち駒」と云う獨特な仕組みがあるのですが、中でも古い時代の「大将棋」は凄いものでした。
我々が知っている將棋の駒を遥かに超える数と種類の駒を用いて、その陣容を見るにまさに圧巻の軍勢であります。
「王将」「金将」「銀将」は勿論ですが、「銅将」「鉄将」なんてのも存在しますし「猛豹」や「酔象」等の動物さん達も參戰されている様です。
「角行」だけでなく「竪行」と「横行」も。
大駒の成駒として有名な「龍王」「龍馬」の他にも「獅子」「麒麟」「鳳凰」と強そうなのが勢揃いです。
名前もカッコいいのが多いので何かの參考になるかもしれません。
…一応、RPG作っていますので…………。
その他、中學時代に修學旅行に持って行って大流行した「軍人将棋」やその亜種の「海軍将棋」なんてのもなかなか面白いものでした。
ローカルルールが幾つも有りましたが「総司令部に地雷を置く」や「突入口附近にスパイが居る」なんてのがよくやった手です。
將棋の面白さは「こうすればこう出る」と云う讀みの勝負であるところだと思います。
日常生活でも社會生活でもゲーム制作でも、こうした力は色々な所で役に立つものです。
私の指し手は昔からいさゝか力押しであるのが特徴ですが、よく學校の休み時間にみんなで指したものです。
あの頃はイマドキみたいに携帯電話で遊ぶなんてのが無かったので、一つの將棋盤を囲んでみんなで盛り上がったものです。
ルールさえ知っていれば誰でも樂しめると云うのがとてもミリキ的なのです。
画面に閉ざされた世界でなく、普段あまり話さない人とでも不思議と仲良くなれる。それが素晴らしいのです。
少々長くなりましたが、將棋の博物館のお次は地域の物産館を拝見致します。
最終日に慌てない様にお土産の目星を附けておくのも大事なのです。
以前來た際にやり損ねた事を致します。
「王将」や「左馬」の駒が有名ですが、ここでは自由に文字を注文する事が出來るのです。
少々納期がかかりますが、私も世界で一つの駒を作って戴く事に致しました。
(プライバシーですので画像を加工致しております)
さて、こうして驛舎だけで2時間程滞在致しましたが、漸く移動を開始するのでありました。
流石は「將棋の町」です。
キャッチフレーズは「あなたの旅に王手」との事でしたが、私の旅に「詰み」は無いのです。
どこでどんな物でも旅の空の下では樂しいものです。
こうして驛から歩く事約30分。宿に到着致しました。
広縁附きの8畳間。これぞ温泉宿です。
お茶でも飲んで、早速浴衣に着替えてお風呂に行きましょう。
この宿には内湯と展望露天風呂の2つが存在するのですが、まずは内湯を堪能致します。
暖簾の先は聖域です。謂わば湯殿の暖簾はその端境、つまり「結界」なのであります。
従って、如何なる場合でも撮影が禁じられた公共の風呂場にキャメラを持ち込まないのが風呂と温泉を愛する者の嗜みだと思っているのです。
結界の内部、即ち聖域での禁忌は厳に慎まねばなりません。
…と云う訳で、お風呂の画像はございません。惡しからずご了承ください………。
丁度空いている時間帯だったので、ほゞ貸切の状態でした。
いや、まさしく極上の贅澤であります。
お風呂上りにお水を飲んで、お外の喫煙所へ…。
心地良い夕方の風を浴び乍らの一服は至福のひと時です。
今日も愛用の「電子煙管」は調子も宜しく浴衣との相性も抜群であります。
部屋へ帰って地方局のニュースを観てから丁度良い頃合いに食事処へ…。
シーズン中は混み合う大広間ポツンと置かれた食卓が何とも贅澤であります。
画像奥の席が私のお膳になります。
陶板焼きやお釜の焜炉に火を入れ、暫し優雅で上質な時間が流れていきます。
この瞬間はとても樂しいものです。
特に何をすると云う訳ではないのですが、この何もしない時間と云うのがとても良いのであります。
新幹線の中であれだけ呑んだのに懲りないお人なのです。
刺身のお造りを堪能しつゝ、一つ一つ丁寧に酒の味を愉しみます。
細かな部分も樂しめるとその味もまた一段と旨いものです。
當地の食材をよく噛み締めて…。
お食事が濟んだらお部屋に帰らずロビーのラウンジで珈琲などを戴きます。
こちらは正真正銘の飲み放題です。
静かな佇まいのラウンジは一寸したひと時に立ち寄って喫茶をするのに格好の場所です。
そこに在るものを愉しむ事。旅の醍醐味であります。
折しも聯休の前でありましたのでラウンジにはこの様に立派な五月人形が飾られておりました。
こうして部屋に戻り、あとはグデグデと過ごしていたのでありますが、この何もしない時間と云うのは實に贅澤であります。
兎角観光だけに目が行きがちな昨今、こうして「宿で何もしない」と云うのを愉しんでみるとその過行く時間もまた格別であります。
夜に何度かお風呂に行ったり致しましたが、斯くは初日を終えて深い眠りに就くのでありました。
續く……
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