「007 スカイフォール』（原題：Skyfall）」 (映画 2012)

ダニエル"ボンド"の3作目。長年仕えてきた上司Mへの信頼を失いそうになり、仕事への熱意も消えそうになりつつも、捨てきれない愛国心と使命感に燃えるボンド。

様々な葛藤にまみれるボンドの人間らしさと、それを乗り越えようとする強靭な心身で魅せる本作だから、最高傑作と言われているのだろうか。

今回は敵役ハビエル・バルデムの怪演と、"M"=ジュディ・デンチの熟練した圧があってこそ、ボンドの個性がより際立ったと思う。

敵役は強ければ強いほど憎たらしく、やっつける時の爽快さがたまらない。ハビエル演じるシルヴァは風貌も物腰もふてぶてしくて醜く、ボンドと正反対のキャラクターだった。

そして今作でサヨナラとなるジュディ演じるMの、熟成された圧は頑固に見えたが、上司としての風格に満ちていた。リーダーとしては、群れを守るためには個を切り捨てる冷徹な決断を下さなくてはならない。そんな修羅場をいくつも重ねてきたからこそ、最期までボンドを信じ切って頼ったのだと思う。

さて。毎回思うのだが、ボンドガールは注目の的なのに結構あっけなく消されてしまう。今回の美女セヴリンも、美しさが無駄になるくらい出番が短い。ボンドを誘き寄せるエサとしての役目。そしてボンドと良い仲になってしまったら、その代償のように殺されてしまうのだ。それがボンドガールの宿命だとしたら、ボンドは死神みたいでちょっと可哀想。

そうなると、今回のイヴや前作のカミーユのような役目が一番おいしいのではないだろうか。どちらの女性も強く美しく、ボンドと共に闘い、カッコ良い見せ場もあり、そして死なない。

ボンド映画における女性の立ち位置が、現代女性の生き方も表しているのかもしれない。