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「護られなかった者たちへ」 (映画 2021)

小説を読みたいと思いつつ、ネトフリで映画を見てしまった。キャストからして豪華だが、それに負けない設定とストーリー展開がお見事!
震災と生活保護を結びつけ、それが事件の動機にも繋がる点には賛否両論あるだろう。
しかし、登場人物の心情や背景を視聴者が感じとることで先の震災を忘れさせないのなら、これも震災作品(エンターテインメントという言葉は使いづらい)として意義があると思う。

佐藤健の端正なルックスは、影を帯びると凄みが加わる。演技力には前から定評のある役者だが、作中に見せる軽い猫背気味の姿勢や、殺気のある視線など素晴らしい。カッコイイだけではない、本格俳優の類として今後の活躍も期待している。

キーパーソンを演じる清原果邪も、若手実力派らしい振り幅の広い演技で物語を引っ張る。彼女以外にこの役はできないくらいマッチしていた。

そして倍賞美津子の存在感。"ハードボイルドの似合う素敵なマダムの面影"は今は昔となってしまったが、老いたその姿までもが作品になるのは稀有だと思う。大好きな女優なので、この先もずっと活躍してほしい。

阿部寛のテルマエロマエ顔はそれだけで迫力あるのだが、ここではかなり抑えた演技で作品に深みを与えている。佐藤健の独白を聴くラストシーンでの表情演技は、セリフ無しでも心情の推移がよく解った。

震災や事件現場など暗い色遣いが多い画面において、黄色いジャケットが果たす役割は非常に大きかった。

「震災は怪物だ」と犯人は述べるが、本当の怪物は人間でもある。そんなことを思わせる秀逸な一本だった。


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