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「恐怖箱 風怨」雨宮淳司

本作は基本短編だが2つほど中編が入っている。
実話怪談シリーズ。
いわば「本当にあった怖い話」の小説版のようなもの。

怖い話が好きで、子供のころから怪談ものはよく読んだ。
その為、簡単に言えば飽きた。
夏の暗い夜にトンネルでお化けと会う、というようなシチュエーションにそこまで恐怖を感じない。
怪異がテーマの小説の中でも、呪いや怪異の謎解明ものは読んだ。
でもそれは恐怖を求めてではなく、ミステリー的な要素を求めてのことだ。
以前書いた比嘉姉妹シリーズはこれにあたる。
有名なのは「リング」だろう。
解明系ではない怪異ものには手が出なくなってしまい、主に人が怖い系を探すようになった。
映像作品では「トリハダ」が大好物で劇場版2作のDVDを買ったほどだ。

本作は実話怪談なので、謎が解明されない系の怪異ばなし。
だから本来ならとっくに飽きたジャンルのはずだった。
食事でも、毎日のように食べてたけど飽きて食べなくなって、でもたまに食べたくなるものってない?
そんな感覚で本屋で表紙を見て衝動的に購入した。

この本を売らず、他人にも譲らず本棚に置いている、こうして記事にしている理由は、1つの作品のあるシーンの為だ。
セリフそのままは引用しないが、意味としては「幽霊の背中はやばい」という内容だ。
これにはしびれた。
夏の夜の幽霊はもうインフレしている。
実際にあっても「キャー♡」というぐらいで、ジェットコースターのようなもんではないだろうか?
では、冬の真昼間に幽霊と出会ったらどうだろう?
幽霊がいるという前提だとしても、いるはずがない場所にいるというのは恐怖ではないだろうか?
幽霊とはこちらを呪いたい、何かを伝えたい存在だと定義されている。
だから真正面から目撃者にアプローチをかけるのが普通だ。
では背中を見せる幽霊というのは何を思っているのだろう?
セオリー通りではない為、何を意図しているか読めない。
現実の人間でも幽霊でも意図が読めない存在ほど怖いものはないのでは。

他にも本作では、幽霊物に定番のやさしい身内の幽霊が出てきてほんわか、と思ったら。。。みたいな話もあって、全部が良作だとは思わないが、読むべき怪談が収録されているのは事実だと思う。

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