【単巻5冊読書感想⑫】『巫者のいる日常』『彼氏・オブ・ザ・デッド』『ダイナー』『兄の終い』『俺氏、異世界学園で「女子トイレの神」になる。』
さて、また5冊の感想が溜まりました。
宗教学のガチの巫者研究。女児向けラノベ。日本の名作ノワール。エッセイ。最近のライトノベル。
どうぞ。
【1冊目】『巫者のいる日常 津軽のカミサマから都心のスピリチュアルセラピストまで』
※このタイトルはKindle Unlimited対象タイトルではありません
表紙、可愛いですよね〜。
うん、メモをとりながらとはいえ、6時間かかった。
読書メーターの読みたい本リストにぶち込んであって、地元図書館にあったから借りてきたんですけど。
面白い。
けど、これは、ガチ。
ガチのシャーマン論(シャーマンという言葉には広がりがあるので、あまり適切ではないみたいですが)。
複数の論文を集大成としてまとめた一冊です。
カミサマ、オシラサマ……聞いたことありませんか。
オカルト系に興味がある方でも知っている、わりとメジャーな言葉だと思います。
津軽地方、民間巫者として活躍するカミサマ。
彼女彼らの個人史、既存教団や相談者との関わりから、カミサマとは、民間巫者とはなにかを紐解いていきます。
現在の津軽地方では、より広く世間に認知されているイタコは姿を消しているそうです。
その役割をカミサマが引き継いでいることに着目して、現代の巫者としてスピチュアルセラピストにも論が広がります。
ガチですよ……。
特に、最初と最後が学術的で難解です。
質的研究で、具体例が挙げられていくので難しいところは飛ばして……という読み方のが一般向けかも。
個人的には。
「知識人類学」っていうマイナーな人類学が出てくるんだけど、ここで述べられているのって、認知心理学のスキーマとかとまるきり同じなのね。
で、違う学問なのに似たような重要なことに行き着く、っていうの人類本当に奥深いなー……と思うなど。
どうしてこのタイトルを読みたいと思ったのかも思い出せないんですが笑
宗教学って、個人的観点によりやすくて一般向け学術書でも「うーん、客観的じゃねーし、難解でわからん」になりがちだったんですけど。
このタイトルは、難しいところはあるんだけど、そういうのと比べれば読みやすく面白かったです。
濃厚な読書になりました。
【2冊目】特殊設定出落ちです……『彼氏・オブ・ザ・デッド』
ビーンズログ文庫アリスは初読です。
アリスっていうくらいだから、小学高学年〜中学生女子向けなんでしょうな……。
ちょっと物足りない上に、普通のラノベと同じくらい時間がかかったので。
次からビーンズログ文庫アリスを手に取るかと言われると……。
ただ、児童書というか、KUに小学高学年〜中学生女子が読めるタイトルがある、というのは読書の選択肢としてはいいのかも。
まるで「王子様」なハーフ男子と結婚を誓い合い、彼が渡米したあと連絡が途絶えてしまった。
浮かれまくって周りに吹聴した過去を黒歴史と思い、「恋愛はいい、わからない」という主人公。
約束の日、約束の場所で、海からゾンビ群が現れて……? ゾンビたちの王は、まるであの王子で!?
というお話。
ゾンビ一人一人の能力が「異能系」だったりとか、山場が特にないストーリーとか。急にヒロインがツンデレになるのも違和感が強かったな……。
大人には不満ですけど、十代前後なら、別にこのくらいでも楽しめるかもな〜と思います。
「え〜読書〜?」みたいな子でも多少興味が湧くあらすじでもあるような気がするし。
ただ、正直、「ゾンビなんで想い人が死んでる」って部分。
しかも、「彼の両親によって軍事目的で研究施設で魔改造された」という設定。
うーん、まぁ、続刊ないのも頷ける。
どうしても、重くシリアスな展開になってしまうので。
そこらへんは、最初から一巻完結で、少し不思議なシリアス系のしっとりする大人向け恋愛物語にした方がおもろいのでは? と。
王子様のような幼馴染の男の子と結婚の約束をした。
約束の日に現れず、それでも毎年その海辺へ足を運ぶヒロイン。高校卒業を機に街を離れることなった彼女は、今年が最後と約束の場所を訪れる。
立ち去ろうとしたその時、打ち上げられたのは自分より幼い、だいたいあの日に現れるはずだった、そんな年頃の、ただ、明らかにゾンビのヒーローで。
みたいな。
つい、兄に協力してもらって家に彼を連れて帰って、記憶が戻るまで彼を守ことにする……。
みたいな。
で、謎の組織に追われつつ、最終的にはヒーローが守ってくれて「あ、わたし守ってるつもりが、彼に守られてたんだーー」で意識を失って……。
的な?
オチは結構シリアスな、二人で手を繋いで海に消えていったことを匂わせつつ、おにーちゃんが海を眺めているーー。
シリアスかつ含みのある終わらせ方をする、とか。
どうすか?
あぁ、最近、改変ストーリーのアイデアばっかの感想になってごめんなさい……。
書き出さないとぐるぐる回ってしんどいので、一つ、お付き合い願えば。
【3冊目】ついに読んだ、有名タイトル!!『ダイナー』
トンプソンが好き。
わたしは、そんな元女子高生でした。
日本のノワールもいいよね。
ということとでようやく手に取った一冊。
いや……面白かった!
でも、これは、ノワールじゃない!!
ラブロマンスだって!!!
あーもう好き!!
という言葉しか出てこないんですけど笑
【4冊目】迷惑をかけられてばかりだった兄が亡くなった『兄の終い』
独身で亡くなった叔父を思い出した。
兄が亡くなった。
兄は二度目の離婚後、末っ子と見知らぬ土地で暮らしていた。
唐突の警察の連絡から、兄の元嫁と長女と共に、亡くなった兄の「終い」をつけに行く。
という、実録エッセイです。
泣いた。
この一文を最後に、涙腺が崩壊した。
いやいやいやいや。
泣きたい時にどうぞって感じですかね。
エッセイとかあんまり読まないんですけど、たまにはいいですね。
【5冊目】ちょい設定が甘いですよ?『俺氏、異世界学園で「女子トイレの神」になる。』
異世界に行くんじゃなくて、異世界が地球に来る系。
ある日、異世界からの「窓」が開いた地球。
友好路線で行くことになり、各界から良家の子女を集めた学園が地球に爆誕。日本政府現総理の三男、父親の失言事件から対人関係をうまくこなせなくなった主人公は、父親からそんな学園へ転校を言い渡されて……。
優等生を演じながら、悩みを抱えていたヒロインに「女子トイレ」に召喚され、他生徒の相談にも乗ることに……?
というストーリーです。
Kindleのあらすじがわかりにくかったのでまとめ直し。
女子トイレの神様の流れは綺麗で面白い。
ただ。メインストーリーの伏線が薄かったり、ラスボスの描き込みが甘かったり、そのほかの世界設定部分が練られてなかったり。
で、まぁ、些細なことなんだけど。
気になったのは「異世界連合」とか「異世界文化交流」とか「異世界出身者」とか適当に異世界って冠してる言葉づかい。
多分、政治家たちが集まると「多世界による共同及び協調のための連合会議」とかにわかりにくい&長くなりそーだし。異世界でも「異文化交流」でいいだろ、世界いるか? とか。「地球外出身者」のがわかりやすくね? とか。
いや、些細なんだけど。
超気になった。
だって、このタイトル。
『俺氏、異世界学園で「女子トイレの神」になる。』の「異世界学園」の部分。
フツー、異世界の学園だと思わない?
そういう、「読者が何を想像するか?」っての、大事じゃん。
で、まぁ、設定部分も甘い。
「なんで地球に窓がいっぱい開くことに?」とか「どういう経緯で地球が多世界の交流の場として選ばれることになったの?」とか「学園が日本にできたのはどーして?」みたいな部分が語られてない。
ここら辺は「おとーちゃんが無双して、地球での国際外交でも異世界の外交でも勝った」で軽く出すだけでOKだし、おとーちゃんのキャラ付けにもなるから、もっと語った方がいいんじゃない?
全て一巻に描かなくてもいいけど。
語られない背景、という重みがない。
長期シリーズを見越した伏線というか、ストーリーを膨らませるための設定が存在しない。
ゆえに、シリーズ化への道が閉ざされてしまってる。
面白いがゆえに、惜しい……。
職業作家である以上は、ちゃんとそこらへんは考えないいけないと思うんですよ。
歴戦のラノベ作家さんはそうやって創作してはるし。
一巻は、完結させつつも、次への広がりを持たせる。圧倒的に、手に取る人が多い一巻では、「これは面白かったから他の作品を読もう、次回作も楽しみ」と作家の名前を覚えてもらう。
二巻が出ても、三・四巻で打ち切られるケースが多いから、そこで綺麗に追われるシナリオを一つ考えておく。
今のご時世、五巻が出れば上々。三・四巻で打ち切られなくても、ここでシリーズ前半が終わるような、一区切りつくシナリオをメインで考える。
もし、六巻が出れば、ちょっと事態を大きく広げた話を展開する。十巻が見えないなら、この大きな展開でエンド。
もう少し巻数をもらえるなら、大きな展開からさらに連鎖して「最後の危機」が起こる。主人公やヒロインの一番大事なものが危機に晒され、もしこの問題が解決したら、今度こそシリーズが終わるだろうなという展開へ。
というぐらいは、考えておかないといけないと思うんです。
というか、1巻でヒロインと主人公が意識し合うシーンがないんですよね。
だから、「あーこの二人が結ばれるんだな」って予感が0。ニュートラルな「クラスメイト」でしかない。
恋愛要素が必須なラノベには致命的ですよ、これは。
えーと、メインヒロインは彼女なんだろうけど……うーん、で終わる。
わざとそうしないなら、それ以外の魅力がどーしても必要。なんとか他の特徴をつけなきゃいけない。
「異世界ものが流行ってるから、ちょっと違う設定で」以前に。
主人公が他女子生徒の相談をうまくこなすのに、自分でも訳もわからず嫉妬しちゃうヒロイン。
ヒロインが垂れ流すエロ妄想に、理性を手放さないようお経を唱える主人公。あるいは、その妄想展開が夢に出てきてしまってどーしても意識し始めてしまう、とか。
一つ目は展開に関わるけど、心でお経唱えるくらいなら五行くらいで済むはず。
互いを恋愛対象として意識し合うシーンがあれば。
2・3巻「サブヒロインが登場! 揺れ動く二人の関係は!?」
ある世界から転校生(サブヒロイン)がやってきて、自分もクラスにようやく馴染めた苦労から主人公がサブヒロインに構い倒して、ヒロインが嫉妬する。
で、そのサブヒロインに影というか、暗い秘密がちらつく。優等生なヒロインが告発じみたことを言って、主人公が「お前らしくねーぞ」と軋轢を生む……。
メインストーリーはその「秘密」を軸として組み立てる。
ここでシリーズが終わるなら、ヒロインと和解したサブヒロインの計らいで、主人公とヒロインが告白し合って終わる。
終わらないなら、お互い強く意識し始めるくらいに留める。
「なぜ、日本に学園があるのか」という設定があれば。
5・6巻「アメリカが介入してきて学園、ヒロインの自由の危機 !」
アメリカへ学園が移転すれば主人公とクラスメートは離れ離れになってしまう、とか、外交関係でおとーちゃんが負けたってことで、解散選挙で負けそう、とか。
で、総理の三男っていうアイデンティティが崩れた主人公がヒロインとかクラスメイトに当たって酷いことを言ってしまうとか。
あるいは、アメリカ政府の元で、学園は自由が失われてヒロインは翼を切られることになるかも、とか。
5巻で終わるなら、ここで二人が想いを伝え合ってハピエンで終了。
「窓」という一言で片付けずに肉付けをしておけば。
シリーズを締めくくる最終イベント「敵対的世界の侵攻!!!」
世界の多くは、戦うことを選びつつも、最終手段として地球を捨てる道も模索し始めている。と、おとーちゃんから教えられる。
生徒たちは自分たちの世界に引き上げ、最後まで残っていたヒロインも、ついに帰ってしまう。互いの想いが通じた後だったのに、今生の別れになるかもしれない……!
というシリーズ一番の盛り上がりシーン!
みたいなシナリオはあり得るはずなのに。
単巻、暇つぶしで読む分には十分面白い。
でも、だからこそ、そこ止まりになっちゃってるよ……と。
作家さんだけが悪いんじゃなくて、膨らませきれない編集さんにも責任があるよーな気がするんですが。
いかほどでしょうか。
それでは最後に。
皆様の読書ライフの充実を祈って。
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