【シリーズ読書感想】『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』
今回のシリーズはこちら。
性知識が卑猥として禁止された日本。
首と手首につけられた機械によって、発言も筆記も監視されている。
理想の女子生徒に感化されて更生した主人公は、
下ネタを普通に言いたいがために、下ネタテロに走る先輩と出会ったーー。
ちゃんとディストピア、ちゃんとラノベ
ちゃんとディストピアだ!!
そして、ちゃんとライトノベル!!
え、この二つが同時にしっかり成立してるのって、すごくない!?
というのが、まず、1巻を読んだ感想。
ディトピアの構成要素に、性的な部分への過剰な規制というのがあって。
このシリーズでは、サブカルチャーに焦点を当てた変態国家日本というのが、規制推進派団体によって国際社会に広められ、外圧を受けた日本政府が規制に乗り出した……という設定になっている。
その規制が、ディストピアの王道。
監視ツール。
首にチョーカー型、手首に腕時計型の監視ツールをつけられ、発言や筆記を見張られていて。
卑猥用語を言ったり、書いたりしたら、善導課という組織に逮捕されてしまう。
そして、正確な性的知識を持たない中高生たちが、性的刺激と恋愛感情をごっちゃにしたり、適切な求愛方法を知らずにストーカー化したり……という問題が顕在化しかけている社会。
しかも、規制はより厳しくなっていく。
「貞操帯型」の監視ツールを是認する法案可決が進行中。
しかも、貞操帯が何かわからない中高生の署名を集めることで実現されようとしている。
ね。
ちゃんとディストピアでしょ。
でも、抑圧されまくったディストピア小説ではなくて、ちゃんとラノベでもある。
メインヒロインの華城パイセンは、「下ネタを自由に言いたい」というとんでもなひと。
監視ツールを一日3分無効化するアイテムを使って、公の場でパンツをかぶって顔を隠し、下ネタを叫ぶ。
という、下ネタテロを敢行している。
「下ネタを自由に言いたい」という個人的動機はあるものの、同時に貞操帯型監視ツールに対し、「正しい性的知識を広めれば、自ずと中高生も反対してくれるはず」と性的知識の流布も目的としている。
主人公の狸吉は、下ネタテロリストの父を持ち、下ネタ連呼する悪童として育ったものの、品行方正なアンナ先輩に感化され、更生。
アンナ先輩が在校している、国内第3位の優良高校に入学を果たすものの、華城先輩のテロに巻き込まれ、徐々に自分を解放していく……。
というストーリーになっています。
「ディストピアな近日本を舞台に、テロ活動を行うラノベ」というとものすごく珍しい気が。
この独自色、さすがガガガ文庫はやりよる。
でも、ご安心、シリアスには一切、転びません。
だって、このメインヒロイン、シリアス場面に耐えきれずに下ネタ連発するから。
追い込まれて精神的にやばい時こそ、壊れて下ネタ連打する……。
こんなメインヒロイン、他にいない。
いい意味でも、悪い意味でも笑
地の文も、会話も、ストーリーも、ぜーんぶ下ネタ
というわけで、下ネタが溢れています。
メインヒロインとの会話がまず、下ネタ。
1巻はまだマイルドなんですが、主人公が抑圧から解放された3巻ぐらいからですかね。
地の文も下ネタで溢れます。
で、下ネタテロを起こすので、ストーリー展開も下ネタ全開です。
というわけで、どのページを開いても下ネタが溢れています。
……。
えーと、わたしは半分、6巻くらいで一旦疲れて読む手を止めました。
高校生男子ならともかく(というのも偏見ですが)、あまりの下ネタラッシュに「面白いというよりなんか疲れた」と。
下ネタ一辺倒なんだけど、ちゃんとディストピアなストーリー展開があるから、安定して読めるのは読めるんだけど。
という、奇跡のバランスに則って成立しているラノベシリーズでした。
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