頭蓋骨

ふとした瞬間に、これで合ってただろうか?、となることがある。
昔は間違いなくAだったはずなのに、改めて見てみたらB になっている。そんなことがないだろうか?
これをマンデラ効果と言う。
このマンデラ効果には様々な説があるが、一説によると、勘違いをしていた人たちだけがパラレルワールドに行っていた、という説もあるんだとか。

部活に入らない学生からすれば、放課後は既に最強の時間。ましてテストなども控えていなければ、それはもう楽園である。
「ていうわけよ。」
「なるほどねー。そういう理由があったんだ。」
「そうそう。」
「でもそれだと次から大変そうだよね。」
勇樹、陽介、英一の三人は、いつも立ち寄るファミレスに来て特に内容などないバカ話に花を咲かせていた。
もちろん、お小遣い暮らしの高校生三人が大したものなど頼めるはずもなく、机の上にはこれでもかと盛られたポテトフライと、カラフルな飲み物が入ったコップが三つ。そういうことである。
「そうだ、ふと思ったのよ。」
「陽介がそう切り出す。」
「どうしたの?」
「昨日お夕飯食べてる時に何となくテレビ見てたんだけど、世界の衝撃事件みたいのがやってたのよ。」
「ああ、そういうの多いよな。」
「それで、アメリカだったかな?なんか近所でも話題の美人妻が頭を銃で撃たれて、みたいなのやってたのね。」
「銃社会って怖いなあ。」
「それで、その弾丸が頭蓋骨に到達してて即死だった、みたいな説明とテロップが出てたんだけど、頭蓋骨って、本当にそういう漢字だったっけ?、って思って。」
「ん?どういうこと?」
「頭蓋骨ってさ……」
陽介は筆箱からペンを取り出すと、机に備え付けられたナプキンに文字を書こうとした。
しかしナプキンに文字を書くのは難しく、少し苦戦をし、さらに、
「ごめん、普通に漢字分からないや。」
と言った。
「なんだそれ。」
思わずツッコむ勇樹。
「ごめんごめん、じゃあ、これ見て。」
そう言うと陽介はスマホを取りだし、ポチポチと何か打ってから勇樹と英一に画面を見せてきた。
その画面には「頭蓋骨」と書かれている。
「うん。これだな。」
「そうだね、これだね。」
納得した様子の勇樹と英一。
「これでいいんだけど、でもなんか違う気がするのよ。」
「ああ、あれじゃない?この、2文字目の『蓋』って字が見慣れないからじゃない?」
「確かにね。横の二文字は小学校レベルの漢字だもんね。」
「そうなんだけど、違くて。」
「じゃあその、これが正しい、みたいな字が浮かんでるの?」
「うん!」
そう言うと陽介はまた携帯に何やら文字を打ち込み始め、また画面を見せてきた。
すると先ほどの「頭蓋骨」の下に、「頭骸骨」と見慣れない字が追加されていた。
「ああ、なるほど。」
「読めなくはないね。」
「そうか、骸骨って字か。」
「そうそう、なんかぽいでしょ?」
「うーん、なんかずっと見てるとどっちもあってるようで、どっちも間違ってる気もしてくるよ。」
「ゲシュタルト崩壊起こしてるな。」
 勇樹は思わず笑った。
「まあ、それ言いたかっただけだからこれ以上特にないんだけど。」
「そういうことはあるわな。」
「あ、思い出した。」
 珍しく大きな声を出す英一。
「そう言えば俺も少し前に思ったんだけど……」
 こうしてくだらない話は連鎖する。

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