無双

ゲームというのは日々進化している。
昔のゲームと言えば、人は棒人間だったし、ボールはどんな競技だろうと黒丸ひとつ。
しかし、その時代に青春をすごしたものにとってはそれですら新鮮であり、あまりにも画期的すぎた。
それが少しずつ進化を重ねていき、ただの棒人間がちゃんとした人らしくなり、色が着き、3Dになり、今や実写なのではないかと思うほどのゲームが生まれた。しまいには、ゴーグルひとつでまるでゲームの中にいるかのようなものまで生まれ、それでもなおゲームは進化し続けている。
新しいものが生まれる限り、人は際限なく新しいものを追ってしまう。子供の頃は1本のゲームを壊れるまでと言ったら言い過ぎがもしれないが、これでもかと遊び尽くしたのに、ゲームが乱立されればされるほど、そして自分で手を伸ばせる範囲が増えれば増えるほど、一つ一つの作品に対する愛が減って言ったようにも思える。
もちろん、それとまた進化であり、成長であり、それが悪いというわけではない。むしろそれが経済を回すのである。
しかし最新のゲームをしていても、ふと昔ハマったゲームに戻ってしまうことはないだろうか。
前に進むだけが人生ではない。時には後ろを振り返って、感傷に浸るのも人生である。

「いやあ、やっぱり面白いなあ。」
「うん、本当。現実と見間違えちゃうよね。」
「確かに、最近のゲームって本当にすごいもんね。」
三人はゲームをひとしきり遊び終えると、そんなことを話しながらゲームの電源を落とした。
「ふう、何するか。」
「そうだねー。」
それから会話が無くなったが、特に気まずくなったりは今更しない。
「あ、そうだそうだ。この前部屋掃除してたら昔のゲームが出てきたんだよ。」
「ええ、まっつん、またゲーム?」
陽介はニヤニヤしながら尋ねる。
「なんだよ、やめとくか?」
「そうじゃないけどさ。」
陽介はまだニヤニヤをやめない。
「まあまあ、二人とも。」
こういうときは英一が二人を抑えるのが日常の風景である。
「そんなことより、どんなゲームが出てきたの?教えてほしいな。」
英一が勇樹のご機嫌を伺いながら優しく尋ねた。
「まあちょっと待っててくれ。」

少しすると勇樹は大きな段ボール箱を抱えて部屋に戻ってきた。
「おお、すごい量だね。」
陽介はその段ボールの大きさを見て驚く。
「陽介の部屋も、もし掃除したらこれくらい出てくるかもしれないぞ。」
「そんなもんかあ。」
「まあ中身を見てくれ。」
段ボールを開けると、そこにはかつて遊んだであろう元・宝の山。
「うわあ、懐かしい!」
「本当だ!これ、遊んだなあ。」
懐かしい逸品たちに目を輝かせる陽介と英一。それを見ている勇樹はなぜか少し誇らしげだった。
「まあそれは置いておいて、俺が見せたかったのはこれよ。」
勇樹が段ボールの中から取り出したのは、何やらゲームカセットだった。
「『アニ・ウォー~動物大戦~』、これだよ。覚えてるか、陽介。」
「うん、覚えてるよ。懐かしい!」
「ああ、僕も見たことあるかも。」
「確かまっつんがめちゃくちゃ強くてさ、誰呼んでも無双してたんだよね。」
「その通り!よく覚えてたな。」
「うん、そりゃあ覚えてるよ。」
「英一もやったことあるか?」
「うん、友達の家で何度か。」
「よし、じゃあ今からこれをやろう。」
「えー、まっつんが強いに決まってるじゃん。」
「大丈夫だって。俺も久しくやってないから、な?」
「えー。」
陽介は少し不満げな表情をうかべる。
「せっかくだしやってみようよ。」
「うん、わかった。」
勇樹は嬉しそうに筐体を取り出すと、ホコリを払いながらカセットを装填した。
「それじゃあ、始めるぞ。」
懐かしいゲームに目を輝かせる三人のその姿は、まるで小学生の頃に戻ったようだった。

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