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ラスボス

普段であれば、放課後の教室で無駄話をしたり、ファーストフードやゲーセン巡りをすることもあったが、今日ばかりは違った。
学校が終わると三人は、一目散に帰路へと着いた。
もちろん帰る先はそれぞれの家にではない。勇樹の家へだ。

「お邪魔しますー!」
「失礼します。」
「いいよいいよ、そんなかしこまらなくて。今は誰も家にいないんだし。」
勇樹も柄にもなくテンションが上がっていた。
「よし、じゃあまずは何しようか。」
「とりあえず、ゲームでもしようよ!」
「陽介、ナイスアイデア。」
「それほどでもー。」
二人のテンションが明らかにおかしいのを見て、英一もなんだかワクワクしていた。
「なんのゲームをするの?」
「そりゃあもちろん!」
「戦鬼―ONONOKI―でしょ。」
「ああ、この前やらせてもらったゲームね。」
「そう。でも今日は前とは違うぞ。」
「前とは違う?」
「今日はストーリーモードをやろう。英一が。」
「え、僕が?」
「確かに、それいいね!」
陽介が同意した。
「でもなんで僕が?」
「まあ待て待て。順番に話すから。」
勇樹は諭すようにそう言った。
「いくつかモードがあるって話はこの前しただろ?」
「うん、それはこの前聞いたよ。」
「その中の一つがストーリーモード。」
英一は頷く。
「ストーリーモードを進めることでキャラが解放されたり、色々と背景を知ることが出来るわけだ。」
「なるほどね。」
「そしたらキャラにも愛着が湧くでしょ?」
「それはそうかもね。でも、なんで僕がやるの?」
「そりゃあ俺たちはやったことあるからな。」
「既に深い愛情を持ってるよ。」
陽介は目を閉じながらそう言った。
「わ、わかった。」

それから数時間、二人のアドバイスを聞きながら英一はゲームを進めていた。
「おおお、ここでこうなるのね。」
「お、なかなか乗ってきたねえ。」
「普段はあんまりゲームとかやらないんだけどさ、これ面白いね。」
「そう思ってもらえたなら何よりだ。」
「どうする、もう少しやる?」
「そうしよう。」
「あの、盛り上がってるところ大変申し訳ないんだけど……」
陽介が口を挟んだ。
「そろそろお腹すいてこない?」
「うん、確かに。」
「そういえばまだお夕飯食べてなかったもんね。今何時?」
「ビックリすることに、もう10時前。」
「えー!」
「すごい熱中しちゃってたね。」
「どうするか。」
「コンビニでいいんじゃないかな?」
「そうだな、そうしよう。」
三人は身支度を済ませるとコンビニへと向かった。

コンビニの中でも三人の戦鬼―ONONOKI―話は尽きることがなかった。
「いやあどんどん面白くなってくるね。」
「だろー?もちろんバトルしてるだけでも面白いんだけど、戦鬼―ONONOKI―はストーリーも重厚だからそう言うところも楽しめるんだよ。」
「特にラスボスのところなんてね。」
「おい、陽介。それ以上は言うな。」
勇樹はそう言って制止した。
「ああ、早く帰ってやりたいなあ。」
「まあまあまあ、そう焦るな。」
「うわ見て、このお菓子。新発売だって。」
「お、いいね。美味しそうじゃん。買おう買おう。」
「え、何これ。ちょっと来てよ、まっつん、陽介くん。」
英一が大きな声でそう言った。
「なんだ、どうした。」
英一が指さす先には戦鬼―ONONOKI―のカードがついたお菓子が売られていた。
「おおお、タイムリーだなあ。」
「これ買ってかない?」
「せっかくだしそうするか。」
「一個?二個?」
「いや、三人で箱買いしよう。」
勇樹の英断に二人は目を丸くした。
「おおおおお!」
「よし。まだまだ楽しむぞ!」
「「おおー!」」
この直後、三人はコンビニの店員に注意されるのだった。

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