ループ

 勇樹が「ザ・スレイヤー」をプレイし、陽介も一緒にプレイをしてり、応援したり、ぼーっとしたりする。それがここ最近の二人の日常だった。
「ああ、やっぱこいつ強いなあ。」
「結構強そうだよね。」
「そう、こいつヤバいんだよ。全然勝てなくてさ。」
「へえ。」
「いったん休憩するか。」
「うん、そうしたほうがいいよ。」
「なんか飲む?」
「いや、大丈夫かな。」
「わかった。」
 勇樹は自分のベッドに腰かけ、少し黄昏た。
「さっきから何やってんの?」
 ずっとスマホを注視している陽介に勇樹が尋ねた。
「ああ、これ?マンガ読んでる。」
「ああ、そういやそんなこと好きって言ってたな。」
「そそ。」
「何読んでんの?」
「えっとね、あれ、前にあの話しなかったっけ?」
 陽介は首をかしげながら話した。
「あの話?」
「ほら、『今代の勇者は暇人なようです。』っていうマンガ。」
「ああ、前に勧められたな。」
 勇樹は記憶の片隅にあったのを思い出した。
「読んだ?」
「言われてすぐは読んだけど、やっぱり元々雑誌で連載とか追うタイプじゃなかったから、フェードアウトしちゃったわ。」
「ああ、もったいない。」
「すまんすまん。でも、読んだとこは面白かったよ。」
「まあそれならいいけど。」
 陽介は満更でもない様子だった。
「で、その勇者のマンガがどうしたんだよ。」
「そうそう、まあ割と前なんだけど、『今代の勇者は暇人なようです。』が」連載終わっちゃったのよ。」
「ああ、そうなんだ。」
「でも、3か月前から、その作者の紙岡殿々先生が新連載を始めたのよ。」
「へえ。」
「これがまた面白くてさ、新しい回が配信されるまで何度も読み返してるのよ。」
「なるほどね。」
「『今代の勇者は暇人なようです。』もアニメ化してたから、これもそのうちアニメ化するんじゃないかな。」
「あ、アニメ化もしてたの?」
「そうよ!」
「すごいなあ。」
「まあね。」
 なぜか陽介は少し誇らしげだった。
「ちなみになんてマンガなの。」
「言ったら読んでくれる?」
「善処する。」
「また途中で読まなくなりそう。」
「まあまあ。」
 勇樹は笑いながらなだめる。
「まあいいや。『三歩進んで、三歩下がる』っていうタイトルなんだけど。」
「ほお、どういう話?」

 どこにでもいる大学生、三歩 究太(みほ きゅうた)はある朝登校中に交通事故にあってしまう。
 究太が目を覚ますとそこは病院、ではなくその交通事故にあった朝だった。
 それ以来、何かとループしてしまう体質(自称ループ病)になった究太。
果たしてどうなっていくのか。

「へえ。」
「まあいわゆるループものだね。」
「そういうの多いよな。」
「でもそんなんことしてるのに等身大というか、別に世界救うヒーローになったりしないのがいいんだよね。」
「なるほどね。」
「じゃあ、読んで。」
「わかった。」
「今すぐ!」
「え、今?」
「そう!」
「わかったよ……」
 陽介の熱い視線に歯向かえず、勇樹はスマホを開くのだった。

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