マガジンのカバー画像

アリ、時々キリギリス 雨の街編

11
運営しているクリエイター

2021年9月の記事一覧

アリ、時々キリギリス 雨の街編 −壱−

 街に近づいてくるにつれて、先程まで晴れ渡っていたはずの空が、みるみると曇り出してきた。
「ありゃあ雨雲じゃないか。」
 テトは空を指さしながらそう言った。
「本当だ。さっきまでは一面青空だったのに。」
 カクリが振り返ってみると、後ろにはまだ真っ青な空が広がっていた。
「心なしか、雨の日の匂いもしてこないか?」
 テトはそう言いながら大袈裟に鼻をひくつかせた。
「てことは、もう近いのかな。」

もっとみる