哺乳瓶の姉、おっぱいな妹~乳児の忖度
ママぶたは絶対に官僚にはなれない。
頭は良さそうだけど、忖度できないから。なぜか自分が生きるのにアップアップしていて、他人のことを観察できない。
だがしかし、忖度する気だけは満々。自分はノンポリで、相手に合わせる気持ちだけは人一倍もってる。でも常日頃、人を観察していないので、やることなすこと相手の期待とは逆に…
そんなママぶたから生まれた長女のブーと次女のフー。母乳の飲みかたを見ると、乳児でも親の様子をうかがっているんじゃあないかな?と、今になって思うことがある。
姉妹なのに、おっぱいに対する態度がまったく逆だった二人。
ブーはおっぱいを見せると泣き、
フーはおっぱいを隠すと泣く。
ブーは小さく生まれて、吸う力も弱かった。それでママぶたの立派なおっぱいから上手く母乳を飲めなかった。
1人目の子供で勝手の分かっていなかったママぶたは思い悩み、半分意地になってブーの口におっぱいを持っていく。最初はモゴモゴするんだけど、すぐに疲れて止めてしまう。
ブーが疲れるまでに飲んでいる量じゃあ成長できない。ママぶたのおっぱいもどんどん強大化し、固くなってしまう。だからママぶたはおっぱいを絞って、哺乳瓶でブーに飲ませていた。
そのうちにブーは「最初から哺乳瓶のほうが楽じゃん!」と気づく。ママぶたがおっぱいを近づけても、吸わなくなり。やがて、ママぶたがおっぱいを見せると泣くようになった。
きっと、泣きたいのはママぶたのほうだった。
でも、まあ、怖いよね。自分の顔よりでかいおっぱいに、上から覆いかぶされたら…
妹のフー。ブーよりも600gも大きく生まれた。今だけ増量2割増し。2人目でママぶたの乳首が多少は柔らかくなっていたのもあるけど、生まれてすぐにおっぱいからメイッぱい母乳を吸い込んだ。
フーは母乳のニオイに敏感だったんだと思う。ママぶた以外の人に抱っこされると、泣いた。この世の終わりのように泣き続けた。
そして生まれて数日後。あろうことかママぶたはフーを病院において帰宅。家にいたおおかみとブーはびっくり。産後で疲れていたのは分かるけど…。
翌日、ママぶたと病院へ行くと、そこにはフーの泣き声が響き渡り、看護婦さんはぐったりしてた。一晩中泣いていたに違いない。
看護婦さんのやつれた頬と、ママぶたをみたときのほっとした笑顔が忘れられない。
一晩おいていかれたことで、フーのママぶたとおっぱいへの執着は尋常なものでは無くなった。おっぱいはフーの安全地帯、ライナスの毛布。ママぶたのおっぱいなしで、フーの安寧はない。
この後、5歳になるまで「パイィ~パイィ~」と言ってママぶたのおっぱいを追い求めていた。おっぱいを出さないと、泣いた。ひみつ道具を出してもらえないのび太君より、数段はげしく泣き続けた。
そしておっぱいを見ると、それが当然と吸い付いた。
実のところ、おおかみとママぶたにとっては、それぞれ好都合だった。
ブーが生まれたとき、ママぶたは産後休暇の後すぐに復職。出来るだけ母乳で育てたかったママぶたは、おっぱいが張ると職場で絞って冷蔵庫へ。
おおかみが午後休や早上がりのときはそれを持って帰ってブーに飲ませてた。
おっぱいから飲んでもらえなかったママぶたの悲しさも、すこしは緩和されたかも知れない。
ブーがおっぱいっ子だったら…復職のとき大変だったろうなぁ。哺乳瓶っ子で助かった。哺乳瓶の乳首のえり好みはすごかったケド…。いつも5~6種類の乳首が用意してあった。とっかえひっかえ、その日の気分にあったものを探し当ててた。
フーが生まれたときは、ママぶたは1年間の育休を取得した。だからおっぱいから直接飲んでくれたほうが、手間がかからず楽だった。
しかも、ぐずったとき、とにかくおっぱいを口に運べば、フーは心満意足。夜泣きのとき、ママぶたは寝たまま「ふんっ!」とおっぱいをフーの口にぶち込んでいた。それでフーはおとなしくなり、やがて眠りにもどった。
ひょっとすると、こぶた達は親の微妙な心の動きを察知してたのかも知れない。少なくともおおかみはブーが哺乳瓶で助かったし、フーがおっぱいなのはママぶたを大きく助けたと思う。乳児の忖度。考えすぎかな~。
そして最後に生まれた長男のウー。こいつは忖度云々という以前に天使のような赤ちゃんだった。ほぼぐずらない。寝起きはいっつも笑顔だ。
ブーやフーがあたりまえの赤ちゃんと思っていたおおかみとママぶた。こんな赤ちゃんもいるんだなぁと感心した。もし逆の順番で生まれていたらと思うとぞっとする。
ウーの後にどんな赤ちゃんが生まれても「思ってたんと違う~」と大変なことになっていたに違いない。
ひょっとすると親をいい感じに困らせたのも、ブーとフーの狙い通りだったのカモしれない。あの頃はそんなふうに考える余裕はなかったけど。
おっぱいっ子でママぶたから離れなかったフー。ウーの誕生で思わぬ試練にさらされる。そう、おっぱいはウーとともに病院にいる。ママの入院はフーの一大試練だった。
そんなフーのとなりで寝ていたおおかみ、戦々恐々である。案の定、夜中に「パイィ~パイィ~」の声が響き渡る。ダメもとでおおかみの貧乳をフーの口元へもっていくと…
モグッモグッモ…。
2吸い半だった。「ちがっう!」と叫ぶと、くるっと反対側を向いて…寝た。あっさり寝た。泣きぐずると思って身構えていたおおかみは拍子抜け。
でもこれは楽だ。ミルクをつくることもなく、寝返ってフーのほうを向くだけで夜泣きが収まる。おっぱいの偉大さを再確認。
そしてウーが生まれて、フーにとっても良いことがあった。そう、しぼみかけていたママぶたのおっぱいが復活。ウーが飲みきれなかった分はフーが仕上げる。
ママぶたも残乳を搾る手間が省けるので、これ幸いと放置。結果、5歳になるまでフーはおっぱいを飲み続けた。つまり、5年間ママぶたは母乳を供給し続けた。ママうしか?
養分を吸い取られたママうしは、このころ人生で唯一の痩せ期、ナイスバディだった。ママうし、カムバァァック!
閑話休題。
おおかみは忖度できる。けどママぶたと違って、やる気がない。おおかみの忖度性能とママぶたのやる気を合わせると最強なんだけど…。
今から思えばこぶた達はいい感じに忖度してくれたように思う。生まれた順番もやっていることも、ほどよくおおかみとママぶたを助け、そしてほどよく鍛えてくれた。
こぶた達は親のことをよく見ている。これだけは肝に銘じておかなければ。
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