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お酒を呑むために大阪へ行く

 僕はしばしば、お酒を飲むために大阪へ行く。ライブとかお買い物の予定があって、そのついでに少し飲んで…ということではなく、大阪へ到着してから京都へ向かって帰るまで、何軒か店を移りながらずっと飲んでいる。

  先日、仲の良い大学の先輩方(うち1人はすでに社会人)と大阪で呑んだ。大阪に住む先輩が大阪のハシゴ酒のなんたるかを教えてくれるらしい。僕があらかじめ持ち合わせていた情報によると、おでんを食べるらしい。大阪のおでんということは……”たこ梅”にでも行くのだろうか。
 せっかく大阪に行くのならと、僕は集合時間より2時間ほどはやく大阪駅に到着し、駅前ビルに入る。目標を第2ビルの中にある”立ち飲み庶民”に定め、どこかの国の弾道ミサイルのごとく突き進む。暖簾を潜り、「1人入れますか?」と聞いて、奥のカウンターへ通される。そこでビールを2杯ほど飲み、だし巻きやコロッケ、揚げ餃子をつまみ、最後は海鮮巻き。1300円。
 集合時間までに余裕があったので、喫茶店に入り、「日展」の文章を書きながら、テレビで放送されている京都の駅伝を見る。大阪の喫茶店で京都の街並みを見るのは不思議な感覚だ。

 ”ビッグマン広場”が分からず集合に戸惑いながらも、3人集まり、僕の予想通りたこ梅に入る。ここでもビールを頼み、大根・たまご・じゃがいもをいただく。僕はいつもある程度決まったものの中から食べるものや飲むものを決めてしまうきらいがある。冒険をしない。おでんの名店というだけあって、見たことのないようなおでんがあり、料理が好きな先輩は菊菜なんてものも頼んでいたのだが、僕はおでんとたまごとじゃがいもだ。どこでおでんを食べてもこの3点を選んでいるような気がする。レギュラーメンバーというやつか。ちなみに、ハシゴ酒のポイントは、1杯と2~3品らしいので、これくらいにして”たこ梅”を出る。
 僕が数時間前までいた駅前ビルの方へ戻り、”さしす”というお店に入る。普段は行列ができているほど人気のお寿司屋さんだ。今日は珍しく並びがない。なので、席が空くまで10分ほど待ちながら何を食べるか考える。料理好きな先輩は芽ネギなんてものを注文しようかと言って、そして実際に注文していた。寿司屋で魚ではなくネギのお寿司を頼むなんて、なかなかの上級者。僕は例のごとく冒険をしない人間なので、ブリとサーモンをいただく。あとハイボール。

 駅前ビルを出て、大阪駅でも初めて行く場所に足を踏み入れ、フロアが街のようになって、左右には女性の服のお店が並んだビルの中を通る。ビルのコンセプト的にはキッザニア【大人版】みたいだ。よく考えると、キッザニアというのはとんでもない場所である。娯楽施設という仮面を被って、未来の労働者を育成している。純粋な子供に労働に対する報酬をもらう悦びを植え付け、幼い頃から自らの肉体と時間を社会に提供することへの抵抗を可能な限り減らしておく。しかも、客から入場料を取りながらそれをする。なんと極悪非道だ。
 そんなキッザニア【大人版】みたいなビルのカフェに入る。僕は基本的に喫茶店でブレンドコーヒーを飲み、たばこを吸いながら本でも読んでいる人間なので、いわゆるおしゃれカフェは新鮮だ。シュークリームとチーズケーキとフレンチトーストで迷う。迷って、気分的にフレンチトーストが選ばれた。僕が知っているフレンチトーストは、コンビニのフレンチトーストで、袋から取り出しかぶりつく。しかし、カフェのフレンチトーストは溢れんばかりのシロップがかかっており、ナイフとフォークを使って上品に食べる。トロトロのフレンチトースト。喫茶店に入り浸っているせいか、おしゃれカフェに入りにくさを感じる僕をも満足させるフレンチトースト、なかなかのものだ。そして3人は福島の方に歩いて行った。

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